みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

新体制発表会を終え、独断と偏見でチーム編成斬り

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「もうお腹いっぱいです」

これで空いてますと言う方が失礼です。まさに補強のフルコース。

劇的な残留を果たし、希望に満ち溢れた未来を予想をしていた私達を襲った「玉田圭司 契約満了」事件。そうあれはもう事件だった。そして、どこか心の準備はしていたものの、遂にきてしまった「佐藤寿人の移籍」、とどめは「楢崎正剛の引退」。

私たちの今オフは、考えうる中で散々なスタートだった。SNSも、荒れに荒れた。特に玉田圭司の契約満了が、大きな波紋を呼んだのは記憶に新しい。38歳にして、出場24試合3ゴール。堂々たる数字を残した名古屋のアイドルが、まさかこのタイミングで契約満了となるとは。現在の強化部の目利き、手腕を疑う者は少なかったはず。ただし、前年に田口泰士が移籍した際の後味の悪さを思い出す今回の事態に、多くのサポーターが悲しんだのもまた事実だ。

結局、玉田圭司Vファーレン長崎へ移籍。佐藤寿人ジェフユナイテッド千葉へ、そして我らが楢崎正剛は、24年間にも及ぶ選手生活に幕を閉じることとなった。

結果だけみれば、強化部としては、このタイミングが大きな分岐点であると考えたのだろう。J1への昇格、そしてJ1への定着を果たし、大きく舵を切るならこのタイミングなのだと。チームの再建を支えたベテランたちが去り、今年から遂にJ1の頂を目指す戦いが始まるということだ。

小西社長が掲げた目標は「ACL出場圏内」。今オフのテーマは「日本人選手の獲得」。そしてやってきた新体制発表会。今年のスローガンはこれ。

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「貫く」。

どれだけ貫くんだと突っ込みたいところだが、今年もどうぞ貫いてください(褒めています)。ではポジション別に、今年の編成をあーだこーだと語っていきたい。登録ポジションは気にすることなく、私の独断と偏見で進めていく。

ゴールキーパー

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インはなし。アウトが前述した楢崎正剛。よって登録は3名。昨年、楢崎正剛カップ戦含め、ベンチ入りする機会がなかったことを考えても、4人目の登録が必要かどうかは意見が分かれるところ。当然、レギュラーは昨年34試合に出場した"ミッチ"ランゲラック。ベンチの枠を、無駄に仲良しな武田洋平と渋谷飛翔が争う。

個人的に、今回の新体制発表会で最もグッときたシーンはこちら。

楢さんが背負い続けた「背番号1」。これを欠番扱いとしないことに意見があるのも重々承知。ただ、実力的にも、またこの背番号の重みを理解し、覚悟を持って受け取った様子を見るに、ミッチなら個人的には納得するし、ミッチだから納得できた。昨年名古屋の伝統だった「7番」がジョーに引き継がれ、今年、遂に「背番号1」がミッチに託された。

〇右サイドバック

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「誰を獲るよりまず宮原」。今オフ最大の難関だったミッションに成功。広島育ち、広島ユースアカデミー卒、おそらく出戻りが既定路線だった男を、遂に完全移籍で獲得した強化部優秀。昨年26試合出場。ただし怪我を負った第29節FC東京戦まで、契約上出場出来なかった広島戦を除けば、全26試合フル出場。彼が怪我を負って以降、代役がおらずシステム変更までする羽目になった過去を思えば、もはや名古屋に最も欠かせない男である。そして宮原の挨拶もまた、良かったんだ。

「やっと名古屋グランパスの一員になれた気がします(ただしいつもの口調です)」

素っ気なくてもいい、感無量です。

migiright8.hatenablog.com

そしてこのポジションを虎視眈々と狙うのが、名古屋のバンディエラ候補である菅原由勢。昨年、17歳10ヶ月でプロA契約を締結した期待のU-19日本代表。今年はアジア杯に臨む日本代表のトレーニングパートナーにも選ばれ、練習では酒井宏樹槙野智章佐々木翔と最終ラインを組むなど、今年への期待値は上がる一方。昨年は開幕戦からセンターバックとして大抜擢されるなど、ポジションも多彩。現在の名古屋において、どのポジションが適性となるか、今年も探っていくことになるだろう。現状のチーム編成を見る限り、最も可能性が高いのは、この右サイド。

〇左サイドバック

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強化部が追い続け、何度もアプローチし、その度にフラれ続けたサガン鳥栖吉田豊を遂に獲得。スピード良し、対人良し、なにより両サイド器用にこなせる本職サイドバックの獲得。強化部にとっては念願だっただろう。先程はあえて記載しなかったが、これで宮原不在時は、菅原だけでなく、吉田を右に回す選択肢も得たことになる。昨夏に金井が加入するまで本職は不在、和泉や櫛引が担当していたことを考えても、やっと本職の二人で競わせることが可能となった。

大森先生曰く「Jの左サイドバックの中で、最も日本代表に近い選手」。特徴はケツ。猪突猛進は真っ直ぐにしか行けないが、僕は右も左も行けますとのこと。分かった。

ライバルは、金井貢史。昨年は終盤、チームのシステムが3-4-3に変更し、彼も出場の機会を失ってしまったが、最も得意とする4バックなら、先発のチャンスも大いにあるだろう。昨年15試合出場4ゴール。超攻撃型というより「超神出鬼没型」サイドバック。脚は決して速いわけではなく、名古屋が敷く高いライン設定、求められる個の守備範囲で、むしろ守備の面で悪戦苦闘しているのが課題。往々にして相手に狙われていたのも、彼が担うこの左サイド。オフはハワイに行き、子供相手にトレーニングを積んできたと、期待は膨らむばかり。

センターバック

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絶対的なレギュラーは、丸山祐市ただ一人。昨夏加入した左利きのセンターバックは、まさに獅子奮迅の活躍で名古屋をJ1残留に導いた立役者。いまとなっては、彼のいない最終ラインはもはや考えられないほどの存在感。彼とコンビを組む最有力候補が、しんちゃんと浮気し隊はもう禁止の中谷進之介、そして新加入の千葉和彦

メンタル鬼強い。「赤はカープで見慣れている」とまずぶっこみ、会場のリアクションを待つことなく、「広島ならどっかんどっかんウケるんですけど」と矢継ぎ早に攻め立てる超攻撃型。そんな千葉の武器は圧倒的なビルドアップ能力。パス成功率90%を誇り、組み立て、パスの種類、質ともに申し分ない。チームが3バックを選択するなら、前述の三人で組む可能性は高く、4バックならチームが望む優先順位で組み替えられるだろう。ここに「不死鳥の男」今年も安定の顔デカイ櫛引一紀、そしてルーキーの藤井陽也を加え、2or3ポジションを、5人で争う構図。

とにかく最終ラインはガヤ感がハンパない。止められない動画の手ブレ(笑い過ぎ)。千葉を筆頭に、丸山、中谷、櫛引、金井、そして吉田豊風間八宏をもってして、今年の新加入組は「キャラが濃い」。

爽やかでアイドル感満載のアカデミー、大卒組と、

年数を経るとこうなるのか、溢れでるガヤ感が抑えきれない移籍組(主に千葉と吉田)。

今年の守備陣は、ひな壇なら全員適性2列目。宮原さんだけが救いです。試合後、守備陣が見せる「俺たち風間サッカーで守り切ったぜ!」の団結の輪、今から思いやられるのはサポーターも同じ。

ボランチ

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最も補強を必要としていたポジションである。昨夏に加入したネット、そしてゲームキャプテンである小林裕紀が不動のコンビだが、「チームの心臓部」と風間監督が言うだけあり、このポジションを務めるのは、おそらくこのチームで最も難易度が高い。結果的に彼らの代わりが乏しく、またネットが股関節の怪我を抱えていることもあり、実力者の補強がマストだった。

強化部が口説き落としたのが、デビューから10年間、FC東京一筋だった米本拓司。2010年、そして2011年に左膝前十字靭帯損傷。2016年に右膝前十字靭帯断裂から復活した不屈の男。ボールを狩ることにかけてはJ屈指。名古屋の誰とも被らないそのスタイル。大森先生は昨夏から彼を追いかけていたらしい。丸山との両獲り狙いとは、成功していたら東京方面は暴動ものだっただろう。風間監督のもとでやりたいと、強い気持ちを持って加入。この選手を風間監督がどう融合させるのか見物である。

そして力強く一言、「タイトルを取りに来ました(心に沁みました)」。

FC東京で、彼含め二人しか背負ってこなかった伝統の「7」に別れを告げ、名古屋に加入した(圧倒的既視感)。ちなみにユニフォームは、「東京でも青赤だったから問題なし」。

もう一人、ジュビロ磐田から加入した伊藤洋輝。ユース育ちのU-19日本代表キャプテンであり、U-21日本代表にも飛び級で選出された逸材。菅原と共に、アジア杯のトレーニングパートナーも務めた。188㎝の恵まれた体格、そして左利き。ネットが怪我の治療のため、早々にチーム合流が遅れるとアナウンスされたこともあり、伊藤にとっては、まさに千載一遇のチャンス。プレシーズンの段階で強いインパクトを残せれば、場合によっては開幕スタメンも考えられる(だって風間さんだから)。小林、米本と競うよりは、ネットの役割を全力で奪い取りに行くのが吉。生で見るととにかくデカイ。彼に関しては、「ずっとチェックしていた。磐田で出番がなく、うちで育てます」とのこと。大森先生には、今から札束を振りかざす準備を進めてほしい。ちなみに正式にオファーしたのは、昨年末のブラジル遠征前だそうです。

ボランチには他にもアーリア、場合によっては和泉の起用も考えられる。2or3の枠に、5or6名が競い合う格好。あと、忘れるなかれ渡邉柊斗。しっかり歩いていて一安心。

サイドアタッカー

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はっきり言う。人材過多である。まず新加入のマテウス。大森先生曰く「日本に来てからのプレーはずっとチェックしている」。評判を聞く限りまだまだ粗はありそうだが、ボールを持った時のスキルは一級品。彼もシャビエルや前田同様、右サイドが好みだそうだが、左サイドでも縦に1on1で仕掛けられるのがポイント。またクロス精度も抜群。ある意味で、シャビエル以上に化ける可能性がある素材だ。ちなみに日本語のレベルは「ニジュッパーセント」。

そして前田直輝。昨季キャリアハイ7得点を叩き出し、オフは金井家にお邪魔して英気を養い準備万端。他にも、左サイドならサイドバックウイングバックもヒャクパーセント対応可能な秋山陽介、右サイドにはアカデミー育ちの成瀬竣平。そして先日左膝半血板損傷として、全治約6ヶ月の診断が下された青木亮太も夏には帰ってくる。

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また昨季、特別指定ながら出場9戦負けなしのジンクスで、残留争いに貢献した早稲田大学の韋駄天、相馬勇紀が晴れて正式加入。今年の目標は「10ゴール10アシスト」。スピーチも優等生で言うことなし。彼を見ていると、なんだか自分の人生を恥じてしまうのは何故なんだ。

フォワード

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向かって一番右で微笑む赤﨑秀平が加入。風間監督の筑波大時代の教え子。プロになってからも、必ず川崎との対戦時は風間監督に挨拶をしていた風間チルドレン。どうやら名古屋は毎年オファーしていたらしく、数年越しに実った恋。絶対的エースのジョー不在時にはストライカー不足が顕著で、「補強ポイント」と大森先生が明言し、結果連れてきたのがこの赤﨑。ただしツートップの場合、現状はジョーとシャビエルが十中八九スタメンと予想する。他に今年二年目になる未完の大器、大垣勇樹。「頭の整理が必要」と大森先生に評された後、「ドリブルに注目してください」と、間髪入れず頭が整理されていないことを露呈した東海学園大卒、ドリブルモンスター榎本大輝が続く。

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そして一年振りに帰還した杉森考起。相変わらず朴訥とした答え方で、司会のヨーヨーヨースケに「変わってないね」と鋭く指摘された永遠の21歳。町田では「チームのために走ることを覚えた」。フォワードで起用されるのか、はたまた一年振り何度目かのウイングバック起用となるかは不明だが、間違いなく今年も風間監督に愛の鞭を打たれ続けるでしょう。頑張れ、考起。

そして今年のラインナップに名前のなかった深堀隼平。「本人の強い意志で」、現在他クラブとレンタル交渉中とのこと。クラブとしては彼の意志を尊重し、背中を押してあげたいとのことで、大森先生の眼差しはなんとも親のそれでした。

 〇特別枠

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サイドバック、左ストッパー、左ウイングバック、はたまたボランチインサイドハーフ、ときにサイドアタッカー。今年も和泉竜司のポジションが全く読めません。左サイドバックには吉田豊が加入。中央は千葉が加入し、3バックの左ストッパーには丸山をスライドすることも出来るため、そろそろ最終ラインは卒業してほしいところ。ではオフェンシブなポジションはどうかと言えばそこは激戦。勿論ボランチも質・枚数ともに実力者が揃ったことから、風間監督が今年、彼に何を求めるのか非常に興味深い。

以上、計31名の大所帯。そして今年のチームキャプテンはこの男。

加入して半年。ただだれも異論はないだろう。新体制発表会当日、風間監督から打診し、了承。小林裕紀よ、マルを支えてあげてください。

~総括~

風間八宏が指揮するチームは、補強する選手に往々にしてこんな言葉がつきまとう。

「風間さんっぽい」「多分風間さんの好み」「彼では風間さんにハマらない」

果たしてそうだろうか。補強した選手を見ると、中堅どころも、新卒も、皆共通して言えるのは「教えられない武器を持っている」ということだ。吉田にしても、米本にしても、圧倒的なボールを狩る能力がある。また、攻撃陣に目を向ければ、榎本にしろ、相馬にしろ、マテウスにしろ、誰にも止められないドリブル、スピードがある。彼らは世間がイメージする「風間らしさ」には当てはまらない。

おそらく、獲得の際に最も重視しているのは、この「教えられない武器が備わっているかどうか」である。逆に言えば、それ以外の部分、例えば「止める蹴る」「外す」は、それなりのスキルさえあれば、あとは教え込むことが出来ると踏んでいる可能性が高い。勿論、その止める蹴る外すの技術レベルが高い選手も好まれて当然だろう。

特徴的だったのは、「個」に秀でたタイプの選手でいえば、後方の選手は総じて「個人の守備範囲が広く、そして速い」こと。前方の選手は「1on1で抜ききる技術、スピードを備えている」ことである。また純粋にチームのプレーモデルに合致する選手、具体的に言えば止める蹴るの技術レベルが高く、ビルドアップ能力に秀でた千葉和彦や渡邉柊斗のような選手も獲得の対象だ。ストライカーでいえば、赤﨑もプレーモデルに合致したタイプと言えるだろう。

懸念があるとすれば、結果的に「司令塔タイプ」の補強がなかったこと。田口泰士がチームを去って以降、彼のようなコンダクターは現状見当たらない。伊藤洋輝という隠し玉こそあれ、実際は蓋を開けてみないと全く見当はつかない。この点が、前半戦を戦った後課題に挙がるようであれば、夏の時点で何かしら検討が必要となるだろう。

年末は、ほとんど大森強化部長と話をしていたという風間監督。今年はさらにもう一段、「質」を望むと意気込む。「全部を変える、全てリセットする」とまで言い切り、明確に「ACLを目指す」と珍しく口にした指揮官。

降格し、とにかく野心のある選手をかき集めた一年目。プレーオフ出場の影響で、J1にも関わらず満足な補強が出来なかった二年目。そして三年目、やっとJ1のチームらしい、見事な「補強」が完了した。

遂に上を目指す時が来た。飛躍の三年目が、本日よりスタートする。

そうだ、今年のサプライズ。確かに今年も、サプライズ感満載でした。

小西社長が、いなかった。