みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

選手とクラブ、そしてファンサポーター

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移籍移籍で怒涛の日々だ。

特に今オフはコロナ禍の影響もあり選手の出入りが激しい。どのクラブのサポーターも毎日が一喜一憂、もはや誰がどこに行ったか分からないので名鑑待ちだ。

さて、我らがグランパスも相変わらずの日々である。

nagoya-grampus.jp

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名古屋のアカデミーで育ったストライカーに、長らく誰もが『名古屋の未来』だと信じて疑わなかった二人。まさか『完全』移籍とは。目を疑った。

それにしても毎年毎年よくもまあここまで心揺さぶれるものだ。毎時間我々の心はジェットコースターの如く上がってはダダ下がる。だって青木に杉森ときた。ダウンしてなお馬乗りするようなものではないか。

振り返るとこの時期を平穏に過ごせたことはない。

クラブからすれば今さら掘り起こすなと言いたいだろうが許して欲しい。文脈の共有のため振り返りたい。

 

繰り返された〝ファミリー置き去り〟の移籍劇

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2018年オフ、涙の昇格決定後に待ち受けていた田口泰士の移籍。フロントから引き出したクラブ内最高評価と本人の希望次第で結べる複数年契約。しかしあろうことか彼は移籍の道を選ぶ。こんな言葉を残して。

このクラブのために頑張る気になれなかった

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翌2019年オフには玉田圭司がクラブを去った。待て前シーズン最大の功労者では。2年連続で襲う悲劇。再び名古屋に戻ってきた〝クラブのアイドル〟は、その発表を待たずしてインスタに別れの言葉を紡いだ。

今シーズンで退団することになりました。あまりにも突然だったので正直、頭を整理するのに少し時間がかかりました....。2014年に一度退団し、その2年後に帰ってきて名古屋グランパスに誠心誠意をもってやってきましたが、契約しないと伝えられた時には労いの言葉の1つもなかったことにはがっかりしました。しかし、とても刺激的な2年間でしたし、僕にとってすごくいい経験をさせて頂いたと思っています。シーズン終了後に皆さんから来年度の僕のユニフォームを予約してくださったとの声を頂いて、来年にむけて頑張ろうと思っていたので、それを無駄にしないためにも前を向いていきたいです!ありがとうございます!

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同年もう一人の功労者であるキャプテン佐藤寿人もクラブを退団。2020年、クラブレジェンドである楢崎正剛が彼の引退に寄せたメッセージには、皮肉にも当時は知り得なかった現実が2年の時を経て綴られた。

お疲れ様でした。何度も対戦し、同じチームでもプレーしました。いつも相手に脅威を与えるストライカー。数字が物語っています。日本サッカーへの貢献は計り知れません。本当にありがとう。苦しい時期を共に戦い、大きな力になってくれたことは感謝の気持ちしかありません。今でも名古屋での最後は、もっとリスペクトがあるべきだったと思う....。これからの道、たぶんまたお世話になることもあるでしょう。次のステージも輝かしいものであることを願います

そして最後に風間八宏だ。

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シーズン途中で解任が決まった際、クラブの声明に彼に対する感謝の言葉はほぼ存在せず、あったのは『いかにこのまま続けていたらヤバかったか』それだけだった。残留を決めた際にでたトドメの一言がこれだ。

あのまま行っていたらおそらく…これはジョーも言っていたんですが、勝点1も取れなかったと思います。ジョーはそのことにありがとうと監督に伝えていましたよ。その通りだと思います

〝死人に口なし〟とは失礼な喩えだが、あのシーズンに起きたことはまさにそれで、そんなこと露知らずどれだけ連敗しても必死に応援していた我を恥じた。

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その翌年、あの日〝チーム代表〟として名前が挙がったジョーとクラブが裁判沙汰になった皮肉を、我々はどんな気持ちで受け止めたかクラブは知る由もない。

はっきりと書こう。毎年、毎年、散々なオフだった。

 

〝出会い方〟と〝別れ方〟

さて、先に断るが今更これらの話題は語るまい。

選手が去るときは一瞬で、そして、無力だ。我々が選手たちにどれほどの愛情を注ごうと、その恋愛対象と続くか別れるかを決める決定権は我々にはない。

それはもちろん〝別れ方〟だって同じこと。笑顔で別れるか、はたまたお互いに唾を吐いて別れるか。ともに過ごし、最もその対象に愛情を注いだであろう我々はその選択肢を持ち得ない。常に他力本願だ。

であるからして、別れ方が最悪なら悲しいかな我々は選手にありがとうを伝える機会すら与えられない。見えない場所で別れは決まり、知らない事情でクラブと拗れ、何故かお互いが気まずい想いでその手を離す。

こんなツラいことってある?いやないに決まってる。

だからこそクラブには『別れ方を大切にして欲しい』ずっとそう思っていた。出会いはどうとでもなる。きっかけは金でも誠意でも交渉術でも生み出せるじゃないか。つまりシビアにいえば出会いはビジネスだ。一つでもクラブに武器があれば選手は寄ってくる。例えその出会いが最悪なものでも構うものか。取り返す時間ならどれだけでもある。それが出会いだ。

ただ別れだけはそうはいかない。

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その手を離すとき、必要なのはこれまでその選手がクラブのために尽くしてくれたことへの感謝だ。

何故かって?だって我々がどれだけ手を離したくないと駄々をこねてもその決定権はくれないだろう。だからこそその判断を委ねる代わりに、我々は選手との間に生まれた信頼やともに歩んだ想い出だけでも大切にして欲しいと願う。頼むからぶち壊さないでくれと。

お前らにそんな権利はないなんて言わせない。

だってプロスポーツじゃないか。ファンサポーターあってこそ成り立つのだと言うのなら、せめてもの願いは『可能な限り円満に別れて欲しい』ただそれだけ。無償の愛を注ぐ我々に対し、クラブが出来る最大限のギブアンドテイクだと考えれば、少なくとも選手に対し誠心誠意の対応をする。これはある種の〝責務〟だと私は思う。その責任が彼らにはある。ただ残念にも我々はきっと裏切られ続けた存在だった。

しかし今オフは少しだけ様相が違うようである。

 

LINEに綴られた選手への想い。旅立った若手達

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※引用元:名古屋グランパス公式LINE

どのクラブでもあるような無味乾燥な移籍リリースに別れを告げ、移籍してしまう選手の人柄やエピソード、共に歩んだことを感じさせる文脈をもって感謝を伝える。これはクラブ公式のLINE担当者様の文章だ。

率直に、あぁこんな温かい言葉を紡げる方がクラブ内部にいてくれたのかと思う。その事実に、救われる。

話を杉森考起と青木亮太に戻してもよいだろうか。

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彼らのプロサッカー選手としてのキャリアを考えれば、今回の移籍は決して悪い選択ではないだろう。

特に杉森は1年間のレンタル修行で結果を残しそのクラブからオファーを勝ち取った。青木にしてもここ数年結果が残せていなかったにも関わらずJ1クラブへの完全移籍である。これを栄転と言わずして何と言う。

ただ一方でそれはあくまで〝選手目線〟の話に過ぎない。もちろんそれが何より重要であることは今更言及するまでもないが、やはりそこにはファンサポーターの想いがあることもクラブには忘れて欲しくない。

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クラブの生え抜きと呼ばれる彼らのような選手たちはやはりクラブの未来であり、多くのファンサポーターもまた彼らを通して未来を見る。9歳からグランパスで育ってきた杉森考起は、昨季徳島ヴォルティスであれほどの活躍、実績を残してもこのクラブに居場所を見出せず。これが今のクラブの事情である。彼らを手放す代わりに、我々はキャリアピークの優秀な選手たちを獲る。ただ2年後、3年後に彼らが今の力を持ち得る保証などどこにもない。そうなれば捨て、またお金を使い獲ってくる。その繰り返しだ。〝未来〟ではなく〝現在(いま)〟を取り、〝時間を金で解決した〟と言及する理由はそこにあり、ひいては『完全移籍』の本質的な意味もそこにある。いつか来るかもしれない出番を待たずして、今は席が空いていないからと放出する。それが正しい答えかは誰にも分からない。

彼らにその椅子を奪う力がなかったのも事実だろうし、その椅子をクラブとして用意してあげられなかったのもまた事実。そして、結果的に彼らのような選手が外に活路を見出すしかなかった現実もまた事実。

その事実を、我々が粛々と受け止めることは難しい。

ならばせめて彼らが堂々とこのクラブを巣立って行ったのだと、何の後ろめたさもなく、正々堂々と勝負した結果この道を選んだのだと、そう信じたい。

そりゃあプロの世界だ。人と人が交わり合ったその先に怒りや憤りがないなんて青臭いことは言いたくない。しかしながら繰り返すがプロスポーツにはファンサポーターがいる。我々が願うことはただ一つ、誠心誠意その選手に感謝を伝え、別れを告げて欲しいと。

〝強いクラブ〟はお金と誠意、そして目利き力があれば作れるかもしれない。不要になった選手がいれば捨てればいい。それ以上の選手を連れてくるだけだ。

ただ〝強く、そして愛されるクラブ〟はきっとそれだけでは作れない。どうしたら愛されるかって?そりゃ我がクラブに人生の1ページを費やしてくれた選手のことを、最後まで愛し抜くことだよ。それがひいては我々ファンサポーターも愛することに繋がるのだから。これは青臭いと言われようが強く主張したい。

そして私は欲張りなのでそんなクラブを求めたい。

 

今だからこそ改めて伝えたい感謝の想い

最後に。先日、佐藤寿人の引退会見を見た。

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質問者に名古屋の関係者がいなかったので仕方ないが、会見の殆どに名古屋時代の話はでてこなかった。

だからといってここで感謝を述べたところで彼に伝わることはない。けれどこの際だから書かせて欲しい。

あの泥舟のような名古屋にあって、約束されたキャリアを投げ捨ててでも飛び込んできてくれた貴方のことを忘れたことはない。降格してからの2年間、ずっとチームの先頭に立って走り続けてくれた姿を忘れることもない。佐藤寿人は名古屋の歴史に残るキャプテンであったし、同時に名古屋に歴史を作った張本人でもあった。だからこそ、引退することに労いの言葉もかけられない、いや、名古屋を離れる際、感謝の言葉すら伝えられなかった事実を未だ悲しく思う。

佐藤寿人は、今もなお名古屋の偉大なキャプテンだ。

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もうこんな悲しいことがないようクラブには強くお願いしたい。我々を〝ファミリー〟だと呼ぶのなら。

どんな理由であれ、どんな形であれ、どんな些細なことであれ、選手に感謝の気持ちを伝えてくれ、我々にその想いが届くような発信をしてくれた今のクラブに改めて感謝を述べたい。選手も、クラブも、我々ファンサポーターも、最後は〝人〟なのだ。

〝人〟を大切にするクラブであることを、切に願う。

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※引用元:深堀隼平Instagram