みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

追い求めた姿、そのための覚悟

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ワールドカップに対する世間の関心が低い。

わかる。我が家でも、そして職場でも全く話題になっていない。ただ、ひとたびSNSに目を向ければその話題もなくはないから、つまり〝事前に〟関心を向けるのは、もはやサッカー好きくらいのものなのだろう。

この〝事前に〟が非常に重要で、裏を返すとサッカーファン以外のその他大勢にとって、ワールドカップとは〝その瞬間のみ〟の話題である。というより、もはやサッカーファンですら一括りにカテゴライズするのは難しい。実際は、この層の中にもワールドカップに興味を示さない人たちは沢山いる。これが現実だ。

では、こうなってしまったのはなぜだろう。

田嶋が悪い(悪いな)。いや、森保がつまらないから悪い(それも否定しない)。海外組も増えたし、協会の運営も(ハリル騒動以降)非難轟々。要はもう〝自分ごとではない〟。一言で言ってしまえばそれだけのことだ。

もちろん、そもそもサッカーファン以外のその他大勢からすれば、「田嶋も森保も知らねーよ」が本音である。

とすれば、だ。

純粋に、この国において〝日本代表〟という存在は、誰にとっても魅力が薄れているのだろう。数多あるコンテンツの中で、それを追いかけるだけの魅力がない。

翻って、マスコミ・メディアに目を向けてみよう。

雑誌は売れなくなった。廃刊、ページ数の減少、なくなった特集(巻頭)記事。代わりに台頭したネット記事とYouTube。気づけば現地取材なんかしなくたって記者会見は出られるし、記事も動画も自宅制作が当たり前の時代になった。誰もが狙うのは〝バズる記事(動画)〟であり、手っ取り早くバズるために愛すべき対象は兎にも角にも批判すべき対象となった。代表OB関連のYouTubeなんて最たる例だ。火力強めを演出するには批判一択。ただ、悲しいかな彼らのようなメディア側が一方的にそうしたわけではない。我々受け手側の変化に対応すべく、〝なるべくしてなった〟結果なのだろう。

そうして、〝線〟で見ていたものは〝点〟になった。

日本代表のニュースを見ても、そこに〝文脈(ストーリー)〟を見出せなくなったのだ。当然、魅力なんか感じないし、コンテンツとしての優劣も年々劣る一方だ。

過去を遡れば、テレビで代表戦がやっていれば当たり前のように観る時代が確かにあった。ゆえに、10人いれば10通りの日本代表のストーリーが生まれたものだ。ただ、そんなものはもうない。では代わりにストーリーを指南してくれる語り手がいるかといえば、それもいない(そんな場もない)。そもそも今の代表にストーリーなんかあるのか、待ってそのツッコミは御法度だ。

だからこそ〝線〟で発信をしたい。その場を作りたい。

ライターである飯尾篤史氏をゲストに迎え、この対談が始まったきっかけはそれである。

素人のブログの場で、文字数など気にせず好きに話して欲しい。但し、何処かを切り取って話すのではなく、〝文脈〟を文字で残したい。そこに価値があるからだ。

さて、東京五輪後から始まったこの対談も遂に3回目。ワールドカップ第一戦も直前、(ひとまずは)森保体制の集大成となる。ただ、気になるのが本大会出場決定後の戦いぶりである。おいおい、9月のヨーロッパ遠征でみた〝チーム鎌田〟アレはなんだ。日本を救った〝フロンターレ化〟は何処へ。その文脈を今一度整理したい。

先に断っておくと、この対談は現在の日本代表の道のりを振り返るものである。ゆえに、その結末を目にし、ストーリーの善し悪しを決めるのは各々に託されている。

ともに見届けましょう。そしておおいに語りましょう。

 

ここにきて第2フェーズ再び!はなぜか

みぎ(以下、略)いよいよワールドカップでの戦いが始まりますが、ここまでの流れで確認しておきたいことがあります。アジア最終予選の途中から4-3-3に変更して6連勝を飾り、ブラジルやチュニジアと対戦した6月シリーズでも一貫して4-3-3を磨きました。ところがアメリカ、エクアドルと戦った9月シリーズから4-2-3-1に戻し戦い方を変えた。飯尾さんはどう解釈していますか?


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飯尾(以下、略)9月シリーズで森保(一)さんが強調していたのは、トップ下を置くことの効用でした。トップ下を置くことで攻撃の起点が増えるとか、カウンターのバリエーションが増えるとか。そこには、今シーズン絶好調の鎌田大地をなるべく相手ゴールの近くで生かしたい、という狙いもあったと思います。森保さんの4年間のチーム作りを振り返ると、そのときに調子のいい選手をできる限りチームに組み込んで生かそうとしていて。

それが中島翔哉南野拓実、堂安律の三銃士を並べた第1フェーズ、鎌田、伊東純也を組み込んだ第2フェーズ、守田英正、田中碧を抜擢した第3フェーズですね。

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そして今は再び鎌田、そして久保建英、守田を主軸に据えようとしている。もちろん、旗手怜央も好調だとか、いろいろ反論もあるでしょうけど、おおむね活躍している選手を中心にチームを作っているから、メンバーの顔触れによって戦い方が大きく変わるし、戦術がないと言われる要因にもなっていると思います。ザックさん(ザッケローニ監督)の時代はかなりメンバーが固定されていたし、ハリルさん(ハシルホジッチ監督)のときは、スタイルに合わないという理由で弾かれる選手、土俵にも上がれない選手が少なくなかった。ちなみに、スペインのルイス・エンリケ監督も好みが激しくて、国内では反発もあるそうです。それらと比べてこの4年間、あるいは最終的なメンバーは、森保さんの色や好みが強く反映されているわけではなく、おおむね活躍している日本人選手のオールスターといった顔ぶれになっていると思います。

なるほど。今、このタイミングなら鎌田、久保を組み込まないわけにはいかない、というわけですね。

もうひとつは、6月シリーズで一貫して4-3-3を試したものの、しっくりいかなかったということもあったと思います。チュニジア戦なんかがそうでしたけど、アンカーのところを狙われていた。チュニジア戦後には、選手サイドから2ボランチに戻す提案もあったようです。一方で、あの4-3-3は“フロンターレ化”と言われたように、守田、田中の2人がいて成り立つところがあった。6月シリーズでは守田が負傷離脱したため、いまいち機能しなかった。アンカーの遠藤航の代わりもいないし、4-3-3を主戦システムにしてワールドカップを戦うことの難しさも感じたんじゃないかと。


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時系列にいえば、4月にドイツ、スペインとワールドカップで戦うことが決まり、その後に6月シリーズがあったじゃないですか。だから、強豪相手に4-3-3がどこまで通用するのか試しているのかと感じていました。ただ、ブラジル戦では攻撃の活路が基本的には右の伊東しかなくて、その伊東もなかなか突破できなかった。となると、左サイドでフィニッシャーとして待っている南野にもボールが来ない。攻撃は明らかに手詰まりでしたよね。それに、本番では中3日でドイツ、コスタリカ、スペインと戦っていかないといけない。となるとターンオーバーしなきゃいけないわけですが、4-3-3でターンオーバー出来る人材にも不安が残った。飯尾さんがおっしゃった守田、遠藤の代わりもそう、1トップも含めて。

たしかに4-3-3のセンターフォワードは孤立しがちなので、そこで踏ん張れるのは大迫勇也しかいないような気がします。それに4-1-4-1でブロックを組むより4-4-2で組んだほうがコンパクトな陣形にできるとか、複合的な理由があったんだろうと。

試したということで言えば、ブラジル戦では繋ぐことにとにかく固執してましたよね。今思えば、どれくらいできるか実験も兼ねていたのかと勘繰ってしまいます。

それは間違いなくあって。森保さんはロシア・ワールドカップのベルギー戦の話をよく持ち出すんですね。あの試合、乾貴士が2点目を決めるまでポゼッションはほぼ互角だったと。でも、そのあと日本のポゼッション率が極端に下がって、ボールを持てず受け身に回るから疲労も増して、相手の思うようにやられてしまった。だから、ゲーム終盤でもしっかり繋げるようにしたいと、就任当初からテーマとして掲げていて。ブラジル戦でもどれだけやれるかチャレンジしてみたんでしょうね。あと、実験ということなら他にもあって。6月シリーズのパラグアイ戦、ブラジル戦、ガーナ戦、チュニジア戦ではメンバーを毎試合変えていましたよね? もちろんメンバー選考や組み合わせの確認もあったでしょうけど、ワールドカップでも試合ごとにターンオーバーするよ、というメッセージでもあったようです。

 

〝中3日〟の過密スケジュールをどう乗り越える

9月シリーズのアメリカ戦とエクアドル戦でも、スタメンを11人代えましたもんね。

ワールドカップでのターンオーバーというと、2試合を終えた時点でグループステージ突破を決めたチーム、あるいは突破の可能性が高いチームが、第3戦でメンバーを入れ替えるじゃないですか。ロシア大会の日本も、ポーランドとの第3戦でスタメンを6人入れ替えた。でも、森保さんは毎試合、ターンオーバーすることを視野に入れている。長友佑都も言っていますけど、「ワールドカップの1試合の消耗度はハンパない」と。

しかもドイツ戦は初戦だからプレッシャーも懸かるし、ドイツの強度、インテンシティを考えれば、4日後のコスタリカ戦でベストパフォーマンスを出せるような状態ではなさそうですもんね。

森保さんは「ワールドカップに過去6大会出場していて一度も行けないところに行くには、同じことをやっていてもダメだ」と明言している。だから毎試合メンバーをかなり変えて戦っていく可能性があります。あと、6月シリーズではもう一つ実験をやっていて。ブラジル戦でハーフタイムにインサイドハーフ原口元気を、後半途中に南野、古橋亨梧、伊東の3トップも代えて、攻撃陣を総取り換えしているんです。これも5人の交代枠を利用した一種のターンオーバーで、試合中に前線の強度を落とさないようにやり繰りしていく。選手たちにも「先発と途中出場の選手が分担してクオリティとインテンシティを維持していかなければ、ワールドカップでは勝てないと思うから、あえてやった」と話したそうです。

なるほど、まさに総力戦ですね。

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ここからは僕の考えだけど、グループステージを90分×3本の270分として、出場時間を振り分けるような考え方をするかもしれない。ドイツ戦だったら、久保をハーフタイムで三笘に、前田大然を60分で浅野拓磨に、伊東を70分に堂安に、鎌田を70分で南野に代える。続くコスタリカ戦には上田綺世、堂安、久保、相馬勇紀の東京五輪セットを送り込む。上田と相馬はドイツ戦に出ていないのでフレッシュな状態、久保はコスタリカ戦でトップ下起用するためにドイツ戦は45分で下げた……というように。

〝リレー方式〟ですか! その発想は面白いなあ。

今の日本代表選手たちに、レギュラー組、サブ組の考え方はないそうです。相手チームや戦略上の理由から、「今日はあいつが先発で、自分がベンチスタートというだけだ」と。自分はサブとか、その選手に自分が劣っているとは誰も考えていない。選手たちもそう思っているし、森保さんもそう考えているわけです。これなら、例えばドイツ戦に負けたとしても、2戦目に向けてウズウズしている堂安や相馬、上田が「よし、俺たちが勝ち点3をもぎ取るぞ」というメンタリティになるし、もしドイツから勝ち点を奪えていたら「よし、俺たちも続くぞ」となる。その試合でベンチスタートに回った選手たちも「俺たちがいつでも代わるから、全力でやってこい」とスタメンを送り出せる。こうした一体感こそ、グループステージ突破のカギになるかなと。

 

腹を括った。いや、腹を〝括り直した〟!?

なにせ中3日の鬼日程ですしね....。そうだ、ところで、9月シリーズで4-2-3-1に戻す予兆はあったんですか?

予兆ではないですが、アメリカ戦前の公開練習でゲーム形式のトレーニングを見られる機会があって。そのときに4-2-3-1でセットされていたんです。まだ全員揃っていないし、合流直後で別メニューの選手もいたから、スタッフが入っていたり、フィールドプレーヤーが9人だったりしたんだけど、4-2-3-1が前提のような形でトレーニングをしていた。実は4月にワールドカップの対戦国がドイツ、スペインに決まったあと、ある筋から「森保さんは3ボランチの4-3-3でW杯を戦うことを決めた」いう話を聞いたんです。中盤中央を硬くしなければ戦えないと。

ん....!?なんですかその話は。真面目なトーンでいきなり大事な話ぶっ込んできましたね(笑)。ある筋から!

そう(笑)。それで6月シリーズも4-3-3だったから、9月シリーズのアメリカ戦のプレビュー原稿に、「田中、守田、遠藤以外に誰が4-3-3でやれるか」「6月シリーズから引き続きテストだ」、みたいなことを書いて納品していたんです。だけど、練習を見て慌てて連絡して、書き直しました(笑)。

蓋をあけたら4-3-3じゃなかったと(笑)。そうか、9月シリーズからは〝本番仕様〟だと森保さんも話してましたもんね。でも、その文脈もの凄く重要じゃないですか? じゃあ、一度覚悟を決めたけど、実は6月シリーズが終わってから覚悟を〝決め直していた〟。その結論が、〝本番仕様〟と位置づけていた9月シリーズの姿にあった、つまりはそういうことでしょうか。

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そうだと思います。やはりチュニジア戦の惨敗が大きかったんじゃないかと。三笘薫が試合後の会見で「チームとしてどう攻めていくのか、決まったものを持たないといけない。チームとしての狙いはありますけど、狙いの細かさは全然足りていない」と指摘しましたよね。どうやら帰りのバスの中でもかなり意見が出て議論になったようです。それが9月シリーズでのチームの雰囲気に繋がっていった。選手同士のディスカッションが活発になり、長友は「こういうプレスを掛けたいとか、こういうプレーをしたいとか、若い選手たちからすごく意見が出るんですよ。今までの代表でここまで意見を言い合える関係性はなかったんじゃないかな」と話していました。

記事で読んだんですけど、原口も「ロシア大会の前のような雰囲気になってきた」と話していたんですよね?

そうですね。一方で、ミーティングの内容や戦術練習もより細かくなった。鎌田も「アメリカ戦では事前の戦術練習やミーティングで、相手がこう来るから自分たちはどうするという明確なやり方があったし、選手自身がちゃんと理解して、チームとして動けていた」「戦術トレーニングやミーティングが以前とは変わった」と語っていましたから。

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話を聞いていると、2010年5月のワールドカップの壮行試合を思いだすなあ。あの韓国戦。ホームで0-2の完敗を喫して、ボロボロの状態でキャンプ地に向かって。それで現地で選手ミーティングを開いて、(田中マルクス闘莉王が「俺たちはへたくそなんだから、もっと泥臭くやらないとダメだ」と言ったんですよね? 

戦術面にかなり踏み込んだミーティングになって、本音で話し合ったようです。その内容をキャプテンの川口能活が監督の岡田(武史)さんに伝えにいくと「そうか、じゃあ、やり方を変えるか」と。

今回の6月シリーズってそれほど話題になりませんでしたけど、当時の岡田ジャパンのトリガーが韓国戦だったとすれば、実は森保ジャパンのトリガーこそ6月のチュニジア戦にあった、という可能性もあるわけですね。

結果が出れば、そうなりますね。ただ、岡田さんは前年09年にオランダに0-3で敗れ、相手のレギュラー組が出ていた前半に圧倒されたガーナ戦を経て、スタイルをひっくり返すことを考えていたと。あとは、選手たちがそれを受け入れられるタイミングを探っていたそうです。一方で、森保さんがそこまで計算して、ディスカッションが活発になるのを待っていたかは分かりません。森保さんは当初から選手たちに自主性や臨機応変さを求めてきたけれど、結局、窮地に追い込まれないと主体的になれなかったわけでもある。ただ、結果として森保さんが望んでいた形にはなってきたのかもしれません。

〝一時は腹を決めていた〟とのある筋(笑)の話が確かならば、辿り着いたその結論は、森保さんの想定の範囲内だったのか、実は森保さん自身も想定外の変化だったのか興味深いポイントですね。いつかご本人にぶつけてください、必ず(笑)。それにしても、点ではなく線で代表チームを見ていくことの面白さが詰まってますね。

 

〝本番仕様〟で起こる選手と監督の化学反応

森保さん自身についても9月シリーズで変化を感じました。先ほど、ミーティングや練習内容が変わったという話をしましたけど、会見でもすごく雄弁に語っていたし、堂々としていて、自信がみなぎっているように見えましたね。

それは、やるべきことが定まり、実際にしっかりやれている、という自信でしょうか。

9月シリーズの会見で、森保さんに「ミーティングや練習内容をどう変えたのか」という質問をしたんですよ。そうしたら、「以前は戦術を浸透させ、自チームのことを固めるためのボリュームが多かったが、今は対戦相手に対して自分たちが何をするか。噛み合わせの中で相手のウイークを突く、相手のやりたいことを止めるためのボリュームを増やしている」と答えたんです。「同じことを伝えたとしても、選手が吸収できないときもあるし、2次予選、最終予選、今の時期とではギアが変わっていて。私自身も学びながら、選手の状況を見ながら、伝えることを変化させていっている」という話でした。

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なるほど。タイミングを見ながら意図的に伝える内容を変えてきた一方で、自身も学び、成長していると。

選手たちからの「こういうところを詰めたい」「こういうフィードバックが欲しい」という要望にも応えてきたんだと思います。これは以前、インタビューをしたときに話していましたが、「自分にないものは、それを持っている人から学ばないといけない。相手が選手であっても。そうして学んだことを、チームや選手自身のためにどうやってチーム作りに落とし込んでいこうかと考えながら、チーム作りに生かしてきたつもりだ」と。だから、頻繁に欧州視察に行ってましたけど、例えば、鎌田に「グラスナー監督はどうやってるの?」とか、堂安に「シュトライヒ監督の練習はどんな感じなの?」といったようなことも聞いているんだと思いますよ。

知らないことは教えてもらう。森保さんの人柄が滲み出てますね(笑)。皮肉にも、その姿勢が代表監督として賛否両論を生むのでしょうが、ある意味、潔いですね。

若い選手たちからすると、頼りないなあ、と思うかもしれないけれど(笑)。それで選手が主体性を持って発言するようになるならいい、と森保さんは思っているんじゃないですかね。

 

大迫、原口の〝サプライズ落選〟

じゃあ、ここまでの話を踏まえて、改めて26人のメンバーについて聞かせてもらってもいいですか。まず、飯尾さん的にサプライズはあったんでしょうか。

サプライズと言われると、ないですね。いろんな媒体で予想していて、僕はふたり外しました。上田ではなく大迫を、相馬ではなく原口を選んだんですけど、上田、相馬を選ぶことも考えていたので。そのうえで森保さんなら大迫と原口を選ぶはずだと思ったから、予想したわけですけど。

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原口に関しては、飯尾さんもメンバー発表会見で質問してましたよね。「飯尾、いけ!」ってネットで話題になってて(笑)。僕も、メンバーが23人から26人に増えたことで、ユーティリティよりスペシャリスト、つまり相馬のほうが優先されたのかなと思いました。

原口はすごくハートのある選手で、言葉もしっかりしていて僕は好きな選手なのでショックでした。4-3-3が主戦システムになるならインサイドハーフの候補として考えられたけど、4-2-3-1になったので。原口自身、9月シリーズで「4-2-3-1になったら、僕的には厳しい」と話していましたから。

うわー....そうだったんですね。それこそ大迫も驚きでしたけど、大迫を外したことで4-3-3はないんだなと。

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そうですね。あと、外から見ている僕たちは、大迫はW杯に向けてコンディションを整えてきたな、と感じていたけれど、データ上はそうでなかったのかもしれない。そのあたりのインサイドの情報は監督が一番把握しているから、なんとも言えないです。ああ、そういう選択をしたんだなというくらいで。

あと、旗手の落選を嘆く声も多かったですね。

セルティックで活躍しているのは間違いないけれど、代表キャップは今年3月のベトナム戦だけ。その試合でもハーフタイムにベンチに下がっているから、このチームでの実績はないに等しい。あと、原口と同じで4-3-3ならインサイドハーフでチャンスはあったけど、4-2-3-1になったことで難しくなったのかなと。

僕もそう思います。古橋の落選に関しても不満の声が漏れていました。僕も残念でしたが、これまでの森保ジャパンを振り返れば、古橋ではなく浅野を選ぶ決断も理解は出来て。どちらが良い悪いではなく、結局は〝どちらの能力が求められているか〟じゃないですか。ひと昔前に比べると、サッカーファンはもう日本代表を追っていないのだと、あのメンバー発表の日に改めて感じたりもしたんですね。日本代表のストーリーが共有されていない、つまり、断片的な部分だけを切り取って善し悪しが語られる状況が生まれているのだと。もちろん、物語を追っている方が偉いだとか、そんな話でもありません。

ワールドカップのメンバー選出は一種のエンターテインメントで、世界中どこでもああだ、こうだ議論がなされるし、そこを楽しむのはいいことだと思うんですよね。日本代表への関心が薄れているのは、時代と言えば時代かもしれないし、サッカーというスポーツが文化として根付いていないからとも言えるし、森保ジャパンの人気がないからでもあるだろうし、日本サッカー協会への不信感から興味をなくした人もいるだろうし。いろいろな要素が絡み合っていると思います。

絡まり方エゲツないから(笑)。あと、メンバーに関してもうひとつ。アキレス腱を痛めた中山雄太の代わりがFWの町野修斗だったことに関して聞かせてください。

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サイドバックの代わりがFWだったことについては、世間で言われているような疑問は全然感じてなくて。各ポジションに2人ずつ選ぶのがセオリーだからDFなら8人だけど、最初9人も選ばれていた。なぜかと言うと、メンバー発表時点で負傷していた板倉滉が間に合うのかどうかクエスチョンがあったから。その後、中山と冨安健洋が負傷して中山が欠場することになった。でも、伊藤洋輝が左サイドバックもやれるし、DFを追加しなかったということは、板倉と冨安が間に合うからでしょう。そうでなければ、佐々木翔や瀬古歩夢、菅原由勢といったDFを呼ぶはずなので。板倉と冨安に間に合うメドがついたなら、攻撃のカードを加えるのは当然の判断というか。攻撃陣の中で、なぜ町野だったのかは分かりません。純粋に町野の得点力やプレッシング力を買ったのかもしれないし。

今大会は5人交代で、最初に話したようにターンオーバー、リレー方式を考えていれば、前線は多くいるに越したことはないですし、10年南アフリカ・ワールドカップのときの矢野貴章のように守備力も計算に入れているのかもしれませんね。前田大然に浅野....リレーのバトンを受ける人としては悪くない人選に思えてきました。

もちろん、大迫のようにバックアップメンバーになることを断った人がほかにもいたのかもしれない。そのあたりのことは分からないですね。

では、入ってきてほしかった若手はいますか?

うーん、特にいないですね。若手だとパリ五輪世代になると思いますけど、今のディスカッションが活発なチームの中で“お客さん状態”になったら意味がないので。ただ、ベテラン、中堅ならちょっといます。例えば、昌子源大島僚太植田直通、中島、室屋成、川辺駿あたりがいないのは残念だし、東京五輪世代で言えば、林大地、橋岡大樹、菅原あたりにも食い込んできてもらいたかったかなと。

僕は、今の吉田麻也の立場に昌子源がなっていて欲しかったと、どうしても言っておきたいです(笑)。そういうバトンが受け継がれたのだと、あのベルギー戦で感じていたので....。すいません要りませんかこの話?(注:カタール出発前で眠そうな飯尾氏) 畜生!では最後に、グループステージの戦績予想で締めます!

それは難しいですね(苦笑)。希望で言えば、2勝1分。現実的には1勝2分で抜けたいところですね。

謙虚に欲張りだ。答え合わせが楽しみです(笑)。

 

(対談後記)

示唆に富む内容であったように思う。

結論に至るまでの過程がどうであれ、〝世界で勝つためには〟守備の整備が必要だと考えた岡田ジャパンと森保ジャパン。その結果、プライオリティが下がるボール保持。原口の言葉を借りれば「ロシア大会の前のような雰囲気になってきた」、それと時を同じくして調子を上げる柴崎岳(これが偶然か必然かは議論の余地アリだ)。

最後に個人的な願いを書いていいだろうか。

これらの大きな変化によって、これまで積み上げてきたもの、つまりアジア最終予選でやってきたことが色褪せないで欲しいと思う。チームが苦しいとき、過去の苦労や努力が助けとなって欲しい。過去と現在(いま)は別ではなく、繋がっているのだ。やってきたことが無駄ではなかった、そう言えるような戦いぶりを期待したい。

ロシアワールドカップの再現は、もういい。

あの教訓から何を学び、どう進んだか。それが観たい。

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