みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

風間八宏は私達の想いを託せる監督なのか

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連敗記録が8に伸びた名古屋グランパス

チームを指揮する風間八宏に対しサポーターから賛否両論の声が挙がる中、興味深いコメントがあった。

「継続と言っても、その理由は過去志向ではなく、未来志向で語るべきでは」

このブログを書く前に、まず私の立場を明確にする。私は風間体制「継続派」である。

だからこそ、この四月の連戦中何度となくサポーターの意見が割れていく様を見て考えていた。私は何故継続を支持するのかと。正直に言うが、風間八宏のサッカーは救いようがない。あまりにも極端で、時間のかかる、相手より自分達にフォーカスしたサッカー。ボールを保持していない時など目も覆いたくなるほどだ。これまでもその点についてはこのブログでも散々指摘してきた。

ただそれでも私は支持している。勿論未来志向として。その点について今回はまとめてみたい。

「サッカーは点が全然入らないから面白くない」

唐突な話をするが、私の妻はサッカーにまるで興味がない。興味がないどころか、私のような馬鹿夫のせいでむしろ嫌悪感でいっぱいだろう。そんな妻に一度改まって聞いたことがある。何故サッカーに興味がないのかと。その問いに対する妻の回答はこうだ。

「試合時間が長いわりに、点も全然入らないから面白くない」

聞いた時はなんて単純な理由なのだとガッカリしたが、後で冷静に考えた際になるほどそうかと納得した。試合時間90分、ハームタイムも交えれば約2時間程度だろうか。そう、とにかく長い。これだけの時間をかけて試合によっては1点も入らないこともある。そこの面白さが見出せない者からすると、この90分という長さが苦痛なのだ。

この点に関するエピソードとして、普段ゴール裏で熱心にサッカー観戦をしている女性の話にも触れておきたい。同じ時期、訳あって私はこの女性にも似た質問をしている。彼女はこう答えた。

「私もプレーのこととか、試合中どこを見ていいかなんて分からない」

彼女の場合、何かしらサッカーを好きになるきっかけがあった。戦術的な要素の理解が仮に乏しかったとしても、一つのチームを応援する楽しさに気づき、熱心なサポーターになったわけである。そんな彼女でも「誰もが反応するような目立ったプレーしか目がいかない」というのである。

サッカーはともすればボールを蹴り、相手より多くゴールを決めた方が勝利するという単純なスポーツに思える。ただ実際にはそこに至るまで細かいディテールの積み重ねがあり、ときにそれが理由で最も分かりやすく、このスポーツの本質とも言える「ゴール」するシーンが遠ざかってしまうことが往々にして起きる。

そのうえで、風間八宏の最大の魅力を私はここにあると考える。

誰が見ても面白いサッカー

今更語る必要はないだろう。風間八宏のサッカーはとにかく点がよく入る。

2017年J2リーグの成績を振り返る。チーム得点数「85(J2最多得点)」。失点数「65(J2ワースト6位)」。とにかく点がよく入り、よく取られる。彼のサッカーは得点を多くとることだけを、失点を減らすことだけを目指したサッカーではない。「得失点差のプラスをいかに積み上げるか」これが風間八宏率いるチームの最大の目標である。

誰もが忘れられない試合と言えば2017年8月6日、瑞穂で行われた愛媛FC戦だろう。幸先よく4点リードし圧勝と思われたこの試合。後半に誰もが目を疑う4失点。しかしそこから3点奪い返し最終スコアは7対4。あまりにエンターテインメント性に富んだ、言い方を変えれば杜撰な試合運びで「八宏スコア」を演じたグランパスを、誰もが面白がり、そして大きな満足感を得て家路についたのは記憶に新しいところだ。

「サポーターに楽しいと感じてもらいたい。そのためには選手にもサッカーを楽しんで欲しい。そしてスタジアムを満員にしたい」をモットーに、ぶれることなく邁進する風間八宏の哲学に多くの人間が惹かれたのは事実だろう。

点が多く入るという点において、彼のサッカーは非常に分かりやすい。

それが理由だろうか。昨シーズン、J2だったにも関わらず名古屋グランパスは降格組で唯一、前年の観客動員数を上回る結果を残した。勿論クラブの努力を私達は知っている。しかし当然ながらピッチで繰り広げられるサッカーに魅力がなければ、この結果が生まれることはない。この点に関しては非常に印象的だったことがある。男性のサポーターだけではなく、多くの女性サポーターがこのサッカーを支持していたことだ。とにかく見ていて面白い、と。魅力を感じていたのは女性だけではない。例えばJ2に降格するまでの数シーズン、グランパスへの関心が薄れ、離れていたサポーターが戻ってきたという話もよく聞いた。

コア層だけでなく、誰もが楽しみ、そして愛せるチームへ

 私はいわゆるサッカーオタクだ。小学2年生からサッカーを始めた私は、不思議なことにサッカーをするだけでなく、見ることにも強い関心がある子供だった。自分で稼いだ給料でもないのに、毎週水曜になると父親の仕事帰りに週間サッカーダイジェストを買ってきてもらうことが何よりの楽しみだった。また地元にサッカーチームがあることを知り、実際に初めてJリーグに足を運んだ試合が他でもないグランパスの試合である。

中学生になると雑誌では飽き足らず、写真で見ていた海外のサッカーをこの目で見てみたい気持ちが強くなった。父親に頼み、ケーブルテレビを部屋につけてもらい、初めてマンチェスターユナイテッドをテレビ画面を通して見たときの感動は今でも忘れない。

私のようなサッカーオタクは、いわゆる「コア層」と呼ばれる。なんとなく見るのではなく、深くプレーを追及することが何よりの楽しみだ。ただ私達のような人間は、往々にして自分達の価値観こそが正義であると勘違いする。私達の世界だけが評価の基準になるのだと。

実際にスタジアムに足を運ぶのは、決してコアなサポーターだけではない。子供から女性、年配者、普段サッカーに興味がない人、とにかく様々だ。

昨年J2の舞台であったにも関わらず、多くの人々がグランパスについて語り合った。このサッカーが大好きだと恥ずかしげもなく語る人、何失点してもその分取り返せばいいんだと笑って話す人。不思議なもので、一部のコア層だけが喜びを噛み締めるようなサッカーより、ずっと幸せだった。老若男女問わず誰もが楽しそうに地元のクラブについて語れる、それが純粋に素敵だと思った。

今更にはなるが、私がグランパス以外で最近好みだったチームは、EURO2016のコンテ率いるイタリア代表だ。戦術的な要素は勿論、チーム全員がフォアザチームでハードワークする姿が胸を打った。そう、現在の風間八宏率いるグランパスとは似ても似つかないチームである。

価値観に合うかどうではない。自分の街のチーム、自分の愛するチームには沢山の人に愛されるチームであって欲しいと思えたからこそ、風間八宏率いる名古屋グランパスを私は応援していこうと思った。

過去との比較ではなく、過去があるからこそ進みたい未来がある

先日のFC東京戦に敗れ8連敗を喫した後、小西社長は報道陣にこう答えたそうだ。

中長期でやっている。今やっていることをやり続けてもらいたい
苦しんでいるのは事実だ。得点も失点も多いことが売りだったにも拘らず、皮肉なことに今は失点ばかりで得点も多くあげられていない。試合を見ていても決して楽しくはない。それは事実である。特にこの連戦では立て直す時間もなく、短期間の内にこれだけ試合数を消化してしまったのは彼のチームビルディングの手法からして厳しいものだった。風間八宏のやり方ではこの連戦で持ち直すのは難しい。そんなこと百も承知である。だからこそ前回のブログで「12連敗か勝ち点を一でも二でも積み上げるか」こんな言い回しを使った。簡単ではないと。

私達には2016年の苦い過去がある。なす術なく連敗を重ね、J2に降格した苦い過去。クラブとして何も積み上げることが出来ず、降格と共に私達は解体した。

「あのときよりはマシだ」、当然そんな理由を挙げる人も中にはいるだろう。過去と天秤にかければ今の方がまだ救いがあると。

果たしてそれだけだろうか。

そんな苦い過去があるからこそ私達には進みたい未来があり、それが叶えられそうかどうかが何より大切なのではないか。

私の場合は前述したそれである。多くの人が愛せるクラブ、それをトップチームだけではなく、クラブ全体で後押しするような、そんな一体感を感じられるクラブであって欲しい。

だからこそ今のチームを簡単に諦めたくないのだ。

決して私が正しいとは限らない。このまま連敗が続き、何も出来ず解任の流れになることだってあるかもしれない。そうなれば「やはりあいつが間違いだった。見る目がない」と言われるかもしれない。

別にいいではないか。こうなって欲しいと願って、何が悪い。

私達にはチームを批判する権利はあっても、サポーター同士で価値観を否定しあう権利はない。

サポーターが10人集まれば、10通りの価値観がある。どれが正しいかなんて誰にも分からない。そんな10通りの人間が「このチームにどうしても勝って欲しい」そんな想いを共有し、共に勝利を願うからこそサッカーは魅力的で、サポーターという存在は価値があるのだ。

もしかしたらこの連敗をキッカケに離れてしまったサポーターもいるかもしれない。

私はしょうがないと思う。ずっと強く、負けないチームなど存在しない。苦しい時期があり、悔しい思いをするからこそ、それを乗り越えたとき、特別だった世界はなくてはならない日常の世界になる。

今までずっと応援してきたサポーターはそれを知っているし、その大きなきっかけが2016年の降格だったのだと思う。私達はそれをこのチームと乗り越えてきた。それもまた変わることのない事実である。

migiright8.hatenablog.com 

もうJ2に降格してはいけない

今の状況を我慢出来るのは中断期間までだと考えている。それを過ぎても改善が見られなければ解任すべきだろう。矛盾するように聞こえるかもしれないが、どんな理由であれ、もう降格はしてはいけない。その期間を経ても尚、勝ちに恵まれない日々が続くようであれば、それは監督としての力量がないということである。

ここで降格すれば、私達はエレベータークラブの仲間入りだ。本気でACLを目指すなら、そうはなってはいけない。まずはJ1という舞台で戦えることを証明し、来年以降優勝争いが出来るチームに変貌する為の助走期間としなければならない。勝てるチームには有力な選手が来るし、勝てないチームには来ない。それは今年のオフで嫌というほど痛感したことだ。

ただ同時に開幕15試合(中断期間前)で終わっていい冒険だとは思わない。だからこそ何があっても動じず、中断期間までは風間八宏にやらせるべきだというのが私の持論である。

正しいかどうかなど分からない。いや、分かったら面白くない。それが一番の醍醐味なのだから。

最後に。

いつかJ1に定着した時、点が入らないとつまらないと言いきった結果主義者の妻と、今はおやすみグランパスくんを蹴ることしか知らない子供をグランパスの試合に連れていこうと思う。

きっとこのクラブに、選手やサポーターに、なによりこのサッカーに魅力を感じてくれるだろう。

そんな日が近い将来訪れてくれることを願いながら、今を戦うチームを応援することが私の何よりの楽しみであり、このチームを応援する理由である。そんな日常を過ごしながら、次の水曜日、難敵セレッソ大阪に勝ってくれることをまた期待してしまうのだ。

 

 

※このブログで使用した画像は名古屋グランパス公式サイトより引用したものです