みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

マッシモとはいったい何者なのか

マッシモは今でも振り返る。あの日のブーイングを。


名古屋グランパスvs鹿島アントラーズ@豊田 ホーム最終戦セレモニーでブーイング 2019年12月7日

まず、私はずっとこの名古屋グランパスを支えている多くのファンがいるのは分かっていますし、サポーターの力なくしてサッカーのチームは成り立ちませんから、彼らをリスペクトして、このチームのためにと入りました。しかし実際「とにかく残留を」というミッションを達成してサポーターから私に向けられたのは、ブーイングでした

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

 なんとまあ器の小さい男。ネチネチといつまでも語るその様は正直他人事に思えないが、側からみれば滑稽にも映る。まさに他人の振り見て我が振り直せだ。

ただ彼にとってあの出来事は一大事であり譲れない。

勝ち点いくつを獲得して残留してくれという話ではありませんし「残留させてくれ」というところで私が就任して残留させたという点で、もし今日のブーイングが私に対してのものならば、それはちょっと違うのではないかと思います

2019年12月7日 鹿島戦(最終戦)後会見

思い返せば昨シーズン苦労の末に残留を勝ち取った際も、彼はあのブーイングの意味、そして自身の立場とミッションに再三言及した。さすが本場カルチョの世界で揉まれた男だ。自身の主義主張をはっきり通し、難破しかけたこの船を救ったのはこの俺だと聞かれてなくても畳み掛ける。そして今思えばこの時からはっきりしていた〝結果至上主義〟。プロセスはどうだって?都合の良い物語ならどれだけでも活用するが、筋の悪い物語ならとことんまで焼き尽くすさ。

その意味でいえば、彼にとって前任者が二年半かけて残したモノは決してありがたい遺産ではなく、自身の足を引っ張るだけの負の遺産であったに違いない。

であるからして、彼にとっての昨シーズンは前任者の尻拭い、つまり〝残留〟ただそれだけだった。

絶対にこのチームを残留させて、また新しいプロジェクトへと、私は残留のためだけに来たわけではありませんから。まずはチームを残留をさせて、また別のプロジェクトに向かっていくためにこの仕事を受け、やってきました

2019年12月5日 鹿島戦試合前会見

絶対に認めることはないであろう前任者の遺産を引き受けてでもこの仕事にしがみついた。それは残留のご褒美が資金力豊かな名古屋を率いる権利であり、つまり今季こそが彼にとっての〝一年目〟なのだ。

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「ブーイングではなく、むしろ感謝すべきだろ」

何故そのミッションを達成して尚批判を受けるのか。

おそらくきっと絶対そう思っていたマッシモにとって今季にかける想いは並々ならぬものがあるはずだ。

極端に言えば来年、来季が始まってからまったく新しい、私がやりたかったサッカーを目にしていただけるようになると思います

2019年12月5日 鹿島戦試合前会見

昨季の最終戦前、来季に向け彼はこう宣言した。

そう、今目の前にあるものこそが、彼のチームだ。

 

自我を貫く相手こそ大好物

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ビッグクラブとプロビンチャ

資金に恵まれたクラブ(現在その定義に含まれるクラブがいくつあるか疑問だが)と地方クラブ、大きく分けてこの二つに分類されるのがカルチョの世界だ。

マッシモが主戦場としたのはプロビンチャ

豊富とはいえない戦力の中で、いかにトップリーグで生き残り、規模で上回るチームに一矢報いるか、それはもう毎晩血眼になって研究に研究を重ねたはず。

私はイタリアのセリエAから来て、サッカーのすべてを見てきました

2019年10月3日 大分戦試合前会見

そしてその名残が未だマッシモには色濃く残る。

彼の真価が発揮されるのはいわゆる〝格上〟との戦いだ。Jの場合は、〝格上のように己のスタンスを貫くチーム〟と定義すべきか。つまりはどんな相手と対峙しても根幹にあるそのスタイルを崩すことなく、〝主体的にアクションを起こすチーム〟といえる。

この手の相手こそマッシモにとっての〝カモ〟だ。

彼のチームは相手のアクションを見逃さない。そのアクションは常にリスクと隣り合わせだからだ。相手のリスクこそ、マッシモにとっては最大の好機である。

そもそもマッシモは〝リスク〟の三文字が大嫌いだ。

彼の辞書にリスクの文字はないだろうし、あればきっと轟々と燃やし尽くすはずだ。何故危険な目にあってまでゴールを目指す?ノーリスクで勝利を目指せ。これがマッシモの哲学であり、自らリスクを冒すなど愚の誇張。リスクは冒すものではなく、狙うものだ。

イタリア人にとってフットボールは仕事。イングランド人にとってのフットボールはゲーム

ファビオ・カペッロ 

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

故に後ろを顧みない敵をマッシモはいたぶり尽くす。その餌食となったのが川崎であり横浜そして神戸だ。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 川崎フロンターレ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第12節

 

全ての行動の根幹にある〝リアクション〟

マッシモは今季が始まる前こんな大風呂敷を広げた。

ー監督にとって理想のサッカーとはー

具体例を挙げれば、リバプールだ。極端にポゼッションが少なく、縦に速く、前からプレスに行く、奪ったらカウンターを決める。ただ、理想は進化し続けると考えてほしい

2020年1月1日 中日スポーツより引用

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リリリリリリリリリリリバプールだと!?

騒つく名古屋界隈してやったりのフィッカデンティ

ただ蓋を開けると、例えば川崎のように毎試合己のスタンスを貫くようなことは決してなかった。いやむしろそんなアグレッシブな試合がいくつあったよ。

彼にとって〝ハイプレス〟とは、決して信念ではないのだ。あくまで〝理想〟であり〝手段〟に過ぎない。

そもそもボールの握り合いなんて発想がおかしい。奪って、そこから握ればいい。まずは奪う、なのだ。

だからリスクを冒してポジションを変えながらボールを運ぼうとする相手には二択。出鼻(ビルドアップのスタートとなる相手最終ライン)を挫くか、最後(自陣ゴール前)で凌ぐ。分かりやすくいえば、マークがズレる前に潰すか、駄目なら最後だけ抑えてしまう。そこで比較的出鼻を選ぶ点が今季のマッシモの特徴であり、昨シーズンからのチームの成長ともいえる。

余談だが、彼が当時イタリアで〝攻撃的〟と評されたのはこれが理由だろう。ドン引きのカウンターが〝カルチョらしさ〟と謳われていた時代を思えば、彼の発想は確かに攻撃的に映る。ただ一方で前から積極的にボールを奪いに行けば果たしてそれが攻撃的だと断定できるか、この点も以下の内容で考えていきたい。

さて今季の過密日程を考慮しチームの重心を上げっぱなしには出来ない苦悩もあるだろう。ただだからといってそれが絶対に譲れぬスタイルでもない。最も大切なのは、自分達以上に相手の出方でありその特徴だ。

例えば面白かったのが〝対オルンガ〟だった柏戦。

ハイプレスとはつまり〝背後のスペースを使われる可能性がある〟ともいえる。一つプレスを外されたらよーいどん!追いかけっこだ。それでも追いかけて勝算があるのならリスクでないが、追いかけても勝てっこないならそれはリスク以外のなにものでもない。

だからマッシモは潔かった。リスクだとジャッジすれば、行かない。構えて、引き込み、カウンターだ。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 柏レイソル (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第8節

まあ結局たった一瞬の隙を突かれて散ったけれど。

 

ノーリスクを担保するのは〝バランス〟

では負けないくらいゴールを奪えばいいじゃないか。

簡単に言ってくれるな。死活問題なのはここだ。

そもそも何故アクションを起こすチームに彼が強いか。まずはここから紐解くべきだ。というのもそれは決してボールを奪う場面に限らないからであり、彼のチームがボールを運ぶ際もその強みは発揮される。

但し条件が一つだけある。相手のプレスの人数、その型が名古屋のそれにぴったりとハマっていないこと。

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名古屋ビルドアップの最大の特徴、それは〝数的優位を担保し、可能な限り型を崩さないこと〟にある。であるからして、ビルドアップの人数は最大で8名になる。ゴールキーパーのミッチ、最終ラインの4名、ボランチの2名、そしてトップ下の阿部。これで8名。

彼らがボールを動かし、時にポジションを移動しながら、しかしバランスは崩すことなく相手の穴を見つけていく。相手が後方の数的同数を受け入れない限り、少なくとも名古屋自陣では名古屋の数的優位が必ず成立する。つまり相手のプレスには必ず穴がある。その穴が開く瞬間を、相手の傾向を分析した上でピッチでゆっくりボールと人が動きながらあぶり出していく。

ボール保持者がクリーンな状態で前を向いた瞬間が名古屋のスイッチだ。両翼の動きを意識した金崎がそれとは逆の動きでボールを迎える体勢を作り、その懐に収める。これが名古屋のパターンである。

この〝8(名古屋)vs6(相手)ビルドアップ〟(相手が後方で数的同数を受け入れない限り、名古屋の前線3枚に対し、相手はゴールキーパー含め5枚で対応する。結果、名古屋のビルドアップに6枚で対抗することとなる)のクオリティはリーグ屈指だ。

では何故ボール保持の際までバランスに拘るのか。

逆の立場になって考えるべきだ。必要以上にポジションを崩してもし途中でボールを奪われたらどうする?それは相手にとっての穴であり、名古屋にとってのリスクだ。そんなリスクはカルチョの歴史が許さない。

我々(ポルトガル人やイタリア人)のフットボールでは頭脳がすべてだが、イングランドフットボールはハートがすべてだ。頭脳だけでプレーするフットボールは美しくない。しかしハートだけでプレーするフットボールは成功を収められない

ジョゼ・モウリーニョ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

だから名古屋の選手達は極力ポジションを崩さない。見慣れた〝小林裕紀一列降ります〟なんてことも今はほぼやらないし、マテウスが中央に行けば阿部が彼のいたサイドをしれっと埋める。とりわけ前線をポジションで縛ることはないが、一方で誰かが動けば誰かで埋める補完関係、秩序は保たなければならない。

穴を自ら作らない。これが絶対の掟なのだ。

しかしだからこそ問題も起こるわけでさあ死活問題。

 

リスクを取らなきゃ点はとれない

彼のチームが前半戦勝てなかったチームは何処だ。

東京、鹿島、柏、東京、東京、東京くっそ東京。

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これらのチームに共通した点が一つ。〝過剰なリスクを取らず、可能な限りバランスを崩さない〟ことだ。前からいくなら名古屋の型を意識し、後ろで構えるなら名古屋に「崩しにこい」とアクションを求める。端的にいえば〝ベーシック〟なチームである。

そう名古屋最大の欠点は〝アクションが必要な局面〟

相手がビッグクラブのように振る舞わない。途端に息が苦しくなる。「どう攻める?」「どこに動く?」ああ息苦しい。悩みながらボールを回せば出口は見えず追い詰められ、駄目だ顔をあげたいと思ったとき彼らは金崎夢生を見る。タイミングなどお構いなしだ。

全ての行動がリアクションをもとに形成され、それは相手にアクションがある前提の上に成り立つ。故に相手が主体性を持ち能動的に動かなければ、アクションという名のバトンは名古屋に委ねられ、自ら走るレールを見つけなければならない。

そうだ唯一例外的な戦い方を挑んできたのが札幌。

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後方のリスクを取ってでも前からマンツーマンで名古屋の一人一人に徹底的に喰らいついた。そもそもマンツーで付けばズレねえじゃん!いや確かに。ただ一人でも剥がされたらその戦い方は詰みますよ。あはは笑えるフルタイムやり遂げた札幌あっぱれ。

てな具合でこうなると名古屋には自家発電が求められる。定位置でボールを回せば相手が崩れるほどことは簡単に運ばない。可能な範囲で個々が自己判断で動きプレーのテンポを上げることで状況の打破に挑む。

ただ悲しいかな好き勝手に動けばバランスは崩れるし、仲間を思いやる走りでなければ相手の壁に風穴を開けることも出来ない。最低限の運動量が担保されないとプレーのテンポだって上がるはずもない。

このシチュエーションで価値のある選手とは。

〝活かされるプレーヤー〟ではない。問われるのは〝周りを活かすプレーヤーが何人いるか〟だ。

soccermagazine.jp

挙げだしたらキリがないんですけど、一つはやっぱり良い攻撃するためのサポートのし合いであったり、空の動き、使われなくてもスペースを空ける動きが足りていないというか。自分、自分となっているというか、何人かが連動した動き出しがないので、ボールと受ける人だけのプレーになってしまっています。それ以外に3人目がしっかり受けに来ていたりとか、もし出てこなかったりしても裏には誰かが走っているとか。そういうことで相手のディフェンスが間延びしたりしますから。そういうところが足りないなと思います

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

阿部ちゃんのこの会見は沁みました。

リスクは大っ嫌いしかしリスクを冒してはそのツケを払う悪循環。ビルドアップの最中にパスカットを許し、奪い返したくともそのバランスには変調あり。


【DAZNハイライト】名古屋グランパス vs 鹿島アントラーズ (H) 2020明治安田生命J1リーグ 第14節

そんな試合が続けば自信だって無くなるさ。

リスクを避けるあまり人の動きは途絶えるし、ボールの行方は中ではなく外へ行く。中へのパスはリスクもあれば相手のカウンターに直結する。でも外だったらタッチラインが味方となりパス自体は通るから。

でも外でボールを受けてどう崩す?そりゃセンタリングだと千本ノックが始まり不慣れな金崎山﨑が四苦八苦。そして待ってたとばかりにマッシモはこう嘆く。

得点を量産してくれるストライカーがいたら、という話を5分間くらい続けることもできましたが、あまり現実的でもありませんし、話をしたところでそれが叶わなかったという話を何日か後にしなければならなくなります

2020年9月11日 横浜FC戦試合前会見

会見後行われた横浜FC戦は言及すべき内容だった。


【DAZNハイライト】横浜FC vs 名古屋グランパス(A) 2020明治安田生命J1リーグ 第16節

構える相手を打開出来ない展開が続く中、後半からマッシモがとった策は珍しく冒険的だったからだ。

中を攻略出来ないなら的を増やせとシステムを4-1-2-3に変更。大外はサイドバックが高い位置に張り出すことで幅を担保し、代わりに両翼が中に絞ることでワントップの金崎を含め中央の起点を3枚にした。

効果は抜群だった。見方によっては〝人を立てただけ〟だが、個人技で上回る名古屋が中に外に相手を制圧する。例え奪われても横浜FCのカウンターなら脅威ではない=リスクではないとのジャッジだろう。

ただこのハイリスクな戦法も相手の快速ウインガー松尾の投入で状況が一変。必殺のカウンターを喰らい運よくオフサイドで失点を免れたものの、これで怖気付いたかマッシモは従来のシステムに急いで戻し必殺のクロス千本ノックが始まったのだった。

我々イタリア人はフットボールにおいて「店じまい」をしようとする。リードを守りゲームを殺そうと試みるのは、これが理由だろう。格下と戦っている時ですら賭けはしたくない

ジャンルカ・ヴィアリ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

博打要素満載しかしマッシモも挑戦はしている。

サッカージャーナリストの清水英斗氏は、このチームの課題を端的かつ的確にこう表現した。

「戦略的リスクを取れるか」。素晴らしい表現だ。

 

若手を〝使いようがない〟マッシモ流

さて、これまでの内容で気づくことはないだろうか。

リアクションなら相手に応じ戦い方を変えながら、その穴を正確に捉え掴む技術が必要だ。一方でアクションありきの状況では個のスキルと発想で打開する力量が求められる。つまりその場合理屈ではなく、力技。

これ、もの凄く個々の高いレベルが必要では・・・

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でもいつもマッシモはこう言うんだ。

我々はどんなラインでやっているかと言えばしっかり結果を出したいというところです。我々がしたいプレーの質をなるべく下げないでやっていきたい、ということを皆さんには分かっていただきたい。その中で、うまくいっていないんだったら若い選手を使えばいいんじゃないかと、なんで選手を交代しないんだと考えている人がもしいるのだとしたら、代えようにも代えられない事情が一つありました。あと唯一、今回の終わってしまったウインドーの中で、センターバックや中盤の補強をなるべくしてもらいたかったのですが、それがしてもらえなかったこともありました

2020年9月7日 横浜Fマリノス戦試合前会見

いやマッシモちょっと待て。気持ちは分かるがそれは貴方のフットボールの文脈があってこその理屈であり、つまりその状況を作ってるのは貴方自身だ。もっといえば、名古屋に比較的近いフットボールをする東京はそれでも若手をばんばん使っていることにも言及すべきであり、要は試す勇気があるかないかだ。

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そう考えると結局今の名古屋とマッシモの関係は、雑にまとめれば〝ビッグクラブ(金のある名古屋)×プロビンチャ(マッシモ)〟の夢コラボ状態であり、つまりマッシモからすれば「金さえあれば(補強さえ満足に出来れば)必然的に(イタリアのとき夢にまでみた)俺のカルチョはビッグクラブ側にアップデートされる」なわけ。なるほどその理屈で考えれば彼が名古屋で指揮をとりたかった理由も分からないではない。イタリアでは苦渋を味わったしかしその国のビッグクラブ側で指揮をとればきっと!自身の力は証明される。彼ほどの自信家ならそう思ってもおかしくない。

彼の肩を持つとすれば、クラブが今季マッシモに対し何をミッションとしているか不明な点であり、例えばトップ5が条件なら、彼の判断も間違いではない。

イタリアでは結果ばかりを見る。どうしてそうなったのかを気にかけず結果ばかりを重視するんだ。試合に負ける人間は馬鹿者。これで話が片付けられてしまう。良いプレーをすることや未来に向けた基盤を作り上げるといったことは重要視されないし、とにかく試合に勝たなければならない

フランコ・フェッラーリ

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

2試合未消化4位。マッシモも言うだけのことはある。

 

後半戦の目標はとりあえず東京に勝ってお願い

さあそして勝負の後半戦がスタートする。

マッシモの課題は明白だ。端的にいえば〝リアクション以外で勝つ術を持ち得るか〟どうか。

きっとマッシモはこれからもマスコミを通じ事ある毎に補強の必要性を訴え、それが実現しない現実を嘆き悲劇の主人公を演じるだろう。それでも川崎に勝ちこの順位だと、自身がいかに優れた力量の持ち主かこれでもかとアピールするはず。〝対フロント〟を見据えたマスコミの扱い方と利用の仕方なら百戦錬磨だ。

そういう監督をチームに据えたのは他でもない我らのフロントであり、であるなら彼の為に補強するのが筋ではないか。ただ残念にも現実はそんな状況にない。

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では残りの後半戦、果たしてどう戦うのか。

マッシモがそのポリシーを捨て〝リスクを取る〟か、既存のやり方でなんとかするしかないだろう。

我々はそれが実現することを願い背中を押すだけだし、駄目なら「分かっちゃいたがアイツも典型的なイタリア人監督だ」と唾を吐き、なによりろくに補強も出来なかったフロントに牙を剥けばいいのだ。

世界一の指導者を起用したとしても、良い選手が揃っていなければ、チームは何も勝ち取れない。だからエンポリは絶対にスクデットを獲れない。誰が監督になってもだ。しかし逆もまた真なりだ。レアル・マドリーを率いていれば、何がしかのタイトルを獲らないことのほうが難しい

スヴェン・ゴラン・エリクソン

引用元:理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人 ジャンルカ・ヴィアリ

前半戦で勝てなかった相手にリベンジ出来るか。

観るべきポイントは単純明快だ。何故ならそれらの相手に勝てるかがマッシモ最大の課題であり、このチームの伸び代を図る目安になる。東京に次も負けたら「馬鹿やろうこの無能が!」と罵ってやれ。

同一シーズンで同じ相手に三回負けること、許されますかいや許されるはずがない。てかありえない!!

彼が得意とする相手にはそれが例え順位で上にいようが叩きのめしてきた。しかし苦手な相手には無得点の引き分けでも「無失点で勝ち点1だ」と(なんとなく)誇らしげなマッシモのメンタル。なんなんだそのメンタルそんなプロビンチャ(田舎)的発想とっとと捨てちまえ。気づけここは(一応)ビッグクラブだ。

そうマッシモはよくやっているし、もし最終的にトップ5で終わればその結果は上出来と呼べるだろう。ただ一方で勘違いしてはならない。それはあくまで結果論で、おそらく多くの人間が戦う以上は一番上を目指して欲しいと願うものだ。例え非現実的であろうが。

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「残留争いのチームが4位だぞ。これが俺の成果だ」

マッシモはきっと鼻高々にこう息巻いているだろう。

ただそれで満足して欲しくないのだ。振り返れば彼が日本で残した最高順位は東京時代の4位。では1位との差は何処にあったのか。これまでに記した彼のチーム作り、彼のプロビンチャで培ったメンタルこそがその差を生み出した最大の理由ではないのか。格下から得た勝ち点1に満足するのではなく、取りこぼした勝ち点2を嘆かなければこれ以上の上積みはない。

私はイタリアから来て、残留するということはどれだけ評価されることなのかという考えも違いますし、一つの試合を落とせば生活自体が苦しくなるかもという、全く違うところから来ています

2019年12月7日 鹿島戦(最終戦)後会見

マッシモを見ているとカルチョの歴史やその哲学を知るような想いだ。そんな〝元セリエA監督〟の経歴を持つ偉大なマッシモ様のプロビンチャの意地に期待したい。いやその果てしない野望に乗っかり楽しもう。彼がビッグクラブの器か試される後半戦の幕開けだ。

そいえばどうやってセレッソ倒したんだマッシモ。