みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

なぜ奥川が、伊藤洋輝がいない!

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と、そんな声がチラホラと聞こえたメンバー発表。

ワールドカップアジア最終予選の対オーストラリア戦が間近に迫っている。なぜ〝日本代表〟なのに、今活躍する選手たちを呼ばないのか。代表は、最高の選手が集ってこその代表だろうが。いや、仰る通りである。

今回は、そんな代表にまつわる話。

尚、これから書く内容はあくまで私個人の感想•意見であることを予めお断りし、ご容赦いただきたい。

 

「なぜコイツを呼ばない」の気持ちがわかる

改めて、日本代表とはどうあるべきかと考えてしまう。

そもそも、前提として代表の活動はブツ切れが当然で、いわゆる〝継続性〟が観ている側に伝わりづらい。集まって、数日の練習で試合を行い、解散する。そこから数ヶ月の期間が空き、また集まって試合だ。

だから、私たちはメンバー発表の度に「え、代表の試合あるんだ」と驚き、常に〝今〟だけを見てしまう。過去や未来など気にするものか。だって〝今〟パッと集まっては解散する即席チーム。その瞬間にしか興味はない。

応援するクラブの選手が絶好調ならマジで呼べと声高に叫び、海外組が結果をだせば選出は当然だと認識する。

わかる。或いは、関心が低いほどその傾向は強いかも。

〝代表=今、最高の選手たちが集う場〟だと定義すれば、都度その前提で厳しい目が向けられるのは当然だ。

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正直に告白すると、私もまさにそのタイプで、もっといえば年々代表への関心が薄れていった一人である。だから、分かるのだ。分かるとは、これまでに書いた「忘れた頃に代表発表がやってきて、贔屓のクラブが蚊帳の外だと『ふざけんな』と唾を吐く」その気持ちが分かる。

また、悲しいかなこの傾向は(おそらく)サッカーファンですら顕著なもので、いわゆる〝代表不人気〟が叫ばれて久しい。その原因は、今回の趣旨とは逸れるので触れないでおくが、しかし、このブログは「そんな人間が代表に興味を取り戻しつつある理由」でもある。

きっかけは、このブログで行った2本の対談である。

migiright8.hatenablog.com

migiright8.hatenablog.com

長年、代表の活動を密着取材するサッカーライター、飯尾篤史氏の出演が決まったものの、悲しいかな聞き手側の私にそれだけのリテラシーがない。これはマズイと、半ば義務感で全試合みることを決意した。つまり、私には〝たまたま〟きっかけがあったのだ。それがなければ、ずっと外野から野次を飛ばしていたことだろう。

ただ、理由はともあれ全(8)試合を観た。

 

そして理解できた、そこに流れる〝文脈〟

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初戦のオマーン戦でまさかの敗戦。つづく中国戦には勝利したものの、3戦目のサウジアラビア戦で柴崎岳のバックパスをかっさられショッキングな敗戦を喫した。

1勝2敗。4戦目のオーストラリアとはこの時点で勝点差6。敗れれば、その差は9。まさに、絶体絶命の危機。

そう、あの日のオーストラリア戦も、大一番だった。

追い込まれた原因はいくつかある。当たり前となった海外組、故に過酷な日程。対する中東勢は国内組が大半で、1ヶ月のキャンプを組む熱の入れよう。そこに拍車をかけたのは、〝だからこそ〟自主性にこだわった森保一監督の、型がはっきりしないフットボールだった。

対するオーストラリアはどうか。海外組が多数で過酷な日程も同様。但し、違いが鮮明だったのは、〝自分たちの明確なフットボール〟がそこにあったことだ。固定された主力メンバーたちが、(今となっては)慣れ親しんだボール保持のスタイルで試合をコントロールする。プレーに迷いはなく、保持がベースにある為、ある程度は思い通りに試合も運ぶ。これは、まさに日本のサッカーファンが代表に、いや、森保監督に求めたものだった。

なかでもオーストラリアのキモは中盤にあるといえよう。アーバイン、フルスティッチ、ロギッチの3枚をどう抑える。サウジアラビア戦でも中盤の構成を試行錯誤していた日本は、ここで思いきった策に出る。まさに、最終予選における最大のターニングポイントがここだ。

4-3-3へのシステム変更。守田英正と田中碧の抜擢。

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この大博打に打ち勝った日本は、ここから破竹の勢いで5連勝。試合を重ねる度に新システムの練度は上がり、新戦力として三笘薫や板倉滉、谷口彰悟が台頭した。

そう、パッと集まっては解散する代表チームにも、この最終予選を通して間違いなく〝文脈〟が存在する。

苦しみ抜き、しかし、だからこそ進むべき道を見つけたのだ。集い、そして即試合の環境でも勝てるメンバー構成。相手によって振舞いをかえ、ボールを保持し、システムの穴を類まれな強度でカバーできる選手たち。とりわけボール保持と守備強度を同時に担保したスリーセンターの採用、そのキャスティングは、振り返れば東京オリンピックからの課題すら解決したようだった。

たしかに寄せ集め。しかし〝チーム〟なのだと思う。

だからこそ、森保監督は脈絡のない選手選考はしてこなかった。目指したのは、過酷な条件下でもアジア最終予選を勝ち抜けるチーム作り。日本中の選手たちは、そのための候補だ。8試合は〝点〟ではなく〝線〟。故に、その文脈上にいない選手の代表入りは容易ではない。

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特に代表では、誰かに支障があったり、誰かがパフォーマンスを落としたりしないと、出番が回ってこないし、チャンスをもらったときにチームを勝たせたり、良いパフォーマンスを見せないと、ポジションを確保できない

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監督って基本的に物事が順調に運ぶという前提で逆算はしないんです。想定外のアクシデントが起こったときに、誰がそこでチームに対して誠実に対応できるか、あるいは誰にチームを鼓舞する力があって、ポジティブな影響力を及ぼせるかということをまずは考える。だから、実際に使うかどうかは別にして、オン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチのあらゆるシチュエーションでチームにとってプラスになれる選手を、自分の手元に置いておきたいんです

例えば、今回のメンバーになぜ鈴木優磨が入らないのか、との意見もあった。監督の好みではないのかと。

ただ、この大一番で、しかも厳しいアウェーの戦いで、これまで招集してこなかった選手をあえて呼ぶメリットも見出しづらい。一方で、大迫勇也の負傷離脱に伴い、代表初招集となる林大地に白羽の矢がたったのは、おそらく東京オリンピックでの彼のパフォーマンスに加え、その人間性(貢献度)への信頼もあってのことだろう。

 

日本と不思議な巡り合わせにあるオーストラリア

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では、日本に敗戦後のオーストラリアはどうだろう。

先日、畏れ多くも以下の対談をさせて頂いた。

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お相手は誰もがご存じ、らいかーると氏。最初は(その格の違いに)スポナビさんの嫌がらせかと思ったが、本気と書いてマジだったので腹を括った。是非ご一読を。

さて、そのオーストラリア。初戦から3連勝と順調に勝点を積み上げたが、日本戦以降はまさかの1勝3分。当時、勝ち点6差あった日本との差も、いまや勝ち点3差で日本の後塵を拝する始末。誤算だったのが中国戦のドロー。直近のオマーン戦でも、終了間際にPKを献上し痛恨のドロー。ここ数試合の悪い流れが止まらない状況だ。国内では、代表への批判の声も高まっているという。


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順風満帆だったはずだ。しかし、彼らは仕留め損ねた。

予選敗退の窮地に立たされていた日本を、結果的に目覚めさせたのは、あの日のオーストラリアだった。

そこからの日本は前述の通りである。最終予選を勝ち抜くための糸口を見つけた日本は、今日に至るまでまさに一歩ずつ歩みを進めた。ぎりぎりの戦い、しかし着実に勝点3を積み上げる。一方のオーストラリア。らいかーると氏の言葉を借りれば、彼らはその後〝運〟にも見放された。なんとも不思議なものだ。あの試合を境に、たしかに何かが変わり、両者の立場は入れ替わったのだ。

そして、今度は日本がオーストラリアの息の根を止めるべく、彼らの本拠地に乗り込み、そして決戦に臨む。

一度も勝ったことのない地で、日本は仕留めきれるか。

 

これがアジア最終予選の醍醐味。決戦を見逃すな

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最終予選を通じて、日本代表が〝チーム〟を作ってきた過程(文脈)と同時に、不思議にも最終予選ならではのストーリーも生まれてきたことに気づくだろうか。

今だけをみると、たしかに代表の活動は淡白なものだ。

しかし、だ。その〝今〟の見方を変えたらどうだろう。

4ヶ月にも及ぶ長丁場で用意された場はたった10試合。ただ、その10試合の中に各チームの様々な文脈が存在し、それらがクロスオーバーすることで、最終予選自体にも不思議な文脈が生まれる。全ては、繋がっている。

これが、最終予選、最大の醍醐味なのだと改めて思う。

今回の決戦で、日本が勝点を拾って帰ることができれば、7大会連続のワールドカップ出場をほぼ手中に納めるだろう。但し、もし破れることがあれば、またもやオーストラリアと順位は入れ替わり、日本が奈落の底に突き落とされる可能性もある。だから〝大一番〟なのだ。

最後の最後まで、日本とオーストラリアは見えない糸で結ばれるように、互いの命運を握りあっている。

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対談で、らいかーると氏はこう話していた。

日本も、オーストラリアも、自分たちのフットボールにフォーカスする様が似ているから面白い、と。

一方は、自分たちが信じた道を突き進み、もう一方は、出遅れながらもレールを見つけた。では、今回はその練度が試される試合なのか。しかし、互いに辞退者が続出。だからこそ、いま何が必要か。何が勝敗を分ける。最後は選手層、つまり〝育成〟の名の下にこれまで築きあげた国としての底力が試されるのではないか。

これぞまさしく代表の試合。本物の、国と国の戦いだ。

この戦いを勝ち抜いた者だけが、ワールドカップに向けた〝新たなチーム作り〟の権利を手に入れる。アジアではなく、世界の猛者たちに勝つためのチーム作りがこの先に待っているだろう。そのベースとなるのは、もちろん今戦うアジア最終予選にある。新たに日本代表へ加わるのは誰だ。奥川雅也か、伊藤洋輝か、それとも川辺駿か。ワールドカップを楽しむために〝今〟を見逃すな。

そこにあるものは、未来を知るための手がかり。

そして、過去から紡いできた、今しかないドラマだ。