みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

風間体制二年目「始動」

f:id:migiright8:20180122000329j:plain

昨年の同じ時期。

その場にいる多くの選手が初めて体感することになった風間監督の指導。どの練習をするにも手取り足取りだった。長期離脱中だった松本孝平は、松葉杖で必死に移動しては一言一句逃すまいと耳を傾けていた。新しく出来た学校、そこに集った生徒達と風変わりな指揮官。あの時のことを想うと、今年は新しい選手達が転校生に見える。それはボール回し一つとってもそうで、とにかく人もボールもよく動く。全員がゼロからスタートした昨年と比べると、一年間風間先生の元で鍛え上げられ生き残った選手達の中に混じる転校生は大変である。同時にそんな光景を見ながら、ああこれが二年目の光景なのだと感慨深い気持ちになるのだ。

 

今年練習を見ていてまず気づいた点は寿人が思いのほか静かなこと。昨年は常に声をだし、どんなときも明るかった寿人。ただそれは必要以上の明るさだったとも思っていて、寄せ集め集団だった当時のチームをカラ元気でもいいから一つにまとめるんだ、そんな彼のキャプテンシーがそうさせていた気がしている。今年の姿の方がナチュラルで、より自身のことに集中しているように見える。「チームをまとめる」から「自身の結果をもってチームを勝たせる」。そちらに振り切れた寿人を見ている気がするのである。

そう考えると、昨年見た景色と今見ている景色は大きく違うのかもしれない。

新しいチーム、新しい監督の下で一から作り上げていく。今思えば昨年の今頃、私達が見ていたものは家の基礎となる土台を必死に築こうとする彼らの姿ではなかったか。初めて経験するJ2の舞台。ただ意外にも彼らの視線はそこではなく己に向けられたものであったように思う。そして今年の彼らが作る空気感。これは紛れもなくJ1という舞台に注がれたものである。基礎が出来、ここからどれだけ強く、頑丈で、美しいものを積み上げていけるか。何の為に。勿論J1の猛者達をなぎ倒していく為である。

安易に結果だけを求めず、もがき苦しみながらも揺るぎない土台を作り上げた昨年の一年間をもってして、彼らは今年のスタートを明らかに違うステージから始めた。

今更ながら、このブログでは彼等がタイに旅立つまでに私が見たこのチームの「二年目」の始まりを、出来るだけその空気感のようなものを大切にしながら書き始めたものです。練習見学のルールにも一部変更があり、具体的な内容は勿論書くことが出来ないものの、そこで見たこと、感じたこと、様々なエピソードをもってグランパスの二年目がどのようにして始まったのか、読んでくださった方に何か少しでも伝わるものがあれば、それを共有出来ればいいなと思っています。

さて、まずなにより気になるのは今年の新加入選手についてではないでしょうか。この二人に触れないわけにはいかない。

ジョー、そしてランゲラック(ミッチ)。

f:id:migiright8:20180123225401j:plain

シャビエル、ワシントン(ワシ)、そしてジョー。「Brazilian Storm」なんて洒落た名称で呼ばれ始めたこの三人。とにかく仲が良い。この表現が適切かは分からないが、昨年に比べジョーを含めた今年の三名の方がより密な関係性に見えるのは、おそらくジョーに早く馴染んでもらおうというシャビエルやワシの心遣いではないか。いつも一緒、そしていつも笑顔で溢れた三人。

肝心のプレーに関しては、もう紛れもなく元セレソンのストライカーです。前を向いた際の相手に与える威圧感。凄まじい。デカイ、そのわりに足元が柔らかい。あの身長をもってして躍動感溢れるステップワークを繰り出すものだから規格外の迫力。勿論「裏に抜ける」術も持ち合わせている。なにより好感が持てるのは、彼なりに風間監督のやり方を理解し体現しようとする様子が窺える点。特に感じるのは相手の最終ラインに仕掛ける、外すの部分。まだまだ身体が重い印象を受けるものの、問題児というレッテルを貼られたことのある選手とは思えないほど真面目に取り組んでいる。そういえば早速熱心なコリンチアーノ(ブラジル人ファミリー)がコリンチャンスの大きなフラッグを抱えてトヨスポに来ていたのは驚いた。「ジョー!ジョー!」と吃驚するほど大きな声を張り上げて。こんな出来事を通して、私達はいかに偉大な選手がこのチームにやってきたのか実感するのである。

そんなジョーを語る上で忘れてはいけないのがワシの存在。練習後の選手のランニングは観客としては声がかけずらいもの。ただ皆ワシには平気で「ワシー!」なんて声をかける。ワシも満更でもないのか、三週目くらいになると「ツカレタ...」と自ら返事をする(客席は爆笑)。ファンサにこればワシから「キョウサムイネ」なんて声をかけてくれる。勿論彼が残留してくれたことは戦力的にも大きいわけだが、なによりジョーがこの国、このチームに馴染むために非常に大きな存在なのではないか。彼らの様子を知ることが出来れば、いかにワシの残留に大きな意味があったか誰もが理解出来るかと思う。

f:id:migiright8:20180122002118j:plain

そしてミッチ。とにかくナイスガイ。イケメンなのは顔だけではありません。ファンサに来た際、「コンニチハ」なんて彼から声をかけてくれる。一人一人の顔をしっかり確認しながら笑顔で対応する彼の姿を見れば皆彼の虜でしょう。美人過ぎる奥様を見て一瞬嫌いになりそうだった当時の自分をぶん殴ってやりたい。

プレーに関しては実戦を早く確認したいところ。とりあえず風間さんの狭いコート設定(ミニゲーム)に力を持て余すミッチ。スローイングしたボールが何度もタッチを割り、その度に彼の悔しがる声と手を叩く音が聞こえる。名古屋のアイドルになる素質十分といったところか。楢さんが楽しそうに彼とコミュニケーションをとる一方、武田と渋谷が練習中も仲良くイチャこいていることも御報告しておきたい。

他の新加入選手にも触れておきます。まず今オフ最大の話題を掻っ攫った男、長谷川アーリアジャスール

最も充実感を感じる一人。ランニングの際、先頭を走る寿人と小林裕紀のグループに新たに加わったのが彼である。トライしては悔しそうに振る舞う彼の姿を見ていると、もう純粋に「あぁ楽しそうだ」と。ボール回しも全く遜色なくやっているどころか、積極的にボールに関与しようとする。常にボールに絡もうとするその姿勢、ボールを持てばまずゴールに向かっていける彼の能力は、昨年のグランパスにはなかったスパイス。今シーズン非常に楽しみな一人。杉本竜士は練習中彼のことを「ジャス!ジャス!」と呼んでいます。

そして堅守甲府からやってきた畑尾大翔。脳の入れ替えに必死です。このチームのスタイルに馴染もうと、プレー中頭の中はフル稼働。その都度最適な引出しを必死で探すように。ただ当然昨年から在籍する選手に比べればそれを探しだす速度も、いやそもそも引出しがまだ整理されているわけでもない。ボールを保持しながら悩み、身体と頭が噛み合わずそのボールが予期せぬタイミングで足に当たってこぼれてしまう。サッカー経験者なら誰もが「分かるその感じ...」と頷いてしまうような現象を見る限り、今の彼は風間監督の言葉を借りればまさに「頭の整理」をしているところだと思う。ただ新体制発表会で本人が自信アリと語っていたフィード。非常に綺麗な軌道で正確なボールを蹴る。また日に日にこのサッカーに慣れていく様子も窺える。これからどう変化していくか楽しみな選手である。

さて、今年もトヨスポでは風間鬼教官による若手指導が見られそうだ。

f:id:migiright8:20180123225005j:plain

青木、深堀、そして最も目をつけられていそうなのが大垣勇樹。杉森が去った今、風間監督の愛の鞭をもろに受けそうな気配。大垣は寡黙な男だ。あまり笑っている姿も見たことがない。ただFWとしての彼の潜在能力を風間監督が高く評価していることは、練習における彼の使われ方、彼に対する指導を見ていれば分かるというもの。風間監督が提唱する技術を体得すれば、自ずと素晴らしいFWに育っていきそうな雰囲気は十分にある。

「大垣!!今崩せなかったのはお前が相手に全く仕掛けられていないからだ!!」

今の私に書ける精一杯の風間語録である。

活気溢れるグラウンドから少しだけ目線をずらすと、いつもウズウズした様子でリハビリに励む選手が二人。長期離脱中の新井一耀、そして松本孝平。ルーキーイヤーから二年連続でリハビリ組としてスタートした松本のことを想うと胸が苦しくなる。一年間リハビリに励み、新シーズンを迎え尚その状況を打破出来ない彼の苦しみが私達に分かるはずもない。誰よりもこのピッチで皆と練習したいと願い続けて戦っているのは松本をおいて他にいないだろう。

ただ今年は隣にもう一人、新井という存在がいる。先が見えないリハビリ生活の中で、常に隣で同じようなメニューをこなす仲間がいることが、お互いにとってどれだけ心強いことか。ミニゲーム中に動きを止め、食い入る様にその光景を眺める彼らを見て、一日も早く元気な姿でこのミニゲームの輪に戻ってきて欲しい...深い絆で結ばれているように見える彼ら二人の姿を眺めながら、サポーターとしてそう願わずにはいられない(お...ボール蹴ってる!!)。

 

さて、最後にやはりこの点は個人的に触れておきたい。田口泰士について。

f:id:migiright8:20180123225657j:plain

練習場に行っても当然ながらもう彼の姿はない。練習が終われば一目散にファンサに来る彼の姿も(風間監督の彼に対する自主練評価はどうだったのか...)、三男(杉本)を長男(玉田)と挟んで楽しそうにしている次男の姿ももうそこにはない。当たり前のようにあったその姿がない、この現実は分かっていてもやはり想像以上に寂しいものだ。

私達はこれまでのチームの心臓を失った。目を背けてもそれは紛れもない事実だ。

今年のチーム編成に目を向けると、強化部は例えばもう一人獲得可能だった外国籍の枠をあえて空けたままストーブリーグを終えようとしている。チーム全体で見ても26名という最低限の人員でJ1復帰のシーズンを迎えることになる。

ただ私はあえて残したこの「余白」を今年の楽しみにしようと思う。誰がこの空いたポジションを掴み取るのか、風間監督がどういった采配を取るのか、適任者が見つからない場合強化部がどう動くのか。この余白をシーズンを通して見ていくことは今年の楽しみの一つであり、グランパスが新たな歴史を刻んでいく上でも重要なものになるのではないか。

泰士は別の道を歩むことを選んだ。だからこそ私達もまた別の道を歩まなければいけない。

泰士が抜けて空いた場所は穴ではなく、新たな可能性そのものなのだ。

ターニングポイントになりそうなのは新井が復帰するタイミング。今日からそこまでの3~4ヶ月でこのチームがどう進化し、J1の舞台でどういった戦いが出来るのか。

f:id:migiright8:20180123002643j:plain

最近見たテレビの番組で株式会社コルクの代表である佐渡島庸平がこんなことを言っていた。

「ビジネスとは動いた心の量をお金に替えることだ」

サッカーでいえばそれはスタジアムになるのかもしれない。ただそのスタジアムで起きることは、日々の練習場での弛まぬ努力、積み重ねがあってこそ生まれるものだ。練習場で見る人間模様、選手の苦悩や葛藤、努力。今年もこの場所でチームは進化していき、スタジアムで極上のエンターテイメントを見せてくれるに違いない。

今年はどれだけ私達の心を動かしてくれるだろう。 

今のグランパスには沢山の人の心を動かす力がある。

待ちに待ち焦がれたJ1復帰の舞台はもうそこまできている。 

 

 

※このブログで使用した画像は全て名古屋グランパス公式サイトより転用したものです