みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

名古屋ボランチ会議

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主力組を惜しげもなく投入し、挙句ジョーが故障するハプニングに見舞われながらも、なんとかルヴァン杯グループリーグ突破に成功したグランパス。それもこれも、最終戦に至るまでの5試合を辛抱強く戦い、プレーオフステージ進出の切符に片手をかけたところでバトンタッチしたサブ組のおかげなわけでして、彼らからすれば嬉しいような、なんだか悔しいような、そんな一日だったのではないでしょうか。

グループリーグ突破に可能性を残していた我々は、最後の最後で主力組を大量投入しました。完全休養はジョアンとマテウスのみ。特にジョアンの代役でいえば、これまでルヴァン杯5試合に先発した伊藤洋輝。なんと最後の最後でU-20ワールドカップ参加のためポーランド行き。この大一番で不在とは、本人も無念だったことでしょう。

そんな中、試合前に発表されたスタメンに我々は驚いたわけです。おいおい小林裕紀の名がねーぞと。ヨネとのコンビを託されたのは、リーグ戦ではセカンドトップを務めるアーリアジャスール。プロの世界とはいえ、なんて無慈悲にバッサリいくのか、我々は八宏の恐ろしさを知りました。

おそらくファミリーの皆さんも、昨日は思い思いの夜を過ごしたことでしょう。なんでこの選手を使わないんだ、なんでこの選手が先発なんだ、くそ!風間!くそ!風間!いや分かる、分かるよ。風間監督キツイっすよね。そりゃ全くブレないし、今のベストがあのメンバーだった、それも理解出来る。でもちょっとくらいグレーな采配もあったっていいじゃない。つまり選手のモチベーションを意識した采配がね。まあでもそこがブレることは多分死ぬまでないでしょうし、我々が個人的な感情でぶつくさ言ってても仕方ない。ここは客観的に、中身は超がつく主観だけど出来る限りの客観性をもって、いまや国内屈指の層を誇る名古屋のボランチ陣を一度冷静にぶった斬ってはどうだろうか。わたくしそう考えました。少しでも推しの選手の現在の立ち位置や、今のグランパスの理解につながることを願って。

司令塔タイプ

◼️ジョアン・シミッチ

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絶対不可欠な司令塔。対峙する相手(個)だけでなく、相手の守備ブロックそのものと対峙しながらチームの攻め筋を決定できる稀有な選手。名古屋には珍しくサイドチェンジも多用する選手で、それを可能とするのが彼のポジショニング。味方のボールホルダーに対し、相手のプレッシャーを正面から受けない角度で顔をだし、常にオープンな状態でボールを受ける。そこからはエグい楔に相手を揺さぶるサイドチェンジと、パスセンスを遺憾なく発揮。まさに「ボランチの生きる教科書」。観ていて惚れ惚れするとはこの選手のことでして、「ピッチ上のマエストロ」と名付けたのは後世まで語り継ぎたい。ちなみに運動量自体は多いものの、崩しの局面で受け手の役割を担う場面は少ない。守備に目を向けると対人能力は強烈。狩りに行くというより、相手の攻撃の流れを読み、最も危険な中央ゾーンを締めながら、自身のスポットに入ってきた相手からボールを絡め取る。大森先生曰く、ポルトガルでの評価は「遅い」。ただ名古屋のサッカーにおいて、彼の圧倒的な技術と情報処理能力は「断トツで速い」。ちなみにシャビエルからの事前情報で、「意味不明なタイミングでアイツはキレるぞ(意訳)」なんて嘘くさい話に笑ったものだが、今となってはジョアンも嫁もキレていないか、スタジアムでも自宅でも怯える日々です。

◼️エドゥアルド・ネット

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帰ってきた暴れん坊。「長い休暇だったからね、あいつは」と八宏に愛されてるのか嫌味を言われてるのか分からないほどのマジで長い休暇からこの度帰還。守備しろやネット、それアカンネット、あぁキレたネット、稀に見るネット、ネットネットネット...。待ってたよファミリー。譜面どおり完璧に、しかも美しく旋律を奏でるのがジョアンだとすれば、ジャズピアニストの如く多彩な音と驚きのアレンジで観衆を魅了するのがネット。即興大好き風間の叔父貴と相性が良いはずだ。ただ目下一番の関心ごとは「どこやるのネット」。ジョアンと併用なら中盤がダイナモ不在。ではスリーセンターでジョアン、ヨネとの組合せ最高やんと思うものの、正直言ってそこまでする必要性が今は乏しい。セカンドトップ?いやいや、前にいるのをいいことにアイツ走らんぞ。とまあ使い勝手がどうなんだとツッコミつつ、ジョアン不在時にはこれ以上頼りになる存在もいないだろう。ジョアンに取って代わるかと言われれば、いまやチームはジョアンの目に揃って動く生き物、正直それは考えづらい。X JAPANSUGIZOと PATAでニコイチなんだから、名古屋もジョアンとネットでツインギターや!と出来心で提案したものの、「いや、ネットはPATAじゃない、HIDEです」とよく分からないけどぐうの音もでないご指摘をいただき、結果ヨネがPATAになりました。

◼️伊藤洋輝

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ジュビロ磐田のアカデミー育ちが赤のユニフォームを纏う、そんな禁断の移籍(というほどでもないが)で名古屋にやってきた大器。気づけば「菅原と伊藤は我々が育てた」と、名古屋では歴史を書き換えるイベントが始まっています。彼も攻守にアグレッシブなタイプかと言われれば決してそんなこともなく、どっしり構えて長短正確なパスを駆使しつつ、ときにとんでもないキャノンシュートを放つロマン派。つまり「ジョアンを見習って!」ということですが、まだまだ試合を通してボールへの関与が足りない。受ければ才能の塊だが、受ける術が乏しいため宝の持ち腐れ感がある。ただしこれは期待の表れ。それさえ出来ればポテンシャルは無限大。もちろん磐田サポーターも彼に望むものはあるだろう。ただ今後彼がボランチとして大成したいなら、風間八宏のもとに来たのは正解。ルヴァンでの彼の出来を見ていれば一目瞭然である。ネットに殴られても殴り返す勢いで頑張ってください。気づいたら国内最高峰のポジション争いです。

ダイナモタイプ

◼️米本拓司

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「なぜお前が名古屋なんだ!?」と軽く技術をdisられつつ、名古屋に来たらきたで都内に家を買ったことも弄られまくる闘犬。クソがつく真面目な性格とは裏腹に、一度狩ると決めたら死んでも離さないそのスタイルで、もはや名古屋に欠かせない存在。誰がどう見ても優しいルックス、しかしひとたびピッチでボールを見つけるとどうにも脚が止まらない仕様で、相手を削って喧嘩を売られようもんなら「上等だこの野郎」と売られた喧嘩は喜んで買う二重人格。さて肝心の技術に関しても、F東の番記者から岩本輝雄まで「ヨネめちゃくちゃ上手くなってるじゃん!」と驚嘆を呼ぶ風魔改造っぷりで、チームのテンポを落とすことなく、その圧倒的な運動量で局面ごとでのパスコースを作る役目を十分に担っている。攻守ともにどちらかといえば「静」のジョアンに対し、どちらとも「動」のヨネの組合せがあまりにも秀逸で、その仕掛け人である大森先生は、「ジョアンにはヨネが必要だし、ヨネにはジョアンが必要」と、もはや合コンのマッチング神状態。展開力は乏しいため、司令塔の横に添えてナンボの選手。あと悔しいかな嫁が可愛い。もう一度、嫁が可愛い。

◼️小林裕紀

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名古屋が誇る「不屈の男」。「風間監督...ピッチに...立ちたいです」と泣いて頼んで欲しいくらいには、今年出番がなく苦しんでいる。正直、神戸戦のアーリアボランチ起用の一報は心が凍える想いだった。器用すぎるが故に便利使いされる印象があるものの、実際は狭いスペースも苦にしない技術と、誰よりも気の利く顔出しを駆使したスモールスペースの申し子。つまり彼のポテンシャルが最大限に発揮されるのはツーセンターではなく、実はスリーセンターのインサイドハーフだと愛知の片隅で叫びたいが、現状チームにはそのポジションの用意がない。ただしこれまでも田口泰士、また昨年でいえばネットの隣で輝いてきた実績があり、副官としての能力に疑いの余地はない。では何故ヨネの方が優先順位が上なんだと問われれば、今年の名古屋がより「対人能力(1vs1で奪いきる)」を求めているからに他ならない。お世辞にも球際が強いとは言いきれない小林に対し、かたや国内屈指のボールハンターともなれば、分が悪いのが正直なところ。さすがにルヴァンは小林だろうとたかを括れば、目の速さなら常時レギュラー組で出場するアーリアがいるじゃないかとコンバート。さすがにプロの世界とはいえ、昨年まで不動のゲームキャプテンだった彼のケアをちゃんとしてくれと思うわけです。「あきらめの悪い男」、いやいや「あきらめの悪いファミリー」として小林裕紀の逆襲を期待せずにはいられない。

◼️長谷川アーリアジャスール

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今年のオフは特にボランチの補強が充実、正直誰もが真っ先に「これはヤバイぜ...」と聞こえるような心の声を呟いた先がアーリア。ぶっちゃけボランチはもうノーチャンだろと思ってたのは事実で、案の定開幕前からフォワードの練習やらテニスの練習やらで慣らした男が、まさかまさかのグルテンフリーいや「セカンドトップ」で復活。彼が持つキープ力、縦にボールを運ぶ推進力に加え、おそらくチーム一の豊富なアイデア、予測不能なフリック力を駆使。もはやこの椅子取りゲームには椅子がねーと嘆くファミリーに、「安心してください。椅子ならもう一つあります」と自分しか座れない特注の椅子を持参する前代未聞の大博打に打ち勝った。これは大事なポイントなのだけど、「目が速い」且つ「目が揃っている」のがレギュラー組の最低条件で、そこにプラスアルファ何をもたらすことが出来るか。つまりそのポジションで更にどんな個性を加えることが出来ますか?という問いに答えられる選手が風間八宏フットボールには必要。その意味で今シーズン、誰よりも個性の表現に成功したのがアーリアだろう。ブラジリアンだらけで前線からの運動量が危惧されていた名古屋にあって、いまや彼のチェイシングやらプレスバックもなくてはならない働きとなっており、おそらくいまこの世の中にあるフットボールクラブで、彼をこれほど活かせるチームも役割もここ以外ないだろうと思う。挙げ句の果てには目も速くなったしボランチもやったらどうだとまさかまさかの中盤返り咲き、もはやアーリア株爆上げである。ただし彼もヨネや小林同様、決して司令塔タイプではなく、大人しくセカンドトップの椅子に座ってるべきという見解。

◼️渡邉柊斗

かれこれ二年近く怪我で戦線離脱する逸材。昨年は強化指定扱いだったものの、当時大苦戦していた名古屋にあって、東海学園大の安原成泰をして「アイツがいれば、やられていてもボールは持てる時間を増やせたりとかできたかもしれない」と言わしめたほど。そんな未来の大器をまだボール回し程度しか見たことがないのが残念だが、止める蹴るのレベルは超一級。どうやらそこに運動量が持ち味とのことで、彼もまたジョアンやネットと組ませると面白いタイプなのだろう。東海学園大の連中は兎にも角にも「肉つけろっ!!」と思っているが、もしかすると、最も予想だにしない化学反応を起こす可能性があるのがこの渡邉柊斗かもしれない。あそうそう、瞳が輝きすぎでおじさんは貴方が眩しいです。

司令塔×ダイナモコンビの相乗効果

長々と語ってまいりましたが、あえて「司令塔タイプ」「ダイナモタイプ」と分けたのは理由があって、というのもこの組合せが最も相乗効果が期待できると考えるからです。

現在主力としてコンビを組むジョアンとヨネ。ジョアンの特徴は司令塔としての展開力。逆に崩しの局面に都度関わるようなダイナミズムは持ち合わせていない。対してヨネ。彼はジョアンのような展開力こそないものの、無尽蔵なスタミナと縦への推進力がある。彼らは守備でも異なる特徴があります。ジョアンは相手の攻撃の流れを読み、中央の危険なエリアを察知する洞察力がある。対してヨネは、ジョアンにはない機動力を武器として相手のボールホルダーを狩りにいける、広いスペースを守ることが出来るのが特徴です。

つまり何が言いたいか。前述した通り、現在の名古屋は「目が速く」しかも「目が揃っている」これがレギュラーにくい込むための最低条件であると同時に、プラスアルファここにどんな個性を、どう組み合わせるかが重要な要素。互いの長所が互いの短所を補うことで、結果その組合せが生む力を倍増させる、そんなコンビにしなければならない。その意味では、昨日のヨネとアーリアのコンビは目も揃っていたし、狭いスペースも苦ではないものの、ピッチを広く使いながら相手ブロックを動かす、つまり攻撃を主体的に組み立てる力まではなかった。プレーのテンポは申し分ないものの、相手ブロック丸ごと引き受けてチームを動かすほどの力はまだない。あくまで目の揃った11人のうちの1人、そんな印象でした。でもね、他のポジションはそれでいいのだけれど、名古屋のツーセンターはそれだけでは物足りない。だって「心臓」ですから。正直、ここの出来一つでチームの出来まで左右される。それが風間八宏フットボール。ヨネとアーリアは、個性の組み合わせとしては可もなく不可もなく。少なくとも彼らが合わさった結果、1+1が3にも4にもなる組合せではなかったと思います。分かってて使ったんでしょうが。

いやはや、本当にフットボールは面白い。