みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

一度フラれたくらいで心折れてはならぬ

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 我が家で定期的に話題となる柿谷さん。

柿谷に名古屋が声かけてるんだって。また柿谷にアプローチしてるらしいよ。ねえ柿谷知ってるよね。やばマジで柿谷名古屋来るかも

それに妻はこう返す。

急に近所の人なノリで柿谷さん話すのやめて

ナチュラルに柿谷さんネタをぶっ込む旦那にキレる妻。我が家の近所に柿谷さんは住んでいない。でも普通『柿谷』といったら曜一朗に決まってる。俺は曜一朗を語りたいが、妻は近所にいない限りは許さない。

そんな柿谷さんが遂に名古屋へお引っ越し。

一年半ぶり二度目の告白を遂に成就させた大森スポーツダイレクター。ちなみに私は一年半で同じ相手に確か三回告白して最後成就させた経験があるので、大森スポーツダイレクターより間違いなくやり手です。

一年半前といえば風間時代。告る理由など必要ない。そこにロマンさえあれば惹かれあうはずだった私達。

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だけど当時貴方はこの告白をフッたんだ。

その告白嬉しいが大事なのは今カノだ。なんだそれ聞いてねーよ。結局おたくは愛を確認し我々は不時着した。せめて丸高さんだけでも。願いは叶わなかった。

でも諦めの悪い元すね当て売り。彼は遂に観念した。

 

『石垣は築けた。あとはそこに乗せるだけ』

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シーズン総括で指摘した長身ストライカー待望論。

しかし蓋を開ければやってきたのは柿谷曜一朗


おいでやすこが【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順5〉M-1グランプリ2020

何が起こったんやああああああ!!!!!!!!

おいでやす小田のツッコミが好きだ(なんの話)。

柿谷から長身ストライカーに移り変わる盛り上がらない歌じゃなかった(ネタについてきてください)。

今季名古屋が苦戦した相手は明白で、その解決策として柿谷曜一朗に行き着くとは。『木本』『おお』『長澤』『おお』『森下』『マジか』『柿谷』『何が起こったんやあああ!!!!』(このクダリがしたい)。

正直マッシモに上積みは期待してなかった(白状)。そりゃ選手が変われば変化は起きるしそもそもの層だって薄い。でもそれらは今季の延長線上にあるもので、その延長線はてっきり今季苦労した先のものだと思ってた。そのキャラクターでチームの仕組みそのものも変わるような選手に手を伸ばすとは予想外。

でも最近社長の言葉を読んで考え方を改めた。

いろいろな方から、「総得点が少ないのではないか」という声をいただいているのは存じ上げています。しかし、城は一朝一夕に成るわけではありません。戦国時代には「一夜城」というものがありましたけど、サッカーの世界はそう甘くないと思っています。今年は失点数が「28」でした。これは川崎さんよりも少なく、リーグで最も少ない数字です。石垣としてしっかりと築けたのではないかと思います。あとはそこに乗せるだけです。乗せることにどれだけ注力し、キャンプを通じて選手に浸透させて縦に速いサッカーができるか。一歩ずつではありますが、来年はその歩幅を大きくしながらしっかりと闘っていきたいと思います

いやリップサービスかもしれないよ。言葉巧みなお方なので、逆にどこまで本音なのかと勘繰るのも事実。

ただ真実はどうであれ、実際に柿谷が名古屋に来たのは事実で、では小西社長のおっしゃることを〝あえて〟鵜呑みに(信頼)し、これを来季への期待や展望とするのはどうかな。どんな未来が待ってるだろう。

カウンター炸裂じゃボケェええええええええ!!!

 

実はとにかく得点が少なかった攻撃陣

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得失点差が+17といえ、それは堅守あってこそ。

実際に前線の選手たちが何点決めたかといえば、

誰も二桁獲れていない。3位のクラブとしては致命的ちゃ致命的で、とりわけストライカーに得点が少ないのは事実だ。一方でサイドアタッカーがこれだけ得点に絡めているのもまた事実であり、今季名古屋のストライカーに与えられた役割は多岐に渡っていた。

ここで問題になるのがマッシモの例のコメントだ。

得点を量産してくれるストライカーがいたら、という話を5分間くらい続けることもできましたが、あまり現実的でもありませんし、話をしたところでそれが叶わなかったという話を何日か後にしなければならなくなります

このブログでも何度使い倒したか覚えていないが、これだけ体を張り続けたストライカーでもまだ不満はあるらしい。いやていうかめっちゃモチベ下げるやん。

で繰り返すがそこでてっきり長身ストライカー獲って上からどーーーーーんするかと思いきや違うらしい。

彼が求める〝得点を量産するストライカー〟とは。

分かっているのは彼がストライカーに〝得点〟を求めている事実のみ。そこでご指名入りましたがそう柿谷。マッシモの要望かいや2年連続で告る大森スポーツダイレクターの我儘か。はたまた『元代表クラスのスター連れてこいや』と天上人から脅されたかいやいや相手代理人に最後の転職先として抱き込まれたか。

分からないしかしそれでいいっ!(気にしません)

 

二つの動画をひたすら見比べるのだ

ジョーでもない、夢生でもない、山﨑シャビエルみんな違う。吉幾三ばりに何にもねえかこの贅沢者。

これだけストライカーいて理想の選手誰やねんと。

だから過去の男を振り返った。そこからマッシモの好みが分かるかもしれない。繰り返すがマッシモがストライカーの補強を要望し、その結果選ばれたのが柿谷である。これが前提のポジティブな解釈だ。

あぁ....求めてるの〝ゴールに直結した動き〟かも。

マッシモといえばFC東京時代の得点源は武藤嘉紀


【TOP10 GOALS】この勢いは体当たりしても止められない!武藤 嘉紀Jリーグ時代のゴール編

久しぶりに観て思ったがフィジカルお化けか。速い、強い、それでいてしなやか。そりゃマッシモも惚れる、よっちティアモ。にしても名古屋にこの得点パターンは正直皆無だったなと思い知る。ストライカーが一発裏抜けで独走してゴールみたいなこの流れ。

それはもちろん金崎や山﨑のキャラクターにも起因していて、そもそも彼らは縦に速いタイプというより身体を張って起点となるタイプ。金崎は降りてきたりサイドに流れボールを引き出すことに長けた選手。山﨑に至ってはより選手間の距離が近くボールと人が有機的に絡み合うスタイルの方が本来ハマる素材だ。ネガティブに言えばどちらもスコアラーとしては少々物足りない。ゴール目掛けて走るタイプではないからだ。

そして柿谷。やはり2013シーズンが思い出される。


柿谷曜一朗 Jリーグ 2013 全21ゴール集 | Yoichiro Kakitani's All Goals of 2013 J. League HD

当時のFC東京セレッソのチームスタイルはとりあえず横に置き、彼らのゴールパターンだけ比較する。

似てる部分もあるこの二人カウンターにうってつけ。

彼らのゴールシーンで似通っているのはその動きだしだ。裏を取るタイミング、そのコース取り、〝点〟で合わせるペナ内での動作、全てがゴールに直結する。だからこそ相手の最終ラインは後方に引っ張られ、例えば味方が低い位置で試合を進めても彼らの推進力が相手にはカウンターの脅威となる。

そして柿谷最大の魅力は改めて言及するまでもなくあの魔法のようなトラップ。武藤ほどのフィジカルはなく独力でゴールを陥れるタイプではない。しかしながらゴールへ向かう彼の足元にさえボールをつければ、彼ならいとも簡単にそれをチャンスとするだろう。

一発で相手の息の根を止めるが如く、もしマッシモが堅守に飽き足らずショートロング問わず更にカウンターを磨きたいとすれば。たしかに柿谷は面白いかもしれない。そして彼なら周りも上手く使うだろう。

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リヴァプールまじリスペクトなマッシモ故、フィルミーノ柿谷氏がピッチで魔法かけてくれても構わない。

というのも柿谷は結構フラつくから。例えば佐藤寿人のような常に相手最終ラインと駆け引きするタイプではなく、悪くいえば気分屋。降りてきて組立てに加わることも多く、もちろん身体を張って起点になるタイプでもない。阿部とプレーエリア被らないかとか、あるいは守備の強度大丈夫かとか、懸念はある。規律を重んじるフットボールにどこまで適応出来るか。

しかしだからこそ金崎や山﨑と異なる手法で名古屋が誇る快速ウインガーを活かしてほしい。結局柿谷も金崎も山﨑も皆一長一短。誰がよく誰が悪いなんて簡単な話でもない。であるからして柿谷には柿谷にしか出来ないプレーで名古屋の攻撃を進化させて欲しい。

リヴァプール目指してるんで監督イタリア人だけど。

そうそう今季全くハマらなかった金崎山﨑の崎﨑コンビの一角を担うのもアリだ。ツートップとして。

余談だが、今季Jリーグを観戦する中で最も痺れたゴールの一つも実は柿谷だったりする。

この試合、前半早々にセレッソが一人退場者をだし、こりゃ終わったと観ていたら、堅守堅守でその場を凌ぎ、たった一差しでゲームを決めたのが柿谷だ。

懸念があるとすれば『とはいえそれ7年前の柿谷だろ』なんて当然の指摘であり、ここ4シーズンに限っていえばたったの14得点。器用が故にストライカー以外での起用法も多く、ゴールへの嗅覚に陰りがないか心配だ。果たして獰猛なストライカーに戻れるか。

彼を組み込んだ名古屋、一体どうなるだろうか。

 

ストライカーの柿谷曜一朗が好きだ

先程紹介した神戸対セレッソを観た私はこう呟いた。

元はといえばストライカーの柿谷曜一朗が好きだ。

名古屋に加入したから言うわけではなく、当時(2013シーズン)の活躍、彼のゴールシーンは繰り返し何度も観ていたし(何故か自宅には当時の試合が三試合も残してある)、初めて代表に選ばれ本田圭佑に気を遣いすぎるワントップ柿谷も記憶に新しい。一瞬で相手最終ラインを手玉に取るあの老獪な動きだし、全くそのスピードが落ちることのない信じられないようなファーストタッチ、そして落ち着き払ったシュートセンス。このゴールなんか最高だった(3:28より)。


「韓国 1×2 日本」ハイライト  サッカー東アジアカップ2013

さて、彼はこの時のようなストライカーに戻れるか。

こんな期待身勝手なもので、実際はクラブが主導で動いた、あるいはセレッソサポの皆さんからすればいつの時代の柿谷だとツッコまれてもおかしくない。

ただ、現実彼がストライカーとして求められたのだとすれば、期待するのはこの働きしかない。

とにかくゴールに向かい、阿部とのホットラインを築き、ときにサイドアタッカーを活かし、苦しい試合でも冷酷なほどにワンチャンスで相手を殺す。そんなストライカ柿谷曜一朗が、名古屋で観たい。

そしてなにより名古屋でフットボールを楽しむ、子どもたちの憧れになるような、そんな柿谷が観たい。

断言する。来季の最注目ポイントは、柿谷曜一朗だ。

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最強の矛には悪魔のようなカウンターで

今季リーグを席巻したのは言うまでもなく川崎だ。

我々も過去の文脈を辿れば彼らと〝同じ土俵〟で競った過去があり、それはもうエキサイティングだった。

しかしもはや今いる場所は異なる世界線だ。

そして今季の補強。柿谷に齋藤学だと!?何が起こったんやああああ!!!!(三度目)相手にドン引きされたらどうすんねんとマッシモには詰め寄りたいが、一方でこのカウンター鬼凄そう(語彙力)なチーム編成はどうなんだいやしかしそれでいい(二度目)。

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こうなりゃやってやんよ。リーグ最強の矛にはさ、リーグ最強の盾とリーグ最恐のカウンターをお見舞いしてやれ。一方が爽やかなサックスブルーの道を突き進むなら、我々はどす黒い悪魔のようなロッソジャッロの道を突き進めばいい。無防備に攻めてくる奴らは問答無用カウンターで刺す。その構図が面白いでしょ。

約束と違うやろぉおお!!(フロントに向けて)

ファミリーは怒る。しかし大森先生はトボケるのだ。

あの日のかなあ♪それともその日のやつかなあ♪

待ってろよ川崎、尖って尖って尖りまくってやんよ。

そうそう、この移籍が決まって妻と会話したんだ。

ねーねー、柿谷決まったよマジで来たよ

へー

知名度は抜群だから来季盛り上がるかもねえ

へー

(意を決して)来季、スタジアム行ってみるか

(終わった)なんで!?

うっちーだったら行く

引退してるね

堅守どころか無意識にサッカー観戦引退が決定した。

ファミリーへの倍返しここに『完』

異例尽くめのシーズンもあっという間に幕を閉じた。

我らが名古屋グランパスはなんと3位(!!)。いやはや、昨シーズン終了後のブーイングを糧に(ポジティブな捉え方)マッシモの倍返し精神に火がついた。だったら毎年ブーイングしま以下自粛。

遂にACLとはマッシモあんたイタリアの半沢直樹だ。

まーそれにしてもチームの姿は様変わり。高低差どころの騒ぎでなく、『この監督交代は継続路線だ』と強調したフロントの皆々様のご意見が聞いてみたい。

10月10日のセレッソ戦の告知はこれだ。

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(引用元:名古屋グランパス

もはや〝堅守〟公認で草。

いやでも文句はない。正直瑞穂最終戦で『もうガバガバな試合は観たくない』とつい口にしてしまった私は立派なイタリア人。フォルツァマッシモ!!

では今季を振り返っていきたい。

 

振り切った中日新聞社のコピー

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まず何を話題にしようかってそりゃあ〝堅守〟。記録でみると実感湧くんでみていこう。

  • まさかあの名古屋が!リーグ最小失点28

ここまできたら国内最高守備ブロックの称号が欲しいと願っていたところ、打倒川崎をついに達成。

  • まさかあの名古屋が!クリーンシート17試合

クラブ記録達成どころかJリーグ最多タイ記録だってよ!最後は4試合連続無失点。ちなみに川崎ですらその数11。個人的にはこの記録がなにより誇らしい。

  • まさかあの名古屋が!ウノゼロ(1-0)9試合

4点とったら4点とられる名古屋よさようなら。1点とったら逃げ切り当たり前の名古屋よこんにちは。勝利数の約半分をこのウノゼロで手繰り寄せた。まさに〝カテナチオ〟。カルチョが名古屋にやってきた。

  • マッシモなりの恩返し。シーズンダブル回避

前半戦(計14試合)で敗れた相手にことごとくリベンジ。柏、東京、鹿島、全部なぎ倒してやりましたわ。

  • ありがとう瑞穂。今季無敗でその役目を終える

全6試合を4勝2分でゴールイン。なんと無敗は優勝した2010シーズン(全10試合7勝3分)以来2度目。まさに聖地瑞穂の名に相応しい結末。6年後また会おう。

ということで、何とも記録尽くめのシーズンであり、〝堅守〟の謳い文句に偽りなし。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 川崎フロンターレ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第12節

面白かったのが大本営中日新聞社で、終盤戦ともなると見出しを飾るのは

自信の『ウノゼロ』

名古屋『堅守の美学』

とこれまた過去の文脈なんぞお構いなし。ただ中日新聞といえば言わずもがな中日ドラゴンズの親会社。中日ドラゴンズの最盛期といえばまさに〝堅守〟だったわけで筆がのるのも仕方なし。文化なので。

 

ガチガチなのは守備だけじゃない

さて、〝堅守〟を支えた要因は何なのか。

もちろんマッシモの戦術、個々のスキル、細かくいえばキリがないが、個人的には〝ガッチガチのメンバー固定〟これを挙げないわけにはいかない。

以下、ガチガチに拘束されたマッシモチルドレンだ。

  • ランゲラック、丸山、中谷→34試合フル出場
  • 稲垣→34試合先発出場(交代は7.22大分戦のみ)
  • マテウス→34試合出場(サブ1回のみ)

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あの過密日程を全クリした者達だ。面構えが違う。

特にACLが懸かったラスト6試合(11.15FC東京戦〜)は自慢の守備ブロック(ゴールキーパーボランチ)を完全固定。4勝2分の失点1。しかもその失点はセットプレーのみのガチガチっぷり。

毎回メンバー表同じなんですけどっ!!!

楽しみを失ったのがそうファミリー。宮原の定位置はメンバー表右上から数えて2番目。変わらない座席表に『せめてくじ引きにしたらどうか』と憤る日々。

ちなみにその割を食ったのが悲しいかな若手達。とりわけ今季最大のサプライズだった成瀬に言及したい。

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前述したラスト6試合までの先発出場が28試合中18試合。メンバー固定後のラスト6試合は出場時間32分。

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(もうMFのポジションに未練はない?)

まったくないです

ここまで言いきった若者に与えられた32分は、主に試合終盤のバランスを重視したサイドハーフ起用。

彼に限らずレギュラー争いのハードルはあまりに高い。例えばセンターバック期待の星、藤井陽也は今季出場時間〝1分〟であり、まだ使われた方の石田凌太郎にしても163分間の出場と2試合に満たない計算だ。

現在の名古屋が掲げるチーム方針に目を向けよう。

獲得する選手は年齢的にも脂の乗ったキャリアピークに差し掛かる選手達。勿論海外移籍の心配もない。

だからこそと言うべきか、目先の結果を追うあまりどうしても彼らの出場機会が優先され、今後キャリアを築くであろう未成熟な選手達の出番は限られる。何故パワプロサクセスモードが人気か、何故NiziUに皆が夢中なのか。ジャニーズずっと好きな人なんで?

彼ら彼女らが成長する様を追いかけたいからですよ。その姿に感情移入したいんですよ。ねえマッシモ。

その意味でいえば、厳しい物言いになるが今の名古屋にその楽しみはない。脂が乗りにのった完成品たちの技と勝負にかけるその生き様を楽しむのが醍醐味だ。

さてそんなことを言っていたらこのニュース。

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資金難の鳥栖につけ込む優良銘柄強奪戦。しかし皮肉だ本来手が出ないこの世代へのアタックが、果たして成瀬や宮原にどんな影響を及ぼすだろう。

風間ッシモが磨き育てた二人の未来は果たして。

 

賛否両論といえばシミッチの起用もな

先ほどの話に繋がるがジョアンの起用も頭を抱えた。

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印象的だったのは11.28のホーム大分戦。アディショナルタイムコーナーキックのチャンスを得たグランパス。ベンチで騒々しくジョアンを呼び、お前の頭だけは信用していると言わんばかりのセットプレー要員でピッチ投入。俺がジョアンなら嫌味でヘディングの練習だけひたすらやるよ。だってマッシモ、アンタはこれがお望みだろ?嫌味の一つくらい許して欲しい。

元々守備固めの展開で〝高さ要員〟として使われていたのは周知の事実。しかし彼の最大のストロングはそのパスセンスとゲームメイキング。だがマッシモが彼の〝フィジカル〟を評価したのはなんとも皮肉な話。

たぶん信頼してねーな説を裏づける話をもう一つ。


【DAZNハイライト】鹿島アントラーズ vs 名古屋グランパス (A) 2020明治安田生命J1リーグ 第25節

あれは10.31のアウェー鹿島戦。終盤ミッチと交錯した米本がやばい倒れ方をし、これは駄目だ周りも本人も〝×〟を出す中、諦めなかったのはマッシモだ。

トレーナーに連れられた痛々しい米本に確認し、やはりプレー続行不可能だと直に聞かされやっと納得。

そうでもしないとジョアン投入の決心が出来ないマッシモよ。米本への信頼が厚いのかジョアンへの信頼が薄いのかファミリーはとても混乱しています。

ボコボコにタコ殴りされたルヴァン杯FC東京戦(0-3)以降、ジョアンの指定席は常に名古屋ベンチ。

しかしジョアンはプロフェッショナルだった。

終盤戦はボランチながらゴール前に飛び込んでいく鉄砲玉スタイルに見事アジャスト。俺仕様と化したジョアンに味をしめたマッシモも、ここぞとばかりに膠着状態の切り札で彼を指名する胸熱な展開。

生き残りを賭けた戦いは外国籍選手だって同じだ。

 

確立された勝ちパターンとそのスタイル

〝堅守〟といってもそれは手段である。

勝つ〝手段〟と、その〝パターン(道筋)〟が重要であり、マッシモは見事にそれを植えつけた。

  • 何がなんでも先制点奪えば籠って塩漬けスタイル

先に名古屋が点を獲れば、絶対に点を奪われない自信故のこのパターン。激しい試合など願い下げ。トランジション(攻守の切替)が多いとはつまり相手に隙を与えかねない展開だ。であれば試合はスローで良し。試合が退屈知ったことか。これがカルチョの伝統よ。


【DAZNハイライト】柏レイソル vs 名古屋グランパス (A) 2020明治安田生命J1リーグ 第31節

アウェー柏戦では解説の柱谷幸一がこの一言。

名古屋は守っているのが楽しくて仕方ないようだ

てなわけでこの展開こそ名古屋ペース。指標である。

そしてここで重要なポイントが〝相手の出方〟。名古屋最大のストロングが〝堅守〟だとすれば、点を奪うために用意した武器は〝圧倒的スピードを駆使したショートカウンター〟と〝そのきっかけを作る高い位置でのボール奪取〟となる。つまりこの土俵で名古屋にやらせるとこのチーム、隙がない。

知ってか知らずか無惨に散ったのが浦和レッズ


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 浦和レッズ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第9節

リカルド連れて行ったら許さねーから(脱線)。

では一方で名古屋の課題はどこにあるだろうか。

つまりは名古屋の土俵で戦ってこない相手が問題であり、裏を返せば名古屋の伸びしろとも言える。それは

  • 固くブロックを作り、奪っても攻め急がない相手

この点は少々細かく紐解いていきたい。

 

マッシモの手腕か補強だ補強に賭けたい課題

■何故ブロックを作られるのが嫌なのか

いやどのチームもそれは嫌だろの突っ込みはご遠慮したい。貴方が正解だが野暮なことを書いていこう。

まずブロックを作られるとスペースがない(当たり前)。つまり走れない。ではボールの動きと共に一人一人が連動して崩していけるかといえばそれは苦手。何故かといえば〝人が動きすぎるとリスクが高い〟と考えるのが往年のカルチョ。奪われたらそこが穴になる、それはカルチョのプライドが許さない。

マッシモがそもそも仕込めないとは言ってないぞ。

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結果、名古屋の選手達は各々の立ち位置に従順だ。

サイドハーフは外に張るし、相手ブロックの隙間に立つ雰囲気はない。必然ボールは用意されたルートを回遊する。中を射抜くのは簡単でなく、結果ボールは外に回る。であるからして、マッシモの攻撃の肝は〝サイド攻撃〟となり、マテウス相馬が帰ってきた。

そうなると、もはや〝個の質〟が頼みの綱だ。

〝堅守〟だけで上位は狙えず一撃必殺の槍があるから上位を目指せた。勝ち点1を担保するのが後方部隊、ならそれを勝ち点3に変えるのが彼らの役目。故にマッシモがマテウスにこだわり続けたのは理解できる。だってカルチョプロビンチャ(地方クラブ)では持ち得ない〝急に現れ勝ち点3を生みだす男〟だから。

ジローラモでなく、マテウスにこそ最高級ワインを。

■何故攻め急がない相手が苦手なのか

一方で攻め手がなければ相手の出鼻を挫くのもいい。

ここで名古屋の次なる手〝プレッシング〟が登場だ。

改めて言うまでもなく、名古屋は個々の選手たちの身体的スピードが群を抜く。圧倒的なスピードを要するサイドアタッカーに、無尽蔵のダブルボランチ。最終ラインも1vs1は大好物。風間さんありがとう。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs セレッソ大阪(H) 2020明治安田生命J1リーグ 第21節

セレッソ戦のマテウス、また後に掲載する湘南戦のシャビエルのゴールはその象徴。攻めあぐねても相手がミスをすればそれが命取り。加速させたら最後だ。

先ほど〝動きすぎるとリスクが高い〟と書いた。

これは当然ながら名古屋に限った話ではなく、相手がボール保持した瞬間はむしろそこが狙い目となる。

改めて名古屋の攻撃時の視点に立てば分かりやすい。そもそもリスク回避のため、陣形を崩さずバランス重視な攻撃をするわけで、つまり仮にボールを奪われても相手に対しプレッシャーはかけやすい。いつぞやの時代のように、奪われた際に誰もいないなんてことはない。ここは非常にロジカルな設計だ。

であるからして、例えば相手がボールを奪った瞬間闇雲にパスをする、あるいは数的不利な状態でも攻めてくる。これはまさに名古屋の土俵、思う壺である。

だったら相手はその状況を回避すればよいのでは。

この点で難敵だったのが大分トリニータ横浜FC


【DAZNハイライト】横浜FC vs 名古屋グランパス(A) 2020明治安田生命J1リーグ 第16節


【名古屋グランパス×大分トリニータ|ハイライト】明治安田生命J1リーグ 第30節 | 2020シーズン|Jリーグ

あいつら全然攻め急がないのな。自陣でも堂々とパス交換、進むのがヤバそうならゴールキーパーも平気で使う。つまりボールを奪いに行くタイミングとポイントがないのだよ。んで結局はズルズルと前進される。

いい加減な私の指摘を超優秀なファミリーが援護。

名古屋は大きな矛盾を抱えていて、点さえ獲れればスローでいいが、点が欲しけりゃスピードを上げたい。

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そうだ、マッシモのフットボールが〝退屈だ〟〝眠くなる〟と評されるのはこのロジックだと思われる。要はリード出来ればブロック固めてスローな試合に持ち込むし、一方で名古屋の長所を消しにかかる相手も選択するのはスローなテンポ。どちらもトランジション(攻守の切替)が乏しい試合となり、結果試合にスピード感が生まれない。なんだこのジレンマは。

故にマッシモはこう嘆くのだ。

得点を量産してくれるストライカーがいたら、という話を5分間くらい続けることもできましたが、あまり現実的でもありませんし、話をしたところでそれが叶わなかったという話を何日か後にしなければならなくなります

おま名古屋も金ないんやぞ。年俸カンパしろ。

■さあ名古屋伝統長身ストライカーの出番がきた

この理論で試合を動かす限り、状況を打破するには三つしか手はないだろう。

  1. サイドに位置する選手の打開力に祈る
  2. ファンタジスタが魔法をかける
  3. クロス千本ノックからのいつかのケネディ


【DAZNハイライト】#名古屋グランパス vs #FC東京(H) 2020明治安田生命J1リーグ 第27節

なるほど①で何度も勝ちを拾った。前半早々PKを奪取したし終了間際にシュートしてハンドもゲット。詰めたら相手が致命的ミスをした。どれもこれも運ちゃ運しかしこちらは無失点だから意味がある。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 湘南ベルマーレ(H) 2020明治安田生命J1リーグ 第28節

②はフォワードに怪我人続出、お前しかいねーとシャビエルを最前線に置いたらまさかの化学反応。お子様誕生おめでとう!美人な奥様で嫉妬しています。

なので来季は③。マッシモがずっと待ち焦がれてるのもこの③。彼のフットボールがこのロジックで成り立つ以上、必要なのは理屈抜きの力技。それを誰よりも理解しているのは良くも悪くもマッシモ自身だ。

ここが補強できたらマッシモ的には鬼に金棒。さあ時はきた、こい三好ヶ丘にセリエAの強者よ。

hochi.news

なーーーぜーーーだーーーーーーーーーー。

※勿論ストライカーとして彼の能力に疑いの余地なし

 

我々のアイデンティティはなんだろな

マッシモばりに語ってきたがそろそろ締めの時間。

結果だけみれば2011シーズン以来の上位争いを演じたシーズンであり、これは久しく忘れていた感覚だ。

ここ近年の文脈なぞお構いなく、これのどこが攻撃的なんだと至極真っ当な突っ込みも当然ながらあるだろう。しかし〝堅守〟が悪いかといえば決してそんなことはない。マッシモからしたらほぼ完璧に任務を遂行したわけで、お前ら俺に感謝しろ状態なのは当然だ。

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シーズン終盤にはやっとこさマッシモ続投の報道も。

何故彼がこれを勝ち取ったか、当然ながら〝結果〟以外のなにものでもない。例えば『このスタイルは俺たちらしくない』と、マッシモ同等の結果を出したロティーナを切ったセレッソを見れば一目瞭然で、つまり我々の最優先事項はやはり〝結果〟なのだ。そしてそれにほぼパーフェクトにコミットするマッシモの仕事ぶりは見事であり、素直に素晴らしいと私は思う。

ここまで結果が出たシーズンがピクシー黄金期以来であることもまた重大な事実であり、あのときも名古屋の代名詞はやはり〝堅守〟〝タレント〟〝圧倒的勝負強さ〟だったわけでそれなりに酷似している。

そう考えると結局我々のアイデンティティって何?

個人的には〝堅守〟ならそれでもいいと思うんだ。一時は〝攻撃的〟にこだわったしかし結果が出なかった。だから(それがたまたまでも)思い切って堅守に針を振り直したらなんとまさか上手くいった。〝結果〟が必要なクラブに最も噛み合わせが良いスタイルがもしそれなら、十分チームのカラーになり得る。

だから今となっては何が大事ってマッシモの後よ。

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〝攻守一体攻撃サッカー〟の看板どかーんと掲げて失敗して、うおおこうなりゃカテナチオいったろかー言うて成功したこの事実。だからこそこの次にどの進路を取るかはめちゃくちゃ難題。理想を掲げて失敗した過去、現実を取った今季の成功、どう評価する。

ちなみに『毎回進路変えりゃいい』って発想は危険。

特に今のマッシモ流は、金が途絶えるつまりタレントがいなくなったらもれなく地獄が待っていることもまた、ピクシー後期〜小倉体制の歴史が物語る。

近年の川崎やそれこそ徳島が何故あれほど安定した成績を残せたのか。それは攻撃的であれ守備的であれ、彼らがブレずに一貫したアイデンティティを持ち続けた結果であり、だから補強や育成が上手くいく。

では名古屋はどうするのか。アカデミーとの融合は。

いまだ風間色が色濃く残っているであろうアカデミーの存在と、今季全くと言っていいほど若手の起用をしてこなかったマッシモ。この大きな矛盾に目を瞑り、目先の結果に舵を切ったクラブ側のツケは、いつか払わなければならないかもしれない。だからこそ、次の選択が非常に重要であることに言及したい。

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さて今季の結果はマッシモと選手達だけの成果か。

この点については、理由はともあれ過去の文脈から大きく舵を切ったにも関わらず、センターラインのキャラクター変更(ジョー、シャビエル、ジョアン→金崎、阿部、稲垣)と、風間時代に融合出来なかったマテウスや相馬を呼び戻す、最小限且つなにより重要だった〝背骨〟の移植に成功した、大森スポーツダイレクターの4年間にわたる集大成ともいえる。

確実にJ1で戦えるチームになるには3年はかかる

フットボール批評ISSUE24

まさか上位争いする4年目がマッシモだったとは斜め上だが、しかし2017年の見立てに間違いはなかった。

唯一誤算があったとすれば、この4年間で大きな軌道修正を強いられたが故に生まれたこの結果を求めたフットボールそのものであり、強くはあるが分かりやすい〝華〟が乏しいのもまた事実。当時のクラブアイコンだったジョーは去り、実力者揃いではあるが誰もが知るようなタレントは不在。そこにきてこの〝堅守〟。だからこそといえば皮肉だが、分かりやすく人が呼べるようなスターが欲しい。そんなことを思う人が一人や二人いても何らおかしくはない。

『名古屋たるものこんな地味でいいのか』と。

とはいえ昨季は残留、今季はACLとマッシモは立派である。〝結果〟で周りを黙らせていくそのスタイル恐れ入った。さあ来季もマッシモの皮肉たっぷりな嫌味に酔いしれよう。そう思いつつある疑問に辿り着く。

我々こそ、ロティーナが必要なんじゃないか?....完。

徳島の地で『足跡』を残してきた者たち


migiright8.hatenablog.com

このブログの次はこれだって決めていた。

もし昇格が決まれば、何か形にしたい。そう決めたはいいものの、徳島のフットボールを語るに相応しい人は他にいるだろう。降格後の6年間を語れるほどその文脈にも浸っていない。つまり適任ではない。

きっとこれ以降、様々な媒体が彼らを祝福し、そのフットボールの秘密、あるいは隠されたエピソード、選手の手記もでるに違いない。そう考えると、数ある記事の中で『その一つ』くらいの立ち位置は気が楽だ。ていうかどうせその程度のことしか書けないし。

なので一つだけ、些細ではあるが記事を残したい。

私の中で今シーズン心に残ったエピソードを。

 

チャーハンから和食までの道のりを知る男


THE PREVIEW TALK #1 「徳島VS磐田」

岩尾憲とリカルドの歩みを知る貴重な動画がある。

ジュビロ所属の同学年、山田大記との対談だ。

この対談は面白いぞ。まず何が面白いって、お互いが対戦する試合前にも関わらず、冒頭の大半ヤット(ジュビロ磐田遠藤保仁)愛に注ぎ込む岩尾が面白い。

今は同業のライバルだと言いつつ結局ただのファン心理消せてないの草。岩尾よ、おま可愛いじゃねえか。

とまあそんなことはぜひ動画を観てくれればいいのだが、面白い話題は他にある。手触り感のある話が。

〝今季の徳島は何が違うのか〟これがテーマだ。

手札が増えた。引出しと幅が明らかに増した

岩尾はリカルドを評しこう語る。なるほど、つまりリカルド自身がこの4年を経て進化していると。

今はいろんな局面で納得感がある

私はあらゆる局面で納得感がない仕事をしています。

ともすると監督は〝変化しない〟存在として語られがちだ。リカルドは当初から優秀で、だからこれはチームが地道に積み重ね成熟した結果だと周りは言う。

しかし岩尾に言わせるとその感覚は乏しい。

そもそもやりたいサッカーとかアイデンティティはあるんだけど人が変わってしまう

実は別の動画でも岩尾はこのつらい経験を口にしている。2018年の夏、主力が4人抜かれ術がなかった、残された手札がなかったと。毎年良いところまで駆け上り、最後の最後で突き落とされる。落とされた先には仲間との別れが待つ。積み上げ、いや簡単ではない。

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ただチームはそうでも、リカルド自身は別だった。

一・二年目は毎日同じ料理しか食わせてくれなかった。今は毎日同じ料理を食わされてない感じ

この絶妙な喩えを聞いて思う。妻が不在の際、子どもに毎度オムライスしか作らない俺とリカルドは同じだったのだと。つまり今の俺はあの日のリカルドだし、あの日のリカルドは今の俺だった。

価値観が偏っている人はチャーハンばかり。最初は美味いけど、毎食だと飽きる

俺のこの偏った価値観よ消えてしまえ。娘たちよごめんなさい。チャーハンとオムライスを同列に語ってリカルドにもごめんなさい。毎日オムライスでしかもそんな美味くなくて草いやごめん。あいつ(リカルド)はチャーハンばっかでも結構いい味出してたもんな。

知らない間にリカルドは和食の作り方を覚えたらしい。毎年どんな材料が集まっても、その材料に合った調理方法(個々へのアプローチ)をもって彼が美味いと思える作品に仕上げる術を習得したのだ。もう馬鹿の一つ覚えでフライパン振ってないってよ。

しかしだこのエピソードは重要なことを語っている。

最初が難しい。提示されている頭の中にあるものと、実際に平面で体現するその作業が難しい

今年(の新加入選手)はその作業に時間がかからなかった

ピッチ上での積み上げは難しい。しかしリカルド自身の積み上げ、また彼と4年間共に歩んだ強化部と作り上げた〝徳島のアイデンティティ〟があったからこそ、2020年の徳島ヴォルティスは生み出された。

『良い選手』ではなく、『徳島にとって良い選手』を重視して獲得しなければならないことは、私もクラブも改めて学べました

(リカルドロドリゲス)

サッカーダイジェスト2020.12.24インタビュー

良い料理人に良い調達人。十分語り尽くした気もするが、出来上がったものに意見する者を忘れちゃ困る。

ではチャーハンも和食も食べ続けた男の話に移ろう。

 

ある動画を見て残った違和感


【対談リレー】徳島ヴォルティスMF岩尾憲×大分トリニータMF野村直輝

今度は岩尾選手が、現大分トリニータの元チームメイト、野村直輝選手と対談する様子だ。

西谷のお兄さんだ。どうでもいいがこの系譜は長男玉田圭司、次男関口訓充、三男田口泰士、四男野村直輝、五男杉本竜士、末っ子西谷和希で確定です。EXILEのバックダンサー並大所帯でこれまた草。

そんな四男野村直輝は岩尾も認めるチーム愛の男だ。

チームのために我慢してするプレーは、今後勝点を積み上げていくためには必要だと思うので、そういったところは見逃さないようにしたいです。そういうチームのためのプレーが多く出ているチームは強いと思うし、チームのためにやることを第一にそのあとに自分のプレーをより良くして、エゴイストになる部分ではエゴイストになろうと。チームのために戦える選手が多いほど強いと思うので、今日のようなゲームをまたやっていければ勝点は積み上がると思います

(2019.9.8愛媛対徳島戦後インタビュー)

これは徳島在籍時の野村のコメントだ。一方で、野村が徳島初ゴールを決めた際は岩尾もこう応えた。

チームのためにというところは野村選手も人一倍考えていて、この場所で点を取ったのは一つ神様がご褒美をあげたのではないかと思っています。彼がここまで点を取ることが出来なかったことに誰かが揶揄することも全くないですし、それだけチームのためにいつも取り組んでくれているとみんなわかっているので、そういった野村選手の姿勢が生んだゴールなのかなと思います

(2019.6.15横浜FC対徳島戦後インタビュー)

そんな野村だからこそ、岩尾は聞いてみたかった。

J1だなって感じる部分ある?

J1で大乱調な試合ってあるのかな?

何度も〝J1〟を意識し質問を投げかける岩尾。

これを何と形容しようか。謙虚、では適切でない。羨望か。いや、ただ嫉妬とも異なる。そうじゃない。

行ってみてえなあ、俺もそこでどれだけやれるか試してみてえなあ。そんな一プロサッカー選手として当たり前の〝上を目指したい〟個人の想いには感じない。

生活してたり、街だったり、チームだったり、サッカーそのものだったり、J1のチームが(〝個人〟と〝チーム〟)どういうスタンスどれくらいのウエイト率でやっているのか

個人か、チームか。岩尾が度々口にするキーワード。

振り返ると彼にもJ1の経験がないわけではない。

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2013年には湘南でその舞台に立ったものの、プロ入り後度重なる怪我に悩まされた彼は殆どその空気を味わうこともなく降格を経験した。そこからはJ2が彼の主戦場だ。翌年、昇格を勝ち取りJ1行きの切符を掴んだものの、彼は自らの選択で水戸行きを決めた。

徳島ではや5年。どんな心境の変化があったのか。それは彼のこの一言が象徴しているように思う。

俺は〝チーム〟を追求する人間

徳島での5年間、彼にもJ1からのオファーがあったと本人が認めている。ただとりわけリカルドが徳島に来てからのこの4年間、彼はキャプテンとしてクラブの象徴であり続けた。それはもう圧倒的な存在感だったし、誰がみてもチームの屋台骨は岩尾だった。

ただその一方で、彼の仲間達はJ1へ去っていった。

そんな状況下で彼はなぜ徳島に残り続けたのだろう。なぜ一サッカー選手として上を目指さなかったのか。

この違和感と拭いきれない疑問への解釈はこうだ。

きっと彼はキャリアの何処かのタイミングで決めたのだと思う。〝個人〟のキャリアアップを追うのではなく、〝チーム〟を追求することにこそ価値があると。

組織の追求とコミュニケーションの追求がしたい

元々彼の夢はプロサッカー選手になることだった。だからその夢を叶えたとき、自身に残された目標は何もないと悟った。待っていたのは度重なる怪我で、そのとき始めて〝日本代表になる〟そんな目標を掲げた。あくまで、個人の目標として。

しかしながら湘南から水戸を経て、辿り着いた徳島の地で、彼の価値観は大きく変わった。皮肉にも、J1からのオファーも彼を変えた大きなきっかけだった。

(J1のクラブに移籍した仮定で)自分に矢印を向けたとき、そこでキャリアを終えた後、自分に何が残っているだろうと想像したら、全く想像が出来なかった。サッカー界やヴォルティスで自分がどう歩いていくかも重要だが、どれくらい足跡を残していけるかの方がやりがいを感じた。サッカー界やヴォルティスがこんな素敵な集団なんだなと徳島県に届けるとか、サッカー界に強みをもって発信できる何かの歯車に何としてもなりたい

ただその変化は、彼の決断はどうやら間違っていなかったようだ。いや、彼自身が正解に変えてきた。

現在と未来が混ざってきた。フットボールの人生はフットボールの人生でしかないと思っていた。それなりの人生を待つより、作っていきたい。今は現在と未来が繋がっている、そんな確信がある

お金、環境、やりがい、仲間だとすれば〝仲間〟

野村への質問で彼は知りたかったのではないか。

上のカテゴリーには自分の知らない世界があるのか。自分がやってきたことが通用しそうなのか。国内トップのリーグには強さを生み出す術が他にあるのか。結局は〝個人〟で片付けられてしまうのか。

自分さえ良ければいいという考え方が好きじゃない。J1のトップの選手達がチームのためにやっているのか、自分のためだけにやっているのか。それを自分の目で見て、対戦して、感じたい

野村は大分移籍の理由をこう語る。同じ〝チーム〟を追求する同志だからこそ、岩尾には貴重な存在だ。

もっと深いところで勝利を追い求めたい

一個人のキャリアアップでなく、そのカテゴリーに関わらず〝チーム〟を追求した者が辿り着いた境地。

それは皮肉にも〝上のカテゴリーでこのチームが通用するのか試したい〟そんな想いではなかったか。

僕もリカルドもいろいろな失敗を繰り返しながらそれと向き合ってきた自負はあります。特に言葉はありませんが信頼し合っていると信じています

2020.12.16対大宮戦マッチデープログラムより

徳島の地で積み重ねてきたのは岩尾も同様だ。だからこそ〝徳島ヴォルティスの岩尾憲〟で昇格しなければ、選んだ道の先にあるものを知り得ることはない。

俺たちの売りは〝チーム力〟

一人ではなく、仲間と上がらないと意味がないのだ。

 

昇格寸前で試された想いと絆

夢舞台まであと一歩。しかしその騒動は突如起きた。

www.sponichi.co.jp

激震、だった。あと一歩なのに、一緒に上がれると思っていたのに。何故このタイミングで。何故、何故。

おそらくその想いに駆られたのはファンサポーターだけでなく、選手たちも同様だっただろう。

立ち上がったのは、やはり岩尾だった。

www.topics.or.jp

皆さんと同じで僕も気になる。でも、今できることしかできないということを改めて考えるべきだと思う。先の分からないことにエネルギーを割いているほど僕たちに余裕はない。ここにある瞬間をいかに大切にするか、どんな思いで取り組むか、目の前の試合に挑むか。そういったことに純度高くやっていきたい。未来のことよりも、今を楽しんでほしい

彼等は急遽話し合いの場をもった。しかしチームミーティングを行うのは決して初めてのことではない。

振り返ると2019シーズン、第14節モンテディオ山形戦前にもその場は設けられた。開幕以降波に乗れないチーム、各々に溜まる不満を察した岩尾が発起人だ。

戦術的な話はしていない。〝捉え方〟の話。起きている現実と、皆の捉え方と、正しい捉え方の整理の仕方。負けると人のせいになる。外に目が向く。監督やチームメイト、戦術....何に対してストレスを抱えているか、それを全て書き出して、皆でそれを見て、『寿命が短いサッカー選手の貴重な一年をその終わり方では勿体なくないか。せっかく徳島まで来て、何も残らなかった、そんな時間にするのは俺は嫌だし皆も嫌じゃないか』そんな整理をした。このままいくと、それで終わってしまうぞ、と。キーワードは〝助け合おう〟だった。一人では結果を出せない、誰かのせいにしても結果は出せない。お互いを減点方式ではなく、認めてあげて、足りないところは補いあう。それがあれば勝った負けたはどうでもいいじゃないか。そこだけ共有をした

チームが壁にぶつかるのは今に始まった事ではない。

サッカーで起きたことをサッカーだけで解決しようとしない。戦術ではなく〝人間〟に問いかける

〝チーム〟にこだわり続けた岩尾にとって、それはきっと昇格に向けた大きな試練だったに違いない。

皮肉にも後日、リカルドの行き先として噂が上がる浦和ではこんなニュースが取り沙汰された。

news.yahoo.co.jp

このチームの選手は監督やコーチに誰も何も言わないし、選手同士、話し合おうともしない。大丈夫かなと思う

チームとはいえ彼らだって個人事業主の集まりだ。

誰しもが自らのキャリアアップを望み、上へ上へとその歩みを進める世界で、果たして〝チーム〟に何の意味があるのだろう。改めて言うまでもなく、徳島は選手の出入りが激しいクラブだ。だからこそ、この地にこだわった岩尾は必死に考え続けたのではないか。

上手くいっている時はいい。問題はチームが行き詰まった時だ。苦しい時ほど彼ら個人事業主たちは試される。〝お前たちはチームになれるのか〟と。

この対照的な話題は、リカルドを巡る文脈により切り離すにはあまりに難しく、また岩尾がプロサッカー選手として己に問い続けてきたことそのものだった。

人は一人では生きていけない

そして遂にJ1昇格に〝王手〟をかけた徳島。岩尾は地元メディアに対しこんな言葉を残した。

もう苦杯はいい。何度も悔しい思いをして、その度に立ち上がってきた。綺麗事で良いチームだった、良いサッカーをした、今年も良いところまでいった、結果は残念だったが素晴らしいシーズンだったと思います、と。そんなかっこ悪い話はない。ここは一人のプレーヤーとしても絶対に譲っちゃいけないシチュエーションだなと強く思う

昇格。この最後にして最大の壁を乗り越えるために、彼は最後の最後で〝己と向き合え〟と説いた。

www.topics.or.jp

全員で何かを統一するフェーズでなく一人一人が乗り越えないといけないフェーズだと思う。他人が感じた何かを押し付けて一つのものを共有するのは難しい。各自がこのプレッシャーと向き合い最高のパフォーマンスが出来るかが問われている

チームで、個人で、最後の壁を乗り越えてみせた。

 

岩尾を、徳島を、支え続けた存在

先程の話題に話を戻そう。

あの騒動の際、岩尾が最後にメッセージを向けたのが、共に闘い、支え続けたファン・サポーターだ。

彼がリカルドを支えたように、彼が残す足跡をファンサポーターはきっと追いかけ続けてきただろう。夢の舞台まであと一歩、しかしそこから崖に落とされ、どれだけ選手たちがこの地を去っても見放さなかった。


J1参入プレーオフ 決定戦 徳島ヴォルティス vs 湘南ベルマーレ

4季目のキャプテン就任決定の際岩尾はこう語った。

 4年連続のキャプテン就任が良いのか悪いのかわかりませんが、チームとして、キャプテンとして、1人のプレーヤーとして、この3年間数え切れない程の困難と向き合ってきました。そのたびにファン・サポーターやチームメイトたちと残してきた確かな足跡を信じ、犠牲と忠誠を心に1年間戦い抜いていこうと思います

『ファン・サポーターやチームメイトたちと残してきた確かな足跡』

苦しい時期を乗り越えてきた仲間はチームメイトだけではない。ファン・サポーターも一緒だった。

そうもはやその足跡は岩尾個人だけのものではない。

そこに一体どれほどの苦悩と悲しみがあっただろう。

あと少しで手が届きそうな夢の切符はその手を離れ、縁がなかったはずのJ1行きの列車には、彼らが愛してやまなかった戦士達が乗車しては去っていった。

もし私の愛するクラブにそれが起きていたらどうか。そんなことを思わずにはいられないのだ。

私は偉そうにも徳島の方々にこう言ってしまう。『自分達が応援するクラブを誇りに思ってください』と。

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でも違ったなと今は思う。クラブだけではなかった。

『自分達が応援するクラブと、それを支え続けたあなた方自身を、誇りに思ってください』

来季がどうなるかは分からない。だってリカルドが徳島にいるか分からないじゃないか。でもさ、徳島はリカルドだけじゃないよ。皆さんや選手たち、何より岩尾憲がいる限り、全てがもぎ取られるわけではない。

槍を常に突きつけられた状態でサッカーが出来る

現役を引退した冨田大介は、J1をそう表現した。

そう、終わっていないのだ。皆さんと、そして岩尾憲の壮大な夢と実験は今から始まる。築き上げた〝チーム〟が、国内最高峰のリーグでどこまで通用するのか。遂にそのチャンスを自らの手で掴んだのだ。

そしてJ2制覇への道もまた、終わっていない。

最後に、このエピソードで締め括ろうと思う。

スポンサーでお金を出してくれている会社に出向いて行かないと駄目だなと思っている。どんな会社なのか、どんな理念の会社なのか、どんな人が働いているのか、自分達に何を期待しているのか。直接会って伝えてもらう作業を俺はしたい 

岩尾憲。一体この男はどこまで背負うつもりなのか。遂にはスポンサーまで背負いたいってよ。

きっと五男杉本竜士ならこうボヤくことだろう。

細かい細かい、疲れる疲れる

来季で33歳しかし遅くなんかない。紆余曲折を経て、彼は一人ではなく徳島に関わる全てを〝チーム〟であり〝仲間〟として、このカテゴリーに連れ戻したのだから。決して消えることのない足跡を残しながら。

徳島の皆様。豊スタへ、J1の舞台へようこそ。

酒のつまみに徳島ヴォルティス

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阿波踊りする監督が熱くないはずがない。

主観全開しかし凄まじい説得力。居酒屋でその熱弁を聞きつつそう思う。もっぱら話題は徳島だった。

徳島が強い。名古屋の仲間と酒を酌み交わしても何故か話題は徳島に飛び火し、リカルドがいかに素晴らしい監督か思い思いに口にする。ファンであり、いつかの引き抜きを画策するゲスい集団そのものだ。

何故これほど彼らは我々を惹きつけるのか。

それをお前が語るのかと言われそうだが気にしない。書くと決めたら必要なのは強いメンタル。

 

若い選手たちの輝く姿が眩しい

攻撃的だポジショナルプレーだと上っ面に知った被ろうかと考えたがそんな理屈はまだこねない。

単刀直入に好きだ、ピッチで躍動する貴方達が。

上福元さん、もっと適当にロングボール蹴ってください。センターバックの皆さん、身体の向きがいちいち丁寧です。サイドバックジエゴさん、馴染んできましたね、愛知から心配してました。栃木から加入した西谷さん、その枠はきっとオラオラ枠、杉本竜士の幻影がぼくには見えます。河田くん、普通のシュートを普通に決めてください。天才肌感が伝わります。

綺麗にまとめたようで紹介はまだまだ終わらない。

君はいつの間に育ったんだボランチの小西。


【公式】ゴール動画:小西 雄大(徳島)70分 レノファ山口FCvs徳島ヴォルティス 明治安田生命J2リーグ 第7節 2019/4/3


【公式】ゴール動画:小西 雄大(徳島)60分 FC町田ゼルビアvs徳島ヴォルティス 明治安田生命J2リーグ 第23節 2019/7/21

悪魔のような左足だ。以前、名古屋にいた内田健太が自身のキャリアを振り返り「この左足で食ってきた」と話していたことを思い出す。貴方もきっとその左足でたらふく美味い飯をこれから食べるんでしょう。

それにしても左足しか使わない。左で蹴れる場所に常にボールを置く癖あり。そこを狙われるのが玉に瑕、がそれを補うには余りある広角に蹴り分けるキャノン砲。あれほど蹴れる選手はJ1見渡してもまずいない。

またボディバランスも素晴らしい。聞けばお兄さんが元忍者で、現在はパーソナルトレーナーとして武道の面から身体の使い方を指導しているそうだ。

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設定が複雑すぎるが気にしては駄目。元、忍者だ。

調べてみるとガンバユース。あーーうちは高尾でやっちまったが、おたくも小西でやったなこれは。

トップ下で重心低くドリブルで突っ掛けるのは渡井。

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168㎝の身長と細かいステップワークから、〝徳島のオルテガ〟と呼んでいるのは私だけ。その甘いマスクに女性ファンも多いだろうが、こちらの情報筋では名波浩もイチオシらしい(見た目じゃない)。

サッカー以外の特技はなんと〝掃除〟。ピッチでは相手守備陣をそのドリブルで掃除していく嫌らしい男も、家庭ではきっと良い男なんでしょう。嫌いです。

正直見た目がすげー地味なストライカー垣田裕暉。

ごめん、初めて見たとき、ちょっと貴方が物足りなかった。「垣田と河田を足して二で割りたい!」なんて図にのった発言をして、「いや足してから割らないでください!」と徳島方面から突っ込まれたとき、面白い返しが出来なかった自身を恨んだんだ。

垣田よ、最近洗練してきたんじゃないか(何目線)。

とにかく献身的に動き回り、前線のあらゆる場所で起点になる。一家に一台垣田裕暉。徳島のために生まれたようなこの男は、なんだか最近すごい美しくゴールを奪う。アシストだって気づけばバルサ顔負けだ。

いや他人事かとおもたわ!難しいシュート入れて簡単なシュート外すオランダ人が昔バルサおったで河田!

そして待ってましたと〝大御所〟岩尾憲様の登場だ。

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リカルドの申し子は、毎年主力が引き抜かれようとこのクラブを支え続けた。私のように偉そうに語るどこの馬の骨か分からない奴はこういうのだ。「徳島を観ていると戦力を言い訳になんて出来ない。優秀な監督はどんな材料も調理する」と。そこに徳島の方々はこう反論する。「何抜かす憲様を忘れてくれるな」。

徳島は決してリカルドだけのチームではない。

その屋台骨となり支え続けたのは岩尾だと主張する徳島勢。そこから垣間見る主将への絶対的な信頼。

岩尾憲をそろそろJ1で観たい。徳島の岩尾として。

 

キャリア最高の時間を謳歌する名古屋の至宝

さて、徳島を語るうえで最大のトピックに移ろう。

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写真がなかった名古屋の至宝、杉森考起(可愛い)。

名古屋ファミリーは考起のこと観ているだろうか。毎試合追ってる貴方きっと泣いてますね。全く観ていない貴方、Go To Eat知らんくらい損しとる(俺か)。

自分のキャリアの中でも、これだけ試合に絡めることがなかったので、すごく充実したシーズンになっています。チームのスタイルがやりやすいですし、徳島に来てチャンスをもらえている中で、ゲーム体力も付いてきているのかなと思います

(2020.10.24 新潟戦前選手コメント)

徳島の識者はこう言った。「今徳島の前線で最も戦術理解度が高いのは誰か、杉森考起だ」と。

嘘だ......八宏にこっぴどく怒られてたあの考起が。

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いや嘘ではない。徳島で水を得た魚の如く走り回る考起がそこにいる。楽しそうにプレーする考起が。

まず抜群にポジショニングが良い。徳島のビルドアップが相手のプレスを綺麗にかい潜った先で必ずボールを受けるのは考起だ。彼がボールを持つとチームにスイッチが入る、「さあ仕掛けるぞ!」と。ポジションにも捉われない。縦横無尽にポジションを取り、味方との適度な距離感の中でパス、シュート、ドリブルとそのポテンシャルを思う存分発揮する。

奪われればハードワークだ。ルックスから想像しづらいため案外語られないが、彼の球際に対する激しさは折り紙付。その負けん気が徳島のプレスを支える。

知らない間に超絶美女を妻に迎えた。そこは嫌いだ。

いやお姉さんだろ。奥様だなんて認めてたまるか。

 

〝補強<既存選手〟だと断言したリカルド

それにしても何故これほど若手が育つのか疑問だ。

毎年主力という主力をごっそり抜かれ、「だから目立っちゃ駄目なんだ」と一見分かるようでよく考えれば意味の分からない結論で他サポには揶揄される。

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それでもリカルドは挫けない。ガリガリに痩せ細ったチームは大好物だとぶくぶく太らせる料理上手。

そしてダメ押しのこの一言。

今いる選手たちのことをすごく信頼していますし、試合に出ている選手たちはもちろんですが、試合に絡めていない選手たちも、彼らがどれだけそう思っているかわかりませんが、私はすごく信頼しています。仮に今新しい選手を獲ったとしても彼らを超えることはできないくらい、彼らのことを信頼しています

(2020.10.31 群馬戦前監督コメント)

だーーーーー好きだーーーー(隠しきれない想い)。

おい聞いてるかそこのイタリア人(とばっちり)。補強補強言ってんじゃないよだからスペインに勝てないんだよイタリアは(勢いなのでお許しください)。

話を戻すが、この発想の違いはとても興味深い。

 

〝枠組み〟を忠実に再現したいマッシモ

最近、名古屋の応援雑誌Grun12月号を読んだ。

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そこで巻頭インタビューを飾った中谷進之介が、マッシモについて語った言葉を紹介したい。

今はチームとしての枠組みがあって、チームのみんながその中に入っているという感じ

その枠を皆で広げてチームが強くなるのかとの問いを、中谷はキッパリと否定する。

いいえ、その枠組みはすでに監督が作ってあるので、その中で規則正しい動きをするという感じでしょうか

この何気ないやり取りは、マッシモのチーム作りを端的に表現している。既に枠はあり、選手たちが期待されるのはそれを広げることでなく、忠実にその中で働くことだ。ある種機械的に、だからこそミスなく、完璧に実行して初めて、相手に勝つことが出来る。

であるからして、その枠の中に入れる選手、つまり与えられた設計図の通り機能できる〝部品〟(他意はない)でないとこのチームに加わることは許されない。期待されるのは〝伸びしろ〟以上に、あくまでこの設計図を忠実に再現する〝完成度〟だ。

若手に出番が与えられていない理由はこの点にある。厳密にいえば年齢が問題ではなく、名古屋の若手に彼の部品になり得る素材が少ないのが問題だ。

そりゃそうさ彼らは〝八宏チルドレン〟なのだから。

では選手たちに求められる素材とはなんだろう。

私が見る限り、マッシモの求めるそれはとりわけ〝フィジカル〟に依存したものだと感じている。

例えばストライカーには当たり負けしないボディバランスとキープ力。ウインガーには爆発的なスピードと単騎で仕掛けられる圧倒的突破力。ボランチには90分間走り切る体力そして球際での絶対的な強さ。最終ラインは言うまでもない。強さ、速さ、高さ、全てだ。

要は元々その選手が持ち得る身体的要素が大きなウエイトを占め、枠に入ろうにもそこをクリア出来ない限り土俵にすら上がれない。例えばジョアンシミッチが〝高さ要員〟で度々重宝されるのはまさにその象徴であり、またその役割を負う事実は皮肉な話だ。

高さが必要なら、木偶の棒でも連れてこればいいさ。

根底にある思想は〝ボール保持〟ではなく〝非保持〟であり、だからこそ守って走り、少ない人間でも決め切るだけの個人能力が問われている。

まさにアスリートとしての資質そのものが。

 

枠組みは〝選手が作るもの〟だった風間八宏

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ではやはり前任者である風間八宏が理想だったのか。

同様に、中谷進之介のコメントを紹介する。

風間さんの場合は枠組みを自分で大きくして、まずはそれをやるという感じでした

風間八宏にとっての枠組みはあくまで選手個人個人の総和であり、監督が規定すべきものではなかった。

では好き勝手やればいいかといえば勿論そんなことはなく、彼は唯一〝(あらゆる意味においての)技術〟をそのチームの掟とし、それを繋げて枠組みが生まれるよう〝目を揃える〟ことを何より望んだ。その目が正しく、そして素早く揃えば、チームの可能性は無限大だと解き、〝ボール保持〟が前提にあるからこそ、その力の伸びしろに終わりはないとしたのだ。

選手たちには〝予想内〟でなく〝予想外〟を期待し、だからこそ〝完成度〟に加え〝伸びしろ〟も強く求めた。座右の銘が彼らしい、「自分に期待しろ」。

若い才能を躊躇なく試したのも、その期待の表れだ。

 

共通する二つのジレンマ

右か左。どちらかを頑なに支持しまた否定もしない。

ただ対極故に、皮肉にも共通点が二つあった。ハマれば滅法強く、しかしハマらなければとことんクソ試合になること。そして、求める〝個〟は違えど、結果だけ見れば完成度の高い選手が求められたことだ。


【DAZNハイライト】#名古屋グランパス vs #FC東京(H) 2020明治安田生命J1リーグ 第27節

先日のFC東京戦は、終始緊張感とまたミスが一つも許されないレベルの高い好ゲームだった。スコアは得意の〝ウノゼロ〟でも、お互いに張り詰めた糸を切らさないゲームは、その後大きな余韻を残したものだ。

そう、ハマったときの風間八宏とマッシモは最高だ。昨シーズン、豊スタで川崎相手に3発ぶち込んだ風間時代のあの試合も、今回のFC東京戦も、きっと今後何度も見返すに違いない。それぞれの特色がはっきり出た、個性的で尖った素晴らしい試合だったからだ。

では一方でハマらない試合だとどうだろう。

枠がなければ困った時にすがるもの(立ち返る場所)がなく、枠で雁字搦めだと予想外の事態(バグ)が起きた際、それを超越するものが生まれない。

結果、負ける時は散々なものだ。目も当てられん。

またその枠組みの有無に関わらず、発想があまりに極端な場合に〝選手を選んでしまう〟のは皮肉な事実ともいえる。とりわけ風間八宏に至っては、チームの枠組みを大きくしようと試みるほどに、傑出した能力の持ち主に追いつけない者達が脱落する仕組みを内包した事実は悲しき皮肉であり、足を引っ張った要因だ。

結局アップデートに〝補強〟は避けて通れなかった。

しかしながら各ポジションに完成度の高い選手達を揃えていたことで、正反対の志向を持つ監督にバトンを渡しても、結果的にセンターラインだけマッシモ仕様にすれば形になったのもまた皮肉な話だった。

 

リカルドにとっての〝枠組み〟とは何なのか

では本日のテーマである徳島に話を戻そう。

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彼らは先に述べた名古屋の〝混ぜ合わせ〟に近い。

徳島と聞くと、誰もが攻撃的で、パスを多く繋ぎ、立ち位置を重視するフットボールと想像するだろう。

ではリカルドにマッシモ的要素がないかといえばそんなこともない。彼には彼の明確なルール、枠組みがある。それは例えば純粋にボールを扱う技術、つまり個人完結型の能力に始まり、場面ごとでの適切なポジショニングから、ボールを奪われた際のハードワーク、球際への厳しさ。つまりチームの〝アイデンティティ〟を表現するうえでの十分な理解が必要だ。

リカルドが〝補強をしても既存選手を越えられない〟と発言した根拠も考えたい。勿論選手のモチベーションを触発する狙いもあるだろう。ただ一方でこの時期に(獲得可能なレベルの選手が)加わったところで、既存グループに簡単に馴染めるほどこの枠組みに入るのは容易でない。そんなプライドもまた垣間見える。名古屋からレンタルの榎本もそうだ。時間はかかる。

では裏を返すが果たして時間をかければどうなのか。

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ウチみたいなクラブは若い選手の価値を上げていけるようにならないといけない。これは500万の若手と3000万のベテランで本当に6倍の差があるのかどうかという話でもあります。監督は『その選手を3000万の選手にするのが自分の役割だと思っている』と言ってくれています。(中略)『若い選手について勇気を持って起用して、その価値を何倍にもしてあげられるんだ』と

今更だが徳島は決して資金豊富なクラブではない。

つまり(本人の中で)完璧な設計図を描き、それを忠実に再現しようにもそのパーツが集まらないのだ。

であるからして、そもそも〝非保持〟つまり〝リアクション〟重視のチーム作りは容易でない。どうしても個人が持つフィジカルな要素がモノをいうからだ。その顕著な例が他でもない名古屋であり、またそのレベルの選手達がそもそも徳島に集まるのか疑問も残る。

そこで大きな意味を持つのが、リカルドがアタッキングフットボールの信仰者である事実。

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大切なのはチームのアイデンティティです。どういうアイディアをベースに戦っていくのかということですね。ウチのチームで言えば、奪われたボールは素早く取り返し、ボールを支配しながらコンスタントに相手ゴールへ迫っていくこと。それを実現する手段としてシステムがあるわけです。そして重要なのは相手があるということです。だから、『このシステムでしか戦えません』という選手ではダメでしょう。これはしかし、チームが機能しやすい『快適なシステム』の存在を否定するわけでありませんよ

彼のフットボールはとても〝日本人向き〟だ。

確かにピッチは広く使うし、サイドで横幅を取り、最前線が奥行きを上手く使うことは間違いない。

ただ彼の場合はそのサイドの選手(WBやSB)とトップの選手(ストライカー)の個人能力に大きく依存していない。彼らがチームの意図するポジショニングと動きを繰り返すことで、結果的に〝中央〟での数的優位を演出し、そこの選手達が相手の間、間を取って攻め立てる。悪く言えば一人では非力でも、グループの単位で見れば強烈な攻撃を生み出す要因だ。そして奪われたらハイインテンシティでボール奪取!これもまた若い力だからこそ効果的に機能する。

また〝主体性〟を担保する重要性にも触れておこう。

私としては見てくれるサポーターが楽しんでもらえるサッカーをしたいですし、そういうクラブとしてのアイデンティティを確立したいという思いもあります。だから創造性のある選手というのは不可欠です。もちろん、いいサッカーをすればいいなんて言う気はさらさらなくて、勝ち点3を獲るサッカーをしたい。『ボールを持って攻撃的なサッカーをするチームだけれど、勝てないね』ということでは意味がない

〝ボール保持〟の発想が前提にある限り、〝主体性〟を失うことはない。主体性があるとはつまり、技術と頭脳の発展とチームの成長がイコールで繋がることだ。それさえあれば、選手達の目的は〝ミスをしないこと〟ではなく、〝アイデアを生み出す〟ことに繋がっていく。またそこに技術と頭脳さえ備われば、柔が剛を制すことだってきっとあるだろう。

もちろん相手がありますから、難しい状況に陥る試合はあります。その時に相手の対策をどう打開していくか。戦術的に困難なシチュエーションを解決できる選手を育てたいと考えています。サッカーは守ることより攻めることを教える方が難しいと思っています。たくさんの練習が必要ですし、しっかりとした分析が不可欠です。映像を見ながら、良い部分を抽出してわかりやすく教えることも大切ですね。そうやって練習でできるようにして、試合で実践できるようにしていく。それが我われ指導者の仕事です。とても情熱的な仕事ですが、毎日悩ましいですよ(笑)

リカルドを語る上でも度々登場する〝相手〟の存在。

「相手を見ろ」が口癖だった風間八宏を思い出す。しかしながら彼らが意図する〝相手〟は少々異なる。

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リカのサッカーはとにかく相手の出方を見て、それに対して『こうボールを動かしたら、ここが空いてくる』とある程度イメージをして、対戦相手のタイプに合わせて表現していく。(中略)リカのサッカーは相手がどこであろうが、前から来るチームであっても、引いて来るチームであっても、“間”を突いたり、的確なポジショニングをとり、連動やローテーションをしながら組み立てていく。相手の動きに自分たちで対応できるサッカーをやり続けてきたので、自分たちがどうこうではなく、相手を見ながら『次はどこにポジションを取ればいいか』を考えて動く

相手を〝個〟と定義し、その破壊を目指し徹底した局面の打開、それに必要な個々の技術(止める蹴る外す)の習得にこだわったのは風間八宏だ。一方で相手を〝組織〟と定義し、盤面の変化を生み出す為の技術(止める蹴る)と、それを見逃さない目(戦術理解)を育もうとするリカルド。相手の背中を取るのか、はたまたそもそも相手のいない場所を取りに行くのか。少数のユニットが都度繋がり合い崩すのか、チーム全体が有機的に動くことで崩すのか。この発想の違い、その難易度とリスク、必要な戦力を考えると、後者の方がより現実的なのは言うまでもない。

毎年主力を引き抜かれても上位争いを演じるその裏側には、リカルドが目指したこれらのアイデンティティが徳島の地に根付いてきた事実が存在する。

4年間、ブレずにこのサイクルを回し続けた事実が。

 

徳島の姿から、我々は何を思う

さて、〝アイデンティティ〟はマッシモにもある。

リカルドの言葉を借りれば、決してチームが機能しやすい『快適なシステム』を否定するわけではない。

問われるべきは、どんなアイデンティティを植え付けることがクラブにとってベストな選択になるのか。

クラブの規模、トップチームにおける既存メンバーの特性、またアカデミーの方向性。縦串でクラブを捉え、最も適したアイデンティティを選択すべきだ。

それにしても今回は徳島の紹介記事ではなかったか。

いや仕方ない。だって徳島の試合を観ていると、気づくと名古屋のことも考えてしまうのだから。

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徳島は素晴らしいチームだ。彼らの姿を追う眼差しは、きっとファン目線とある種の羨ましさが混じったもの。もちろんリカルド最高と言いたいわけではない(いや最高だ)。あるシチュエーションではマッシモに分があるかもしれない、例えばリカルドが資金に恵まれた名古屋を指揮し上手くいくとも限らない。

しかしながら思うのだ。彼らには名古屋が目指そうとした、失ってしまったかもしれない何かがあると。

www.soccer-king.jp

まず、私にはファン・サポーターに楽しんでもらえるようなサッカーをしたいという思いがありました。たくさんゴールが入ったり、ディフェンスの時間が短かったり、ボールを失ってもすぐに奪い返して攻撃をしたり。そういうサッカーをすれば、見に来てくれた人たちが楽しんでくれるのではないかと考えたんです。だから、徳島のサッカーでファンやサポーターが楽しんでくれているとしたら、とてもうれしいです

スタイルの好き嫌いなんて上っ面なものではない。名古屋というクラブそれ自体が結局どこを目指すべきなのか、また我々ファミリーがクラブを通しどんな未来を夢見たいのか。あの日を境に蓋を閉め気づかぬようにしていた想いにそっとノックをしてくるような、そんな大切な問いを与えてくれるチームが徳島だ。

徳島の皆様。豊スタで、J1の舞台で再会しましょう。

こっちの赤対青の戦いも終わってない

待ち焦がれた週末のJも今では向こうから迫る日々。

ダレてきたな過密日程。大切だったはずの試合がなんだか消化目的なのがやるせない。狂ってるわ中二日。

だがそんな日々もあと僅か。今季も気づけば終盤だ。

migiright8.hatenablog.com

思い返せば今季最大のハイライトはやはり豊スタ川崎戦か。馬鹿やろう思ったより序盤じゃねーかと突っ込むのはやめて欲しい。なにせ今季の川崎は別格だ。

川崎戦以外は正直書くことがない。そう開き直っていた日々に変化が訪れたのはあのルヴァン杯敗退の日。

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マスコット総選挙なら我々に大敗のFC東京

何回負けたら気が済むのかマッシモは。思い返せばあんたもだ風間八宏。勝てた試しがないグランパス

しかしシーズンはまだ終わっていない。そして訪れた最後のリベンジの機会。大一番は、この週末だ。

 

忘れられないランゲラックとの出逢い

名古屋がJ1昇格後、つまり2018シーズンから3年間における対FC東京戦の成績を振り返ることから始めたい。シーズン前のキャンプでの練習試合も含めると、

なんとまあ圧倒的敗北、1分7敗。

弱い、なんてくそ弱いんだお前たち。知ってたけど、全然勝ててないって俺薄っすら気づいてたけどな。

そんなこんなで遡ること2018年シーズン前。

楽しみだった。一年振りにJ1に復帰した名古屋が、果たして上のカテゴリーでどこまでやれるのかと。

そして沖縄で組まれたFC東京との練習試合。

2018.2.10 名古屋グランパスvsFC東京 1-1 分け

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さあきたぞJ1勢。試合は観れないしかし拾う神ありと沖縄特派員が試合のレポートをしてくれるらしい。

「ランゲラックが決定機を阻止!」

「ディエゴオリベイラまじやばーー」

「またもランゲラック!」

「いやあああランゲラック!」

「ランゲラック獲得は大当たりですね!」

凄まじいランゲラックのレポートの数々。悪気はない特派員に自覚はないが勘のいい私は悟る。なるほど、たぶん俺たちはやられている、きっとやられている。

そうここから恐ろしいFC東京との日々は始まった。

 

死ぬほど相性が悪かった八宏式

2018.4.28 FC東京vs名古屋グランパス 3-2 敗戦


【公式】ハイライト:FC東京vs名古屋グランパス 明治安田生命J1リーグ 第11節 2018/4/28

2018.10.7 名古屋グランパスvsFC東京 1-2 敗戦


【公式】ハイライト:名古屋グランパスvsFC東京 明治安田生命J1リーグ 第29節 2018/10/7

シーズン前に感じたあの外れるはずのない予想は、難易度が低すぎてやはり全て大当たりだった。

泣きたくなるほど裏を取られる最終ライン。牙を剥くのは永井謙佑。手塩にかけ育てあげた宮原がよーいどん!でハムをあれしちまったとき、何故よりによって永井お前なのだと悲しみに暮れた豊田スタジアム

いやはやそれにしても永井とディエゴのスパーリング相手かよとツッコミたいくらいには悲しい程ザルだ。

走りたいチームの先に好きなだけ走れるスペースがある。これは控えめにいって地獄だ。ただこの一か八かのスリリングな戦いはあろうことか我々を狂わせた。

まあいいさ残留出来たしなんて気を取り直して2019。

今季こそはと誓った我々にまたも沖縄での前哨戦がやってきた。もはや恒例、待ってました風物詩。

2019.2.9 名古屋グランパスvsFC東京 3-9 敗戦

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ささささささささんたい......きゅう。

目を疑う〝3対9〟のスコア。野球か野球やったのか。

45分を4本やり内3本でそれぞれ3失点。なるほど今季も風間サッカー始まったな!3年目で麻痺した感覚、失点すらももはや麻薬、合法だから派手にやって!

しかしシーズンも蓋を開けたら怒涛の開幕3連勝。

いける、疑ってごめん今季の八宏は本気だ。そう信じかけた我々にまたも立ちはだかったのはFC東京

2019.3.17 FC東京vs名古屋グランパス 1-0 敗戦


【公式】ハイライト:FC東京vs名古屋グランパス 明治安田生命J1リーグ 第4節 2019/3/17

ぬああ永井。名古屋戦になるとモチベが俄然上がる永井に対しあの広大なスペースなに。中盤で水が溢れた瞬間、敗北の決まった徒競走が始まり悲鳴をあげる。

2019.8.30 名古屋グランパスvsFC東京 1-2 敗戦


【公式】ハイライト:名古屋グランパスvsFC東京 明治安田生命J1リーグ 第25節 2019/8/30

瑞穂での再戦は正直記憶にない。今思えばこの時既に始まっていた風間八宏解任のカウントダウン。

あの時は楽しかった。けど今観るとさ、やられ方エグくて草。でもすげーぶっ飛ぶアレ(薬)だったよな。

はっきり言おうこの2年はFC東京の〝カモ〟だった。

 

期待したのにアンタもかマッシモ

風間八宏解任後にやってきたのがそうマッシモ。

アーリアから始まった東京発名古屋行きも、その後丸山、米本、太田と続きダメ押しだったのがこのマッシモ。ちなみにその後オジェソクもやってきた。まあ皮肉にも今となってはそこ(東京)との親和性は抜群。

相手のレジェンドをことごとく招き入れ、最後にもう一押しと指揮官をも連れてきた大森さんは本気だ。たまたまそこにいた!?あーーー聞こえませーん。

これで勝てる。もう俺達に振り返るスペースはない。

2020.8.15 FC東京vs名古屋グランパス 1-0 敗戦


【DAZNハイライト】FC東京 vs 名古屋グランパス (A) 2020明治安田生命J1リーグ 第10節

駄目だ....今度は攻め手が全くねーじゃねえか。おいイタリア。一押しどころか一刺しで殺されまたも敗戦。

守備は堅くとも割り切って守ればなんとかなると健太に思われたマッシモ。仕方ねーと外から千本クロスもことごとく跳ね返され、試合後はお決まりのこれだ。

ストライカーガ、タリマセン(意訳)

馬鹿言ってんなよそこのイタリア、金に頼ってる余裕はないんだ何故ならこちとらコロナでクラファン中。

しかしこのまま終わるにはあまりに名古屋ファミリーが不憫だと、神は再戦を半月後に用意する。それが冒頭のルヴァン杯準々決勝だ。惨めな敗戦からたった半月、反省しカイゼンしてこそ我々世界のトヨタだよ。

2020.9.2 FC東京vs名古屋グランパス 3-0 敗戦


YBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 名古屋グランパス戦

ファックイタリア人っ!!ファックカテナチオっ!!

トヨタじゃねえ、あんたらにトヨタを名乗る資格はねえ、降りろ今すぐこの車から降り(音声は途絶えた)

ディエゴオリベイラに何人引き摺られてるのかと頭を抱え、ルーキー安部の2得点で思い出す「おいそういえば来季の名古屋のルーキーはどうなった」。

仕方なく話を戻すが、兎にも角にも問題は明らかだ。

重心を下げたFC東京の守備陣が崩せない。押し込めてるならまた攻撃すればいいじゃないか。そんな浅はかな期待を打ち砕く重戦車ディエゴオリベイラのサイド起用。そこで作られた時間によって陣形を持ち直すFC東京の仲間たち。だったら名古屋も思い切ってライン上げようぜ!と思ったら最後。最前線には天敵永井謙佑だ。憎い、その配置があまりに憎い。

サイドにディエゴオリベイラクリスティアーノを置き、前線を永井謙佑とオルンガに任せるそこのFC東京柏レイソル。お前ら......そういうとこやぞ。

それにしてもだ。名古屋の監督はどいつもこいつも(失礼)何かが足りてて何かが足りない。

「我々が目指すのは攻守一体のフットボールです」なんてまやかしを高々と掲げても、FC東京が突きつける「お前たちは赤かと思えば次は青、右か左で真ん中なんぞありゃしねえ」この事実。畜生!赤か青でアメリカ大統領戦に上手く掛けたと思っていたら、よくよく考えると名古屋と東京もあろうことか〝赤対青〟。ていうか東京に至ってはバイデン優勢トランプ劣勢みたいなユニフォーム着やがって絶対に許さない。都合良いから青、あなた方このブログでは青。

おっとちょっと待て。この喩えで陰口が聞こえたぞ。

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名古屋のことエンタメ性のないトランプって言うな。

 

青は政権交代せず続投

一方のバイデンいや青陣営を率いる長谷川健太監督。

来季の契約延長を早々に発表。革命は起こさないが堅実なチームを作り上げるその手腕が高く評価された。

それにしてもこれまでの今季成績、名古屋が二試合消化が少ないとはいえ、勝ち点49の名古屋に対し、FC東京は勝ち点50。まさに互角、直接的なライバルだ。

ただこの勝ち点、どう評価するかは意見が分かれる。

とりわけ目を向けたいのが選手起用についてだ。

私が知る限りでも、青の軍団FC東京は二桁以上の23歳以下の選手たちに出番が与えられ、実際にターンオーバーをフル活用しながら、しかもその戦力になっている若手が数多く存在する。

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シーズンの途中には絶対的なレギュラーだった室屋成と橋本拳人が海外移籍し、チームの中心である東慶悟は戦列を依然離れたままである。しかしその穴を埋めたのが大卒ルーキーの安部柊斗と中村帆高の最強明治コンビ。またプロ野球の育成枠(3軍)のようにJ3で鍛え続けた中村拓海や原大智、品田愛斗も今季遂にJ1の舞台を主戦場としつつある。

つまり育成枠を全く活用しない名古屋に対し、彼らは虎視眈々とサッカー界の千賀滉大、甲斐拓也、石川柊太を育て上げてきたわけだ(分かりづらい)。

では良い成績=メンバー固定必須とした名古屋は。

モノになったのはマッシモ公認で〝タナボタ起用〟と暴露された成瀬ただ一人。途中出場ながら稀にチャンスを貰う石田を除けば残りは全滅といっていい。そもそも若手を活用する前提の編成になっていないじゃないか、そんな意見もあって当然。つまり弾がない。

例えばこの過密日程でも全試合フル出場中の両センターバック。彼らの控えに甘んじた藤井からすれば、来季新加入選手でもこようものならどうなるのか。

言うまでもなく、おそらくノーチャンスだろう。

 

来季に一体何が残せるのか

マッシモフィッカデンティ長谷川健太

彼らを一括りに〝堅守速攻の似た者同士〟などと呼ぶつもりはないが、かといって遠すぎるわけでもない。

勝ち点も近ければ、〝先制点を奪われると打つ手なし〟なところまでお揃(おそろ)らしい。

ではそんな彼らが結果似たような成績を残したら。

はっきり言えば、若手にもしっかり投資した上でその成績を残した長谷川健太の方がよほど優秀だろう。

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確かに彼もまた地味な監督だ。そのフットボールは決して華やかとは言い難く、また攻撃的なわけでもない。ただ彼はよく選手達を理解し、また観察していると思うのだ。だからこそ主力が毎度海外移籍したとしても新たな若手がそこを埋める。バランスが崩れれば組み合わせを変えあるべきバランスに整える。フットボールのベースは変わらなくとも、選手の個性とその組合せで最善のバランスを見出す術が、彼にはある。

あるべき水準を求めるか、あるべきものを活かすのか。この価値観の違いはあまりに大きい。

マッシモが言う通り、〝勝つこと〟は大事だ。勝たなければ何も残らないことは、我々名古屋ファミリーが誰よりも知っている。勝てないのは、罪だ。

そして名古屋はなにより結果が求められるクラブであり、それこそがあの2年半最大の教訓に違いない。

だからマッシモのこれまでの成績は素晴らしい。結果だけを求め舵を切り直した名古屋にとって、彼の唯一にして最大のタスクは〝結果〟しかないからだ。故に彼は正しい。彼に非があると言うつもりもない。

ただ一方で、〝勝つだけ〟なのは虚しい。

今になり、何故我々は過去あれほどの連敗に耐えられたのかと反芻する方もいると聞く。少なくとも同様の経験がある方はきっと、その敗戦の中ですら何か未来への期待や希望を見ていたのではないか。

攻撃的でも守備的でもやり方はなんだっていい。

大切なのは勝利と、そしてなにより未来への希望だ。

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もし今の名古屋のやり方が正しいのだと証明するなら、徹底的に勝ち、そして必ずACLの切符を掴む必要があるだろう。良い順位だったけれど、残せたタイトルも、来季への権利も何もない。そんな結末を迎えることがあれば、この今季になんの意味を見出せよう。

ひたすらに未来を追い現実を疎かにした過去、故に現実だけ追い求め未来をおざなりにする現在(いま)。

我々が今進んでいる道は、きっとそういう道なのだ。

ただ矛盾するようだがそれでいいじゃないか。一度打ち壊したものを4年かけて必死に作り直した。確かに紆余曲折だらけ、しかし全てが理想通り進むなんて思わない。一歩進んで失敗し、我慢する時期を乗り越えてまた前に進む。そんなクラブをみてみたいのだ。

その意味でも、また今季二戦二敗の事実からしても、我々は次こそFC東京を負かさなければならない。あろうことか彼らに負けて潔く納得しては駄目なんだ。

せめて〝結果〟で未来に繋がる何かを残すために。

負けて「FC東京強かった」なんて完敗を認めお手上げするマッシモなんぞもうゴメンだ。フォワードがいなかったなんて言い訳はやめてくれよ。そんな場面は今シーズン何度もあった。そうだ見習えトランプを。負けても認めず引き下がるな。駄々をこねてこねてこねまくれ。いやていうかそろそろ勝ってくれさい。

言っておくがマッシモの大一番だ、青との戦いは。

マッシモとはいったい何者なのか

マッシモは今でも振り返る。あの日のブーイングを。


名古屋グランパスvs鹿島アントラーズ@豊田 ホーム最終戦セレモニーでブーイング 2019年12月7日

まず、私はずっとこの名古屋グランパスを支えている多くのファンがいるのは分かっていますし、サポーターの力なくしてサッカーのチームは成り立ちませんから、彼らをリスペクトして、このチームのためにと入りました。しかし実際「とにかく残留を」というミッションを達成してサポーターから私に向けられたのは、ブーイングでした

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

 なんとまあ器の小さい男。ネチネチといつまでも語るその様は正直他人事に思えないが、側からみれば滑稽にも映る。まさに他人の振り見て我が振り直せだ。

ただ彼にとってあの出来事は一大事であり譲れない。

勝ち点いくつを獲得して残留してくれという話ではありませんし「残留させてくれ」というところで私が就任して残留させたという点で、もし今日のブーイングが私に対してのものならば、それはちょっと違うのではないかと思います

2019年12月7日 鹿島戦(最終戦)後会見

思い返せば昨シーズン苦労の末に残留を勝ち取った際も、彼はあのブーイングの意味、そして自身の立場とミッションに再三言及した。さすが本場カルチョの世界で揉まれた男だ。自身の主義主張をはっきり通し、難破しかけたこの船を救ったのはこの俺だと聞かれてなくても畳み掛ける。そして今思えばこの時からはっきりしていた〝結果至上主義〟。プロセスはどうだって?都合の良い物語ならどれだけでも活用するが、筋の悪い物語ならとことんまで焼き尽くすさ。

その意味でいえば、彼にとって前任者が二年半かけて残したモノは決してありがたい遺産ではなく、自身の足を引っ張るだけの負の遺産であったに違いない。

であるからして、彼にとっての昨シーズンは前任者の尻拭い、つまり〝残留〟ただそれだけだった。

絶対にこのチームを残留させて、また新しいプロジェクトへと、私は残留のためだけに来たわけではありませんから。まずはチームを残留をさせて、また別のプロジェクトに向かっていくためにこの仕事を受け、やってきました

2019年12月5日 鹿島戦試合前会見

絶対に認めることはないであろう前任者の遺産を引き受けてでもこの仕事にしがみついた。それは残留のご褒美が資金力豊かな名古屋を率いる権利であり、つまり今季こそが彼にとっての〝一年目〟なのだ。

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「ブーイングではなく、むしろ感謝すべきだろ」

何故そのミッションを達成して尚批判を受けるのか。

おそらくきっと絶対そう思っていたマッシモにとって今季にかける想いは並々ならぬものがあるはずだ。

極端に言えば来年、来季が始まってからまったく新しい、私がやりたかったサッカーを目にしていただけるようになると思います

2019年12月5日 鹿島戦試合前会見

昨季の最終戦前、来季に向け彼はこう宣言した。

そう、今目の前にあるものこそが、彼のチームだ。

 

自我を貫く相手こそ大好物

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ビッグクラブとプロビンチャ

資金に恵まれたクラブ(現在その定義に含まれるクラブがいくつあるか疑問だが)と地方クラブ、大きく分けてこの二つに分類されるのがカルチョの世界だ。

マッシモが主戦場としたのはプロビンチャ

豊富とはいえない戦力の中で、いかにトップリーグで生き残り、規模で上回るチームに一矢報いるか、それはもう毎晩血眼になって研究に研究を重ねたはず。

私はイタリアのセリエAから来て、サッカーのすべてを見てきました

2019年10月3日 大分戦試合前会見

そしてその名残が未だマッシモには色濃く残る。

彼の真価が発揮されるのはいわゆる〝格上〟との戦いだ。Jの場合は、〝格上のように己のスタンスを貫くチーム〟と定義すべきか。つまりはどんな相手と対峙しても根幹にあるそのスタイルを崩すことなく、〝主体的にアクションを起こすチーム〟といえる。

この手の相手こそマッシモにとっての〝カモ〟だ。

彼のチームは相手のアクションを見逃さない。そのアクションは常にリスクと隣り合わせだからだ。相手のリスクこそ、マッシモにとっては最大の好機である。

そもそもマッシモは〝リスク〟の三文字が大嫌いだ。

彼の辞書にリスクの文字はないだろうし、あればきっと轟々と燃やし尽くすはずだ。何故危険な目にあってまでゴールを目指す?ノーリスクで勝利を目指せ。これがマッシモの哲学であり、自らリスクを冒すなど愚の誇張。リスクは冒すものではなく、狙うものだ。

イタリア人にとってフットボールは仕事。イングランド人にとってのフットボールはゲーム

ファビオ・カペッロ 

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

故に後ろを顧みない敵をマッシモはいたぶり尽くす。その餌食となったのが川崎であり横浜そして神戸だ。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 川崎フロンターレ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第12節

 

全ての行動の根幹にある〝リアクション〟

マッシモは今季が始まる前こんな大風呂敷を広げた。

ー監督にとって理想のサッカーとはー

具体例を挙げれば、リバプールだ。極端にポゼッションが少なく、縦に速く、前からプレスに行く、奪ったらカウンターを決める。ただ、理想は進化し続けると考えてほしい

2020年1月1日 中日スポーツより引用

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リリリリリリリリリリリバプールだと!?

騒つく名古屋界隈してやったりのフィッカデンティ

ただ蓋を開けると、例えば川崎のように毎試合己のスタンスを貫くようなことは決してなかった。いやむしろそんなアグレッシブな試合がいくつあったよ。

彼にとって〝ハイプレス〟とは、決して信念ではないのだ。あくまで〝理想〟であり〝手段〟に過ぎない。

そもそもボールの握り合いなんて発想がおかしい。奪って、そこから握ればいい。まずは奪う、なのだ。

だからリスクを冒してポジションを変えながらボールを運ぼうとする相手には二択。出鼻(ビルドアップのスタートとなる相手最終ライン)を挫くか、最後(自陣ゴール前)で凌ぐ。分かりやすくいえば、マークがズレる前に潰すか、駄目なら最後だけ抑えてしまう。そこで比較的出鼻を選ぶ点が今季のマッシモの特徴であり、昨シーズンからのチームの成長ともいえる。

余談だが、彼が当時イタリアで〝攻撃的〟と評されたのはこれが理由だろう。ドン引きのカウンターが〝カルチョらしさ〟と謳われていた時代を思えば、彼の発想は確かに攻撃的に映る。ただ一方で前から積極的にボールを奪いに行けば果たしてそれが攻撃的だと断定できるか、この点も以下の内容で考えていきたい。

さて今季の過密日程を考慮しチームの重心を上げっぱなしには出来ない苦悩もあるだろう。ただだからといってそれが絶対に譲れぬスタイルでもない。最も大切なのは、自分達以上に相手の出方でありその特徴だ。

例えば面白かったのが〝対オルンガ〟だった柏戦。

ハイプレスとはつまり〝背後のスペースを使われる可能性がある〟ともいえる。一つプレスを外されたらよーいどん!追いかけっこだ。それでも追いかけて勝算があるのならリスクでないが、追いかけても勝てっこないならそれはリスク以外のなにものでもない。

だからマッシモは潔かった。リスクだとジャッジすれば、行かない。構えて、引き込み、カウンターだ。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 柏レイソル (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第8節

まあ結局たった一瞬の隙を突かれて散ったけれど。

 

ノーリスクを担保するのは〝バランス〟

では負けないくらいゴールを奪えばいいじゃないか。

簡単に言ってくれるな。死活問題なのはここだ。

そもそも何故アクションを起こすチームに彼が強いか。まずはここから紐解くべきだ。というのもそれは決してボールを奪う場面に限らないからであり、彼のチームがボールを運ぶ際もその強みは発揮される。

但し条件が一つだけある。相手のプレスの人数、その型が名古屋のそれにぴったりとハマっていないこと。

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名古屋ビルドアップの最大の特徴、それは〝数的優位を担保し、可能な限り型を崩さないこと〟にある。であるからして、ビルドアップの人数は最大で8名になる。ゴールキーパーのミッチ、最終ラインの4名、ボランチの2名、そしてトップ下の阿部。これで8名。

彼らがボールを動かし、時にポジションを移動しながら、しかしバランスは崩すことなく相手の穴を見つけていく。相手が後方の数的同数を受け入れない限り、少なくとも名古屋自陣では名古屋の数的優位が必ず成立する。つまり相手のプレスには必ず穴がある。その穴が開く瞬間を、相手の傾向を分析した上でピッチでゆっくりボールと人が動きながらあぶり出していく。

ボール保持者がクリーンな状態で前を向いた瞬間が名古屋のスイッチだ。両翼の動きを意識した金崎がそれとは逆の動きでボールを迎える体勢を作り、その懐に収める。これが名古屋のパターンである。

この〝8(名古屋)vs6(相手)ビルドアップ〟(相手が後方で数的同数を受け入れない限り、名古屋の前線3枚に対し、相手はゴールキーパー含め5枚で対応する。結果、名古屋のビルドアップに6枚で対抗することとなる)のクオリティはリーグ屈指だ。

では何故ボール保持の際までバランスに拘るのか。

逆の立場になって考えるべきだ。必要以上にポジションを崩してもし途中でボールを奪われたらどうする?それは相手にとっての穴であり、名古屋にとってのリスクだ。そんなリスクはカルチョの歴史が許さない。

我々(ポルトガル人やイタリア人)のフットボールでは頭脳がすべてだが、イングランドフットボールはハートがすべてだ。頭脳だけでプレーするフットボールは美しくない。しかしハートだけでプレーするフットボールは成功を収められない

ジョゼ・モウリーニョ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

だから名古屋の選手達は極力ポジションを崩さない。見慣れた〝小林裕紀一列降ります〟なんてことも今はほぼやらないし、マテウスが中央に行けば阿部が彼のいたサイドをしれっと埋める。とりわけ前線をポジションで縛ることはないが、一方で誰かが動けば誰かで埋める補完関係、秩序は保たなければならない。

穴を自ら作らない。これが絶対の掟なのだ。

しかしだからこそ問題も起こるわけでさあ死活問題。

 

リスクを取らなきゃ点はとれない

彼のチームが前半戦勝てなかったチームは何処だ。

東京、鹿島、柏、東京、東京、東京くっそ東京。

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これらのチームに共通した点が一つ。〝過剰なリスクを取らず、可能な限りバランスを崩さない〟ことだ。前からいくなら名古屋の型を意識し、後ろで構えるなら名古屋に「崩しにこい」とアクションを求める。端的にいえば〝ベーシック〟なチームである。

そう名古屋最大の欠点は〝アクションが必要な局面〟

相手がビッグクラブのように振る舞わない。途端に息が苦しくなる。「どう攻める?」「どこに動く?」ああ息苦しい。悩みながらボールを回せば出口は見えず追い詰められ、駄目だ顔をあげたいと思ったとき彼らは金崎夢生を見る。タイミングなどお構いなしだ。

全ての行動がリアクションをもとに形成され、それは相手にアクションがある前提の上に成り立つ。故に相手が主体性を持ち能動的に動かなければ、アクションという名のバトンは名古屋に委ねられ、自ら走るレールを見つけなければならない。

そうだ唯一例外的な戦い方を挑んできたのが札幌。

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後方のリスクを取ってでも前からマンツーマンで名古屋の一人一人に徹底的に喰らいついた。そもそもマンツーで付けばズレねえじゃん!いや確かに。ただ一人でも剥がされたらその戦い方は詰みますよ。あはは笑えるフルタイムやり遂げた札幌あっぱれ。

てな具合でこうなると名古屋には自家発電が求められる。定位置でボールを回せば相手が崩れるほどことは簡単に運ばない。可能な範囲で個々が自己判断で動きプレーのテンポを上げることで状況の打破に挑む。

ただ悲しいかな好き勝手に動けばバランスは崩れるし、仲間を思いやる走りでなければ相手の壁に風穴を開けることも出来ない。最低限の運動量が担保されないとプレーのテンポだって上がるはずもない。

このシチュエーションで価値のある選手とは。

〝活かされるプレーヤー〟ではない。問われるのは〝周りを活かすプレーヤーが何人いるか〟だ。

soccermagazine.jp

挙げだしたらキリがないんですけど、一つはやっぱり良い攻撃するためのサポートのし合いであったり、空の動き、使われなくてもスペースを空ける動きが足りていないというか。自分、自分となっているというか、何人かが連動した動き出しがないので、ボールと受ける人だけのプレーになってしまっています。それ以外に3人目がしっかり受けに来ていたりとか、もし出てこなかったりしても裏には誰かが走っているとか。そういうことで相手のディフェンスが間延びしたりしますから。そういうところが足りないなと思います

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

阿部ちゃんのこの会見は沁みました。

リスクは大っ嫌いしかしリスクを冒してはそのツケを払う悪循環。ビルドアップの最中にパスカットを許し、奪い返したくともそのバランスには変調あり。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 鹿島アントラーズ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第14節

そんな試合が続けば自信だって無くなるさ。

リスクを避けるあまり人の動きは途絶えるし、ボールの行方は中ではなく外へ行く。中へのパスはリスクもあれば相手のカウンターに直結する。でも外だったらタッチラインが味方となりパス自体は通るから。

でも外でボールを受けてどう崩す?そりゃセンタリングだと千本ノックが始まり不慣れな金崎山﨑が四苦八苦。そして待ってたとばかりにマッシモはこう嘆く。

得点を量産してくれるストライカーがいたら、という話を5分間くらい続けることもできましたが、あまり現実的でもありませんし、話をしたところでそれが叶わなかったという話を何日か後にしなければならなくなります

2020年9月11日 横浜FC戦試合前会見

会見後行われた横浜FC戦は言及すべき内容だった。


【DAZNハイライト】横浜FC vs 名古屋グランパス(A) 2020明治安田生命J1リーグ 第16節

構える相手を打開出来ない展開が続く中、後半からマッシモがとった策は珍しく冒険的だったからだ。

中を攻略出来ないなら的を増やせとシステムを4-1-2-3に変更。大外はサイドバックが高い位置に張り出すことで幅を担保し、代わりに両翼が中に絞ることでワントップの金崎を含め中央の起点を3枚にした。

効果は抜群だった。見方によっては〝人を立てただけ〟だが、個人技で上回る名古屋が中に外に相手を制圧する。例え奪われても横浜FCのカウンターなら脅威ではない=リスクではないとのジャッジだろう。

ただこのハイリスクな戦法も相手の快速ウインガー松尾の投入で状況が一変。必殺のカウンターを喰らい運よくオフサイドで失点を免れたものの、これで怖気付いたかマッシモは従来のシステムに急いで戻し必殺のクロス千本ノックが始まったのだった。

我々イタリア人はフットボールにおいて「店じまい」をしようとする。リードを守りゲームを殺そうと試みるのは、これが理由だろう。格下と戦っている時ですら賭けはしたくない

ジャンルカ・ヴィアリ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

博打要素満載しかしマッシモも挑戦はしている。

サッカージャーナリストの清水英斗氏は、このチームの課題を端的かつ的確にこう表現した。

「戦略的リスクを取れるか」。素晴らしい表現だ。

 

若手を〝使いようがない〟マッシモ流

さて、これまでの内容で気づくことはないだろうか。

リアクションなら相手に応じ戦い方を変えながら、その穴を正確に捉え掴む技術が必要だ。一方でアクションありきの状況では個のスキルと発想で打開する力量が求められる。つまりその場合理屈ではなく、力技。

これ、もの凄く個々の高いレベルが必要では・・・

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でもいつもマッシモはこう言うんだ。

我々はどんなラインでやっているかと言えばしっかり結果を出したいというところです。我々がしたいプレーの質をなるべく下げないでやっていきたい、ということを皆さんには分かっていただきたい。その中で、うまくいっていないんだったら若い選手を使えばいいんじゃないかと、なんで選手を交代しないんだと考えている人がもしいるのだとしたら、代えようにも代えられない事情が一つありました。あと唯一、今回の終わってしまったウインドーの中で、センターバックや中盤の補強をなるべくしてもらいたかったのですが、それがしてもらえなかったこともありました

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

いやマッシモちょっと待て。気持ちは分かるがそれは貴方のフットボールの文脈があってこその理屈であり、つまりその状況を作ってるのは貴方自身だ。もっといえば、名古屋に比較的近いフットボールをする東京はそれでも若手をばんばん使っていることにも言及すべきであり、要は試す勇気があるかないかだ。

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そう考えると結局今の名古屋とマッシモの関係は、雑にまとめれば〝ビッグクラブ(金のある名古屋)×プロビンチャ(マッシモ)〟の夢コラボ状態であり、つまりマッシモからすれば「金さえあれば(補強さえ満足に出来れば)必然的に(イタリアのとき夢にまでみた)俺のカルチョはビッグクラブ側にアップデートされる」なわけ。なるほどその理屈で考えれば彼が名古屋で指揮をとりたかった理由も分からないではない。イタリアでは苦渋を味わったしかしその国のビッグクラブ側で指揮をとればきっと!自身の力は証明される。彼ほどの自信家ならそう思ってもおかしくない。

彼の肩を持つとすれば、クラブが今季マッシモに対し何をミッションとしているか不明な点であり、例えばトップ5が条件なら、彼の判断も間違いではない。

イタリアでは結果ばかりを見る。どうしてそうなったのかを気にかけず結果ばかりを重視するんだ。試合に負ける人間は馬鹿者。これで話が片付けられてしまう。良いプレーをすることや未来に向けた基盤を作り上げるといったことは重要視されないし、とにかく試合に勝たなければならない

フランコ・フェッラーリ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

2試合未消化4位。マッシモも言うだけのことはある。

 

後半戦の目標はとりあえず東京に勝ってお願い

さあそして勝負の後半戦がスタートする。

マッシモの課題は明白だ。端的にいえば〝リアクション以外で勝つ術を持ち得るか〟どうか。

きっとマッシモはこれからもマスコミを通じ事ある毎に補強の必要性を訴え、それが実現しない現実を嘆き悲劇の主人公を演じるだろう。それでも川崎に勝ちこの順位だと、自身がいかに優れた力量の持ち主かこれでもかとアピールするはず。〝対フロント〟を見据えたマスコミの扱い方と利用の仕方なら百戦錬磨だ。

そういう監督をチームに据えたのは他でもない我らのフロントであり、であるなら彼の為に補強するのが筋ではないか。ただ残念にも現実はそんな状況にない。

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では残りの後半戦、果たしてどう戦うのか。

マッシモがそのポリシーを捨て〝リスクを取る〟か、既存のやり方でなんとかするしかないだろう。

我々はそれが実現することを願い背中を押すだけだし、駄目なら「分かっちゃいたがアイツも典型的なイタリア人監督だ」と唾を吐き、なによりろくに補強も出来なかったフロントに牙を剥けばいいのだ。

世界一の指導者を起用したとしても、良い選手が揃っていなければ、チームは何も勝ち取れない。だからエンポリは絶対にスクデットを獲れない。誰が監督になってもだ。しかし逆もまた真なりだ。レアル・マドリーを率いていれば、何がしかのタイトルを獲らないことのほうが難しい

スヴェン・ゴラン・エリクソン

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

前半戦で勝てなかった相手にリベンジ出来るか。

観るべきポイントは単純明快だ。何故ならそれらの相手に勝てるかがマッシモ最大の課題であり、このチームの伸び代を図る目安になる。東京に次も負けたら「馬鹿やろうこの無能が!」と罵ってやれ。

同一シーズンで同じ相手に三回負けること、許されますかいや許されるはずがない。てかありえない!!

彼が得意とする相手にはそれが例え順位で上にいようが叩きのめしてきた。しかし苦手な相手には無得点の引き分けでも「無失点で勝ち点1だ」と(なんとなく)誇らしげなマッシモのメンタル。なんなんだそのメンタルそんなプロビンチャ(田舎)的発想とっとと捨てちまえ。気づけここは(一応)ビッグクラブだ。

そうマッシモはよくやっているし、もし最終的にトップ5で終わればその結果は上出来と呼べるだろう。ただ一方で勘違いしてはならない。それはあくまで結果論で、おそらく多くの人間が戦う以上は一番上を目指して欲しいと願うものだ。例え非現実的であろうが。

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「残留争いのチームが4位だぞ。これが俺の成果だ」

マッシモはきっと鼻高々にこう息巻いているだろう。

ただそれで満足して欲しくないのだ。振り返れば彼が日本で残した最高順位は東京時代の4位。では1位との差は何処にあったのか。これまでに記した彼のチーム作り、彼のプロビンチャで培ったメンタルこそがその差を生み出した最大の理由ではないのか。格下から得た勝ち点1に満足するのではなく、取りこぼした勝ち点2を嘆かなければこれ以上の上積みはない。

私はイタリアから来て、残留するということはどれだけ評価されることなのかという考えも違いますし、一つの試合を落とせば生活自体が苦しくなるかもという、全く違うところから来ています

2019年12月7日 鹿島戦(最終戦)後会見

マッシモを見ているとカルチョの歴史やその哲学を知るような想いだ。そんな〝元セリエA監督〟の経歴を持つ偉大なマッシモ様のプロビンチャの意地に期待したい。いやその果てしない野望に乗っかり楽しもう。彼がビッグクラブの器か試される後半戦の幕開けだ。

そいえばどうやってセレッソ倒したんだマッシモ。

「奪う」と「握る」で川崎を取り締まれ

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川崎がヨーロッパナイズされていると評判だった。

だから率直にこう思った。お前ら裏切ったのか、と。

彼らの評判はすこぶる高かった。「強くなりすぎた川崎はなんか嫌」ダゾーンを遠ざけるのはこの気持ち。

中村憲剛が長期離脱した今シーズン、中盤逆三角形の4-3-3に挑戦する展開には驚いた。さては日本のマンチェスターシティ路線。そのシティと斜め上な展開で兄弟盃を交わしたのが同じ神奈川の雄、横浜Fマリノス。彼らに王者の称号を奪われたのが効いたのか。確認するためにここは過去の記憶を遡るべきだ。


2019明治安田生命J1リーグ第33節vs川崎フロンターレハイライト動画

大敗する川崎をほじくり返して一息つく。

名古屋とはリーグ前哨戦となるルヴァン杯の一戦が迫る。時はきたと意を決し川崎の試合をチェックした。

正直エグかった。彼らの強さは、想像以上だった。

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川崎よ、〝出したら寄る〟をどこに忘れた。なぜ大島僚太が裏に走る。後ろはお構いなしでゴールしか目指していなかったあの初々しい田中碧はどこへいった。

阿吽の呼吸に依存したあの日の川崎は何処かへ消え去り、真夏のピッチを人ではなくボールが絶えず動き続ける。短く正確だった止める蹴るは長くそして速いパスに変わり、〝空いている場所〟だった外側には俺の居場所だとサイドの住人が居座った。失ったのは局面ごとの想像を超えた細かい崩しとそこを突破する破壊力。しかし手に入れたものは揺るぎないバランスとその結果生まれた圧倒的なボール奪取力。よそ者には厳しかった川崎特有のリズムも、今は諸手を挙げて彼らを歓迎だ。ピッチでは新参者の山根から新人の旗手まで、何ら違和感なく俺は川崎の選手だと主張する。

まさに〝洗練〟。ただ面白かった、ただ美しかった川崎は影を潜め、彼らは〝強く、そして美しい〟フットボールを目指すレールを見つけたようだった。目の前では昨シーズン、疑似カウンターなる戦法でリーグを席巻した大分のビルドアップが今にも窒息死寸前。

こいつらにどうすれば勝てるのかと途方に暮れる。彼らの試合を観た後、正直にそう思った。ただ我々だってもうあの日の姿ではない。相手の急所を突く嫌らしさとクラブに嫌味を言わせたら右に出る者はいないあのマッシモならきっと、活路を見出してくれるはず。

気を取り直しここからは、先日のルヴァン杯を振り返りつつ直前に迫ったリーグ戦の展望をしていきたい。


【ルヴァンカップ ハイライト】名古屋グランパス vs 川崎フロンターレ(H)2020Jリーグ YBCルヴァンカップ グループリーグ 第3節

 

予想出来るはずのない「ボランチ シャビエル」爆誕

マッシモはきっと考えたはずだ。

川崎がボールを保持し名古屋の陣地を占領するなら、守って刺し返せばよいのではと。ただ同時にこんな疑問も浮かんだはず「果たしてそれが効果的なのか」。

彼らにボール保持された先にあるものは何だろう。灼熱のピッチで永遠振り回されるボール回し、占領される我らの陣地、奪っても追い込み漁の如く迫り来るハイプレス、最前線で待ち構えるレアンドロダミアン。

想像を越えた地獄。最後に至ってはもはや違法な隠し口座。シンガポール目掛けて高飛びしそうな空中戦。

マッシモは重い腰を上げ、ついに決心する。

不正は許さない(=ボールは回収だ)※想像です

そして爆誕したまさかのシャビエルボランチ起用。

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それは奇抜なアイデアだマッシモ ※私の声です

本場セリエAの発想を遺憾なく発揮するマッシモ。

狙いを推察する。まず分かりやすく〝技術〟。川崎のプレスに怯まない〝質〟がポイントだ。但し質が担保されても相手に数的優位を奪われるのは避けるべき。

ここでの数的優位とは即ち名古屋のビルドアップ。

川崎の前線のプレスは中に1枚、左右に1枚ずつの計3枚。そのうち左右の2枚は名古屋のサイドバックに貼りつかず、そこへのパスコースをきりながらボールを中に誘い込む。背後で控える中盤の2枚(インサイドハーフ)が、川崎ゴールに背を向けボールを受ける名古屋の選手に猛スピードで襲い掛かる。これが目的だ。

つまり川崎の狙いは相手のパスコースを〝中央〟に誘導すること。逆に言えば中央の優位性を奪うことこそ名古屋にとっての活路となる。中がとれれば外もとれる。これさえ出来ればボールは進むし川崎は下がる。

そこでマッシモが閃いたのがシャビエルのボランチ起用。名古屋のセンターバック(2枚)からビルドアップを行う際、直接的に対峙するのは川崎のワントップ1人のみ(1枚)。ここに背後から川崎の中盤2枚(インサイドハーフ)が加勢しようが、もちろん名古屋もボランチの2枚が控えている。つまりビルドアップのスタートとなる中央のエリアに限っていえば〝4(名古屋)vs3(川崎)〟。あったぞ数的優位このエリアは名古屋のものだ。「+1」の優位性を最大限生かす駒として白羽の矢が立ったのが、〝奇策〟シャビエルだった。

そしてこの起用にもう一つメッセージが込められた。

 

川崎の心臓「アンカー」田中碧からボールを奪え

川崎に名古屋陣地を占領されまいとビルドアップには手を打った。では他方、川崎のビルドアップは易々と許して良いのか、いやそんなことはない。自由にやらせれば結局は自陣に即張りつけの刑だ。しかしボランチには奇策シャビエルとはやっちまったなこの采配。

しかし神はマッシモを見捨てなかった。いや名将マッシモは見つけ出したのだ。この奇策の勝算を。

そうか....シャビエル前からプレスだ ※想像です

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マッシモは狙いを定めた。川崎のボール保持を支える大黒柱は、中盤逆三角形の底に位置するアンカー田中碧だと。彼を徹底的に潰し機能不全にすることが、川崎のボール保持にきっとバグを起こすはずだ。

シャビエル、川崎のビルドアップが始まったら後ろで構えてはいけない前だ前に突撃だ ※想像です

名将マッシモの心は弾む。そしてシャビエルも従順だった。いや、従順じゃないとあいつは試合に出してくれないと彼は学んだ。あの高速スプリントが田中碧に襲い掛かる。そして生まれた怒涛の2得点。

どのようなクオリティーが自分たちにあるか、スピードやテクニックという部分をいかし、ボールを持てば一気に相手ゴールに迫ることができるやり方で、ボールの奪い方も含めた準備をした上で、今日のメンバー配置で試合に入りました

マッシモすげーあんたやっぱセリエAの監督さんだ。

〝対川崎〟によって生まれた奇策。しかし攻守に理に叶ったシャビエルボランチ起用というマッシモの賭けは、少なくとも前半23分頃までは大当たりだった。

この起用はまさに攻守一体疑ってごめんなマッシモ。

 

名古屋に潜むビルドアップの「穴」

鬼木達を悩ませたシャビエルのボランチ起用。

悩みは二つ。名古屋のビルドアップを阻害できないこと、また己のビルドアップが機能していないこと。さてペースを取り戻すにはどちらを解消するべきか。

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今季の川崎の強さは試合を通し戦い方を細かくチューニング出来ることだ。この試合ではチームの守り方を三段階で微調整。立ち上がりは名古屋の二列目にスペースを与えまいと低く構えブロック形成。しかし前述した名古屋の狙いとビルドアップに手こずった結果、前半13分に従来のハイプレスに変更。そして前半も半ば飲水タイムを迎えた彼は、三つ目の手を打った。

この一連の細かい修正に鬼木達の哲学が垣間見える。

4-3-3への固執やめて奪う際4-4-2な ※想像です

彼が常に選ぶのは〝ボールを奪うための選択肢〟だ。運ぶ、ではなく、奪う。この選択肢こそが、試合の主導権を奪還する最善手ときっと彼は考えた。

この決断が、試合の様相を一変させることとなる。

名古屋側のビルドアップが始まる際、4-4-2の「2」を担ったのは中盤の下田だ。このケースだけは2トップのように装い、名古屋のセンターバックにプレッシャーをかけていく。つまり名古屋の4-4-2に対して、同じく4-4-2に変形することでシステムを噛み合わせ、それぞれがマッチアップする構図に切り替えたのだ。

さらば中央の数的優位。さらば俺たちの対川崎戦法。

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川崎の対応策で露呈した名古屋の弱点、それは〝ゴールキーパー〟だ。ビルドアップでそれぞれがマッチアップする構図になった場合、一人だけフリーでいられる存在は当然ながらゴールキーパーだけである。現代のフットボールでは彼らもフィールドプレーヤーの一人としてカウントされ、その振る舞いが要求される。彼らが効果的にビルドアップに参加できれば、他が数的同数でも常に「+1」が保障されるからだ。

しかし悲しいかなミッチは足もとが得意ではない。

この名古屋の構造に自覚的だったのは、おそらく鬼木達であり、マッシモ自身であっただろう。結果的に川崎の対応策は名古屋に〝運ぶ〟スキルを問いただし、そこで活路を見出せない名古屋を後目に、試合のペースは徐々に川崎へ傾くこととなる。

 

「奇策」を「愚策」に変えた鬼の子、鬼木

ボールを握れなければ魔法の子もただの問題児だ。

川崎が名古屋陣地を占領し始めたことで、その魔法の効力は消え、ピッチには悩ましい光景が広がった。シャビエルはどこにいる。シャビエルよ戻ってこい。稲垣はなにを遠慮している。シャビエルに喝を。灰になる、稲垣おまきっとこのままだとマジ灰になんぞ。

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ここまでブラックとは予想外でした ※想像の稲垣

数的優位な利点も失っただけでなく、あろうことかボランチの守備もままならない。マッシモが対川崎に用意した奇策は一種の賭けだった。賭けに勝つ唯一の手段は、〝川崎相手にボールを保持し、川崎陣地で試合を進め、奪われたら川崎陣地で奪い返す〟。気づいたもはや唯一じゃない。つまり川崎がやりたいことを我々がやる。これが川崎に打ち勝つ最善手なのだ。

意図せず彼らに自陣を奪われたら最後。チームの重心が下がれば前線との距離は間延びし、川崎の心臓であるアンカーへの規制はきっと解けてしまうだろう。

だからこそマッシモはまずビルドアップの優位性を求め、川崎の陣地を奪うことで同時に彼らのビルドアップも奪おうとした。これが彼の戦略だった。

試合前のマッシモのコメントはその象徴だ。

今回の試合に関しては、〝質の高いサッカー〟という方向性で準備をしなくてはいけないというイメージを持っています

川崎にはその質をこちらの質で上回るしかない。

しかしながら川崎はその名古屋の狙いに対し、細かい微調整でビルドアップを阻害し、名古屋の陣地を奪い返すことで己のビルドアップも蘇生させたのだ。

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結局、シャビエルボランチの奇策は前半で終了した。

大博打に勝ったかに見えかけた矢先の落とし穴。その奇策は、鬼木達の英断によって愚策に変わったのだ。

前半の攻防を振り返り試合後に鬼木達はこう語った。

飲水タイムよりも前に少し変化をつけていたんですけど、本当はもっと序盤の序盤に(名古屋の狙いを)分かっていながらも、自分たちの形を推し進めたいという葛藤もあって、時間が経過してしまいました

川崎は試合を通しプレスのパターンをいくつも試す。

彼らが何度も何度も微調整を重ね、最も神経を注ぐのは〝相手の出方に対しどう圧力をかけるか〟だ。

だからなのか彼らはスロースターターだ。この試合ではそれ以外に自軍の右サイド(名古屋の左サイド)の守備に綻びがあると判断すれば、小林と宮代のポジションをチェンジし盤石な体制を築いた。それでも尚「分かっていてそれでも貫くか悩んでいた」と言うのだ。

なんと恐ろしい男よ。鬼の子だよアンタは鬼木達

 

次なる戦いの予告編となった後半

後半からボランチジョアンシミッチを入れ、通常運転に切り替えた名古屋。お互いのシステムと選手が真っ向から絡み合い、試合は混沌とした。

しかしながらお互いに無得点で終わったこの後半は、リーグでの再戦に向けた睨み合いのようなもの。

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名古屋に突き付けられた課題、それは川崎のプレスをどういなすか、その術を持ち得るかどうかだ。

人数の誤魔化しが効かない中、では何で優位性が得られるか。〝質〟か〝位置〟だ。どれだけのプレッシャーが迫ろうとびくともしない質を求めるか、数で誤魔化せなくとも各々の立ち位置で優位を得られる工夫。

さてこの日の後半、川崎のブロックを後退させる、彼らが嫌がる場所でボールを受けられた名古屋のオフェンシブハーフがいただろうか。悲しいかな皆無だ。

その文脈で一方の川崎に目を移すと、4-4-2に変化する中で最も守備のスキルが問われるのは、4-3-「3」から4-「4」-2に移行した前線に位置する2人のウインガーである。〝中〟で奪うチームが〝外〟で奪うことを求められたとき、彼らの立ち振る舞いが重要なキーとなる。つまり名古屋からすれば川崎に4-4-2の練度を問うことこそが、勝機を見出す最大の活路だ。

ウインガーといえば三笘よちょっとこっちに来い。

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イケメンで長身。あのストライドにスピードと技術。腹立たしいくらいの落ち着きに、それらが生んだ何でも可能なあの佇まい。ギリギリまでプレーの選択肢は担保され、急激にストップするあの深い切り返し。カメラに何度抜かれようが変わらないそのイケメン。

控えに目を向けると齋藤学に怪我人には長谷川竜也。

おかしい早く荷物をまとめてベルギーに飛べ三笘よ。ラストゲームとかせず即ベルギーに飛んでしまえ。

あと家長あんたのやってることは「ピッチ上の飲水タイム」だ。相手陣地を制圧したいからとあんたは常にタッチライン手前。それはもはや違法な飲水タイム。

#ジャッジリプレイで取り上げて (※DOGSOだ)

本当に腹立たしい選手層だが俺は黙って終わらない。

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あっはっはもう名古屋の阿部ちゃんだばーかばーか。

あの川崎に対抗するには、位置的優位の申し子、阿部浩之はもはやマストで必要だ。絶えずパスコースに顔を出し続ける金崎夢生とともに、川崎の選手たちが困るような位置取りを阿部ちゃんが繰り返すことで、彼らの4-4-2に歪を生み出したい。歪めよ今すぐ歪め。

 

川崎の圧倒的な出力を生む「もう一つの秘訣」

無敵にみえる川崎にだって付け入る隙はきっとある。

前述したプレス時の4-4-2の練度もそう。また攻撃時の4-3-3の破壊力が、マッシモ名古屋カテナッチョ(通常Ver.)に通用するのかは、実はまだ未知数だ。

次の再戦で出方が読めないのはむしろ名古屋。

大博打に打って出たルヴァン杯で、川崎との距離感を正確に掴んだマッシモはさてどんな手を打ってくるだろう。同じゲームプランで川崎の陣地を奪いに行くか。はたまたそれは難しいと判断し、一か八か川崎の攻撃を受けつつ一撃必殺のカウンターで対抗するか。

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カギは、マッシモが川崎の攻撃力をどう評価したか。

彼らの攻撃を〝受けきれた〟ならゲームプランを変えるのも一つの手だ。しかしその攻撃力にやはり一目置くのなら、あの日と同じく真っ向勝負しその陣地を奪いに行くはず。そもそもその評価に関わらず、川崎攻略の王道パターンはその土俵で叩き潰すことにある。

しかし今季の川崎の強さ、もう一つポイントがある。

前後半それぞれの戦い方と、それを可能とするチームマネジメント、いや彼らが歩んだ歴史そのものだ。

彼らにとっての前半とはまさにチューニングの時間。であるからして、本来の破壊力が発揮されるのはむしろ後半だ。彼らが脅威的なのは、それを意図的か見事に使い分けていることにある。例えば三笘の使い方はその代表格。お互いクローズドな展開となる前半は相手にアジャストすることに手間と時間を割き、間延びし始めオープンな展開になる後半に攻撃のリソースを注ぎ込む。それが彼らにとっての王道パターンだ。

それらを可能とするのは、当然ながらリーグ随一の選手層。しかしながらただ良い選手を揃えたわけではない。ボールと相手を徹底的に走らせるそのスタイルに合致する選手達が各ポジションに名を連ねる。だからこそ誰がでてもその質は落ちることなく、この過密日程と高温多湿な環境において、相手にとって一試合で二チーム分と戦っているような状況が生まれている。

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断言する。彼らはリーグの歴史に残るチームにきっとなる。その定義はただ美しい、ただ面白いではない。

観ている側が見惚れるどころか嫌になってしまうような、そんな理屈を超えた先にある圧倒的な強さだ。

 

技術の先にあったのは「最小失点vs最多得点」の戦い

では名古屋は彼らに太刀打ちすることが出来るのか。

名古屋が川崎に勝るもの、それはフィジカルとしての圧倒的な〝速さ〟にある。ではそれをどう活かす。

川崎の試合運びを逆手に取るのはどうだろう。狙いは飲水タイムまでの前半20分間「かわさきが眠るゴールデンタイム」だ。ルヴァン杯のとき同様、鬼木達が葛藤するこの時間こそが最大のチャンスである。逆にいえば、前半でリードされる展開だけはどうしても避けたい。それは「かわさき勝利の方程式」だから。技術でぶつかるか守って泥沼に誘い込むか。あるいは前後半で戦い方をミックスさせるか。この手段に注目だ。

そしてその答えは8月23日、豊田の地で全て分かる。

「川崎の技術にはそれを上回る技術で凌駕せよ」

これが風間八宏のやり方だった。しかし時を経て、この戦いはもはや戦略戦の様相を呈している。技術に合理性を混ぜ合わせ、他を寄せ付けない力を得ようと己の理想を突き進む川崎。技術にフィジカルそしてカテナチオを混ぜ合わせ、相手の長所を喰い殺す名古屋。

もはや〝運ぶ〟でなく〝奪う〟ことで共鳴する両者は徹底的に勝利の為に知恵を絞る。しかしながらその両者があいまみえたことで、一方は新たに手にした奪う術を追求し、もう一方はその波に飲み込まれまいと試行錯誤を繰り返す。奪って技術を駆使する者と、技術を駆使する瞬間(トキ)を見極める者。〝不変〟なのか〝変化〟なのか。どれだけ否定を重ねても、両者を支えそして消えることがないのは〝技術〟の血だ。

お互いの距離感を測ったあの日の前半。

そして決着がつくことなく睨み合った緊迫の後半。

それらが次なる90分の戦いに繋がったのは、あの緊張感の中、一人違う世界線で生き続けた大島僚太のおかげであることを、このブログの最後に記したい。

さあ豊田スタジアムで、決着を。

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