みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

クラブに二つお願いがあります

今週月曜の朝、ガーシー当選より驚く事実があったか。

名古屋の人たちにはあった。誰一人として予想すらしていないのだから、ガーシーすら抜いたと思ってる。

ナガーイーの電撃復帰だ(もうやめます)。

爽やかにWelcome Back!と迎える公式。待って、何が起こっているの。正直、未だに現実が理解出来ていないが(ピッチの姿をみて初めて実感するはず)、名古屋のために走るというのなら分かったWelcome Back!

それにしても33歳になった永井謙佑を移籍金満額払って獲得とはフロントもまあ太っ腹。彼に加え新加入の永木亮太(湘南→名古屋)が34歳。もうこれははっきり言うが、兎にも角にも「(今季は)絶対残留!」の強い意志と受け取った。仕方ない、なにせ順位が順位なので。

シーズン前の(コロナ感染による)キャンプ中断に加え、相次ぐ怪我人の数々と、誤算も多々あったはずだ。そしてまたも襲うコロナの波、さすがに嫌になるわ。

あえて指摘もするならば、やはりクバ長期不在に対する見込みの甘さか(偉そうな物言いになってしまうが)。

たしかに酒井宣福は良い選手。それはサガン鳥栖も観てきた私が断言する。しかしながら、ワントップの実績はこれまで皆無だった。あくまでツートップで、しかも多くのチャンスを生み出すチームで築き上げたシーズン8得点(2021)だったこともまた忘れてはならない。

 

そもそも何故ここにきて永井なのか

前半戦、長谷川健太率いるグランパスは苦戦した。

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酒井、柿谷曜一朗金崎夢生。中央にどっしり構えるタイプでない彼らに課せられた「得点」の責任が重くのしかかる。それは、クバ加入前のマッシモフィッカデンティ体制とおおよそ似た現象と言っていいだろう。

昨季と変わらず、今季の名古屋もカウンター型のチームだ。だからこそ、スピードなりパワーなり、つまり〝ゴールの型〟が明確なストライカーの方が周りは絵が描きやすいように思う。ボールを保持し相手を押し込んで、バリエーション豊かに崩すチームではないのだから。

そこでやってきた永井。あかんハマる(知ってる)。

帰ってきた理由が、

  1. ストライカーで使ってもらえること
  2. 健太さんだったこと
  3. 恩返し

の優先順位には「永井おまそういうとこやぞ」とツッコみたいが、ここに健太さんの良さも凝縮されている。

要は「出来ないことをやらせない」のだ、健太さんは。

象徴的なのが徳島ヴォルティスから帰ってきた石田凌太郎。徳島では一体何があったんや!とは徳島の地に残る七不思議(あと六つは知らん)。とはいえ、あれだけ使われなかったのだ。少なからずダニエルポヤトスの戦術に対する理解度に難があったのではないかと推測する。

一方の健太さん、難しいことは求めない。つまり、割り切って石田の良さだけを活かす。それはもちろん「自身の戦術にハマる前提」があってこその話だが、逆にいえば、この素材がどうすれば自身の戦術で活きるのかを見極める力がある。帰ってきた石田を(守備面も求められる)サイドでなく、最前線で裏抜けと相手の追い回しを徹底させた起用法には舌を巻いた。その手があったか。

藤井陽也もそう。丸山祐市中谷進之介で挟んで使えば育つはずだと。この思い切りの良さ。結果育つ育つ。

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どんな素材が優位かといえば、やはり身体的ポテンシャルの高い選手。逆に、一人で違いは生み出せないが、複数人なら誰よりも輝くような選手や、ボールに触ってナンボの選手は比較的苦労する。湘南ベルマーレに移籍してしまう阿部浩之もそうだし、それこそ仙頭啓矢だって本領発揮とまではいっていない(健太Verの仕様を模索してチャレンジしてるのが仙頭の素晴らしさだが)。

その証拠に、現在レギュラーを務める多くの選手は明らかにフィジカル(速さ、強さ、高さ)に特徴を持つ。柿谷にしろ仙頭にしろ、本来テクニシャンとして名を馳せた選手たちは、むしろ〝走ること〟で生き残ってきた。

そんな歯痒さがある一方で、永井のような選手が「ストライカーとして」「健太さんなら」使ってくれると絶大なる信頼を置く理由もまた分かる。だって(アルベルと違って)難しいことはきっと求めないから。シンプルに、選手たちが最も気持ち良くプレー出来る環境を健太さんは用意する。この辺りは、風間体制期とマッシモ体制期におけるマテウス・相馬勇樹を観てきた名古屋界隈は腹落ちしやすいだろう。選手たちの成長に寄与するのは果たしてどちらか、それはまた別の議論である。

そうだ、忘れたいゴール置いとこか。もう味方だし。


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情とノーセレブレーションには期待するな東京界隈。

永井がイキイキとピッチで走り回る姿、容易に想像できる。相手にしてもきっとそれが嫌なはずだ。健太さんとアルベル、どちらの起用法が選手の魅力を引き出すのか。そう考えると、フットボールはつくづく奥が深い。

 

ちょっと見込み甘かったんと違うか

さて、これでスピードは手に入れた。あとはパワー。

もうここはレオナルド(ナウド)に祈る(一択)。ただ、万が一大当たりならこのチームバケるやも。というのも、この〝分かりやすい武器〟がなかったからこその今の順位。裏を返せば、健太さんのチームにはこの手のストライカーが要るのだと分かった前半戦。似なくていい。なのに案の定そこもマッシモそっくりな健太さん。


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日本で一番勝ち星を挙げている人が空いていれば行くでしょ!

正直にいえば、健太さん就任時に発した山口素弘GMのこのコメントにずっと違和感があった。優秀な監督なのは分かる。ただ、過去の実績はともかく、現在(いま)はどうだったのかと。Jで優勝を狙える力が果たしてあるか。直近の東京時代はどうだった。そう考えた時に、今日に至るまでの戦いぶり、この夏の補強期間の慌ただしい動きは、直球で言ってしまえば「見込みの甘さ」からきたものだとも思う。その最たるものが、繰り返しになるが〝クバの代役〟であり、健太さんにはやはり〝彼にとって使いやすい素材〟が必要だったのではないか。

ただ、だからこそこの夏の補強は悪くない。今の強化部に出来る(可能な)最大限の仕事だとも思う。

あとは健太さんにマテウスの共存方法を探ってもらうのみ。....ん?これ欲かいて永井、ナウド、マテウスのスリートップが良いのでは。....ア、アカン。「そんなスリートップは絶対上手くいかん」と東京界隈の怨念が強い。健太さん、浪漫は不要。地に足つけていきましょう。

最後になるが、あえてクラブには「二つ」要望したい。

 

ここから重要なとこです

まず一つ。長谷川健太時代のFC東京を超えよう。


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昨季のルヴァン杯準決勝を思いだして欲しい。この両者、互角だった。名古屋の何が優ったかといえばやはり〝堅守〟。東京の攻撃力をも凌ぐ力が昨季はあった。選手こそ違えど、それ以外の総合力はまさに互角。

そして今季の名古屋。昨季ほどの堅守はない(それが健太さんの取ったリスク)。ただ、そのリターンとしての対価(得点力)を得られなかったのが大きな悩みの種(それこそが昨季率いていたFC東京との大きな違い)。だからこそ獲ってきた永井謙佑。いや分かるよ。

でも意地悪な見方だけどそれでは東京と何が違うのか。

自分は、名古屋にFC東京っぽくなって欲しいわけではない。健太さんに、過去と似たようなチームを名古屋で再現して欲しいわけでもない。だってさ、もうそのチームは四年も東京の地で擦り倒したわけでしょう。同じようなことやってれば、そりゃ同じような選手が必要になるさ。失礼な言い方だけれど、その結果、天井がどこにあるのかはもう答えは出ているはずなのだ。

応援するからにはワクワクしたい(スリートップではない)。見たことのないチームが観たい(過去のスリートップ既に見た)。未来の姿を想像しときめいていたい。

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そこでもう一つ。もっと〝未来〟を提示して欲しい。

未来を想像できるなら、きっと今には未来に繋がる〝ストーリー〟がある。あくまで自分の気持ちだけれど、風間(八宏)時代にあって今ないものはそれではないだろうか。フットボールの良し悪しでなく、目先の結果でもなく、なによりあの時代に価値があったのはそこなのだと思う。まあ弱いのは罪だけど。そこは失敗だったな!

補強も含めたチーム作りから、そんな未来に繋がる何かを発信して欲しい。「俺たちは未来に向けてこういうチームを作ってるんだよ」と、もっともっと伝えようよ。

例えばこれまでの戦いぶりや今回の補強を経て、2年後(2024)に加入する榊原杏太は自身の活躍する姿を想像できるか。「児玉駿斗のような結末はもう見たくない」、多くのグランパスファミリーはきっとそう思っている。そろそろ繋いでいこう、トップとアカデミーを。ピッチ上のフットボールでも、繋いでいかないと。

それが夏の補強内容をみた、あくまで個人的な想い。

これが今の精一杯なんだとフロントの努力や苦悩も伝わるから悩ましいが。そんなこと言ってらんねーよと。

それこそ、この一〜二年は観ているこちら側もある程度は我慢して欲しいのかもしれない(それ言っちまったら元も子もないが)。実際、若い選手たちも積極的に起用したりと健太さんは種を撒いてる。そんな理想と現実の狭間でもがいてるのが今の名古屋で、それが実るまでは帰ってきた永井や、或いは名古屋に新天地を求めてくれた選手たちの意地とプライドに託すべきか。実際、永井とナウドのツートップめちゃくちゃ観たいしなあ。お金もない、(アカデミー以外の)有望株も来ないで、これまでのツケを払わざるを得ない期間なのかもしれない。この五年間のドタバタ劇の末に残った、大きなツケを。

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ただ、だとするなら今度は現在(いま)どれだけ苦しくてもクラブを支え続けている〝ファンサポーター〟をどう未来に繋いでいくかが問われる気がする。そう考えると、私のように小さな発信源であっても、今のチームの魅力を伝える努力をしていくべきなのかもしれないな。

そう、クラブに何があろうが、過去と現在で事情が異なろうが、多くのファンサポーターはずーっとこのクラブを支えてきたのだ。ずーっと見てきた。過去のこと、忘れてない。そのうえで今も必死に戦っているのだ。そういった人たちをどうやったら大切に出来るのだろうか。「なんか冷めた」「今のグランパスにはときめかない」こういうコメント最近よく見る。危機感覚えてる。

と、理想と現実の狭間でこのブログも揺れ動く。

ポジティブでいるのって難しい。ただ、悲観的でも、同時に楽観的でいることも時には必要かもしれない。誰だって理想の中で生きたい。でも、押し寄せてくる現実に対してどう折り合いをつけていくかも腕の見せ所だ。

あのとき永井が帰ってきてくれたから、ベテラン勢の意地と頑張りがあったからこそ今がある。そんな風に、数年後このシーズンを語れる日がきてほしい。そして、その証人に我々ファンサポーターがならないといけない。繋げていきましょう、皆で未来へ(文句言いながら)。

つーことで川崎。言っとくが俺らここから本気だす!

なぜ奥川が、伊藤洋輝がいない!

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と、そんな声がチラホラと聞こえたメンバー発表。

ワールドカップアジア最終予選の対オーストラリア戦が間近に迫っている。なぜ〝日本代表〟なのに、今活躍する選手たちを呼ばないのか。代表は、最高の選手が集ってこその代表だろうが。いや、仰る通りである。

今回は、そんな代表にまつわる話。

尚、これから書く内容はあくまで私個人の感想•意見であることを予めお断りし、ご容赦いただきたい。

 

「なぜコイツを呼ばない」の気持ちがわかる

改めて、日本代表とはどうあるべきかと考えてしまう。

そもそも、前提として代表の活動はブツ切れが当然で、いわゆる〝継続性〟が観ている側に伝わりづらい。集まって、数日の練習で試合を行い、解散する。そこから数ヶ月の期間が空き、また集まって試合だ。

だから、私たちはメンバー発表の度に「え、代表の試合あるんだ」と驚き、常に〝今〟だけを見てしまう。過去や未来など気にするものか。だって〝今〟パッと集まっては解散する即席チーム。その瞬間にしか興味はない。

応援するクラブの選手が絶好調ならマジで呼べと声高に叫び、海外組が結果をだせば選出は当然だと認識する。

わかる。或いは、関心が低いほどその傾向は強いかも。

〝代表=今、最高の選手たちが集う場〟だと定義すれば、都度その前提で厳しい目が向けられるのは当然だ。

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正直に告白すると、私もまさにそのタイプで、もっといえば年々代表への関心が薄れていった一人である。だから、分かるのだ。分かるとは、これまでに書いた「忘れた頃に代表発表がやってきて、贔屓のクラブが蚊帳の外だと『ふざけんな』と唾を吐く」その気持ちが分かる。

また、悲しいかなこの傾向は(おそらく)サッカーファンですら顕著なもので、いわゆる〝代表不人気〟が叫ばれて久しい。その原因は、今回の趣旨とは逸れるので触れないでおくが、しかし、このブログは「そんな人間が代表に興味を取り戻しつつある理由」でもある。

きっかけは、このブログで行った2本の対談である。

migiright8.hatenablog.com

migiright8.hatenablog.com

長年、代表の活動を密着取材するサッカーライター、飯尾篤史氏の出演が決まったものの、悲しいかな聞き手側の私にそれだけのリテラシーがない。これはマズイと、半ば義務感で全試合みることを決意した。つまり、私には〝たまたま〟きっかけがあったのだ。それがなければ、ずっと外野から野次を飛ばしていたことだろう。

ただ、理由はともあれ全(8)試合を観た。

 

そして理解できた、そこに流れる〝文脈〟

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初戦のオマーン戦でまさかの敗戦。つづく中国戦には勝利したものの、3戦目のサウジアラビア戦で柴崎岳のバックパスをかっさられショッキングな敗戦を喫した。

1勝2敗。4戦目のオーストラリアとはこの時点で勝点差6。敗れれば、その差は9。まさに、絶体絶命の危機。

そう、あの日のオーストラリア戦も、大一番だった。

追い込まれた原因はいくつかある。当たり前となった海外組、故に過酷な日程。対する中東勢は国内組が大半で、1ヶ月のキャンプを組む熱の入れよう。そこに拍車をかけたのは、〝だからこそ〟自主性にこだわった森保一監督の、型がはっきりしないフットボールだった。

対するオーストラリアはどうか。海外組が多数で過酷な日程も同様。但し、違いが鮮明だったのは、〝自分たちの明確なフットボール〟がそこにあったことだ。固定された主力メンバーたちが、(今となっては)慣れ親しんだボール保持のスタイルで試合をコントロールする。プレーに迷いはなく、保持がベースにある為、ある程度は思い通りに試合も運ぶ。これは、まさに日本のサッカーファンが代表に、いや、森保監督に求めたものだった。

なかでもオーストラリアのキモは中盤にあるといえよう。アーバイン、フルスティッチ、ロギッチの3枚をどう抑える。サウジアラビア戦でも中盤の構成を試行錯誤していた日本は、ここで思いきった策に出る。まさに、最終予選における最大のターニングポイントがここだ。

4-3-3へのシステム変更。守田英正と田中碧の抜擢。

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この大博打に打ち勝った日本は、ここから破竹の勢いで5連勝。試合を重ねる度に新システムの練度は上がり、新戦力として三笘薫や板倉滉、谷口彰悟が台頭した。

そう、パッと集まっては解散する代表チームにも、この最終予選を通して間違いなく〝文脈〟が存在する。

苦しみ抜き、しかし、だからこそ進むべき道を見つけたのだ。集い、そして即試合の環境でも勝てるメンバー構成。相手によって振舞いをかえ、ボールを保持し、システムの穴を類まれな強度でカバーできる選手たち。とりわけボール保持と守備強度を同時に担保したスリーセンターの採用、そのキャスティングは、振り返れば東京オリンピックからの課題すら解決したようだった。

たしかに寄せ集め。しかし〝チーム〟なのだと思う。

だからこそ、森保監督は脈絡のない選手選考はしてこなかった。目指したのは、過酷な条件下でもアジア最終予選を勝ち抜けるチーム作り。日本中の選手たちは、そのための候補だ。8試合は〝点〟ではなく〝線〟。故に、その文脈上にいない選手の代表入りは容易ではない。

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特に代表では、誰かに支障があったり、誰かがパフォーマンスを落としたりしないと、出番が回ってこないし、チャンスをもらったときにチームを勝たせたり、良いパフォーマンスを見せないと、ポジションを確保できない

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監督って基本的に物事が順調に運ぶという前提で逆算はしないんです。想定外のアクシデントが起こったときに、誰がそこでチームに対して誠実に対応できるか、あるいは誰にチームを鼓舞する力があって、ポジティブな影響力を及ぼせるかということをまずは考える。だから、実際に使うかどうかは別にして、オン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチのあらゆるシチュエーションでチームにとってプラスになれる選手を、自分の手元に置いておきたいんです

例えば、今回のメンバーになぜ鈴木優磨が入らないのか、との意見もあった。監督の好みではないのかと。

ただ、この大一番で、しかも厳しいアウェーの戦いで、これまで招集してこなかった選手をあえて呼ぶメリットも見出しづらい。一方で、大迫勇也の負傷離脱に伴い、代表初招集となる林大地に白羽の矢がたったのは、おそらく東京オリンピックでの彼のパフォーマンスに加え、その人間性(貢献度)への信頼もあってのことだろう。

 

日本と不思議な巡り合わせにあるオーストラリア

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では、日本に敗戦後のオーストラリアはどうだろう。

先日、畏れ多くも以下の対談をさせて頂いた。

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お相手は誰もがご存じ、らいかーると氏。最初は(その格の違いに)スポナビさんの嫌がらせかと思ったが、本気と書いてマジだったので腹を括った。是非ご一読を。

さて、そのオーストラリア。初戦から3連勝と順調に勝点を積み上げたが、日本戦以降はまさかの1勝3分。当時、勝ち点6差あった日本との差も、いまや勝ち点3差で日本の後塵を拝する始末。誤算だったのが中国戦のドロー。直近のオマーン戦でも、終了間際にPKを献上し痛恨のドロー。ここ数試合の悪い流れが止まらない状況だ。国内では、代表への批判の声も高まっているという。


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順風満帆だったはずだ。しかし、彼らは仕留め損ねた。

予選敗退の窮地に立たされていた日本を、結果的に目覚めさせたのは、あの日のオーストラリアだった。

そこからの日本は前述の通りである。最終予選を勝ち抜くための糸口を見つけた日本は、今日に至るまでまさに一歩ずつ歩みを進めた。ぎりぎりの戦い、しかし着実に勝点3を積み上げる。一方のオーストラリア。らいかーると氏の言葉を借りれば、彼らはその後〝運〟にも見放された。なんとも不思議なものだ。あの試合を境に、たしかに何かが変わり、両者の立場は入れ替わったのだ。

そして、今度は日本がオーストラリアの息の根を止めるべく、彼らの本拠地に乗り込み、そして決戦に臨む。

一度も勝ったことのない地で、日本は仕留めきれるか。

 

これがアジア最終予選の醍醐味。決戦を見逃すな

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最終予選を通じて、日本代表が〝チーム〟を作ってきた過程(文脈)と同時に、不思議にも最終予選ならではのストーリーも生まれてきたことに気づくだろうか。

今だけをみると、たしかに代表の活動は淡白なものだ。

しかし、だ。その〝今〟の見方を変えたらどうだろう。

4ヶ月にも及ぶ長丁場で用意された場はたった10試合。ただ、その10試合の中に各チームの様々な文脈が存在し、それらがクロスオーバーすることで、最終予選自体にも不思議な文脈が生まれる。全ては、繋がっている。

これが、最終予選、最大の醍醐味なのだと改めて思う。

今回の決戦で、日本が勝点を拾って帰ることができれば、7大会連続のワールドカップ出場をほぼ手中に納めるだろう。但し、もし破れることがあれば、またもやオーストラリアと順位は入れ替わり、日本が奈落の底に突き落とされる可能性もある。だから〝大一番〟なのだ。

最後の最後まで、日本とオーストラリアは見えない糸で結ばれるように、互いの命運を握りあっている。

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対談で、らいかーると氏はこう話していた。

日本も、オーストラリアも、自分たちのフットボールにフォーカスする様が似ているから面白い、と。

一方は、自分たちが信じた道を突き進み、もう一方は、出遅れながらもレールを見つけた。では、今回はその練度が試される試合なのか。しかし、互いに辞退者が続出。だからこそ、いま何が必要か。何が勝敗を分ける。最後は選手層、つまり〝育成〟の名の下にこれまで築きあげた国としての底力が試されるのではないか。

これぞまさしく代表の試合。本物の、国と国の戦いだ。

この戦いを勝ち抜いた者だけが、ワールドカップに向けた〝新たなチーム作り〟の権利を手に入れる。アジアではなく、世界の猛者たちに勝つためのチーム作りがこの先に待っているだろう。そのベースとなるのは、もちろん今戦うアジア最終予選にある。新たに日本代表へ加わるのは誰だ。奥川雅也か、伊藤洋輝か、それとも川辺駿か。ワールドカップを楽しむために〝今〟を見逃すな。

そこにあるものは、未来を知るための手がかり。

そして、過去から紡いできた、今しかないドラマだ。

サガン鳥栖「過小評価」は妥当か

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佐藤寿人も、そして中村憲剛も注目するクラブ。

名古屋グランパスが次節対戦する相手、サガン鳥栖フットボールが界隈で評判だ。まだ観たことがない人、それは損といえる。おそらく初見なら度肝を抜かれるだろう。正直にいって、世間の注目度は低い(その証拠に、鳥栖に関する記事がない)。不祥事に始まり、選手の大量離脱。シーズン前の評判が散々なのも仕方なかった。

しかし、蓋を開ければ今季の鳥栖もやはり面白い。

では、何が面白いのか。その理由は、週末に控える名古屋とのマッチプレビューを通して紐解いていきたい。

 

鳥栖のビルドアップにどう立ち向かうか

まず、なにより注目したいのが鳥栖陣地での攻防だ。

鳥栖のビルドアップにどう対峙するか。この点は、今季どの対戦相手にとっても重要なテーマとなる。

カギとなるのは、彼らが自陣で作る『6+2』の陣形。

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まず『6』。これは、対戦相手のプレッシングに対峙する鳥栖の面々を指している。ゴールキーパー朴一圭に始まり、スリーバックの中央を務めるファンソッコ、左右のストッパーである島川俊郎ジエゴ、そして両ボランチの福田晃斗と小泉慶。彼らのミッションは、ボールを動かすことで相手のプレスに〝ズレ〟を生み出すことだ。ちなみに、さらっと朴一圭の名を加えたが、彼は従来イメージする〝最後尾の逃げ道〟ではない。相手のプレス枚数によって彼が最終ラインの〝列〟に加わり、鳥栖のビルドアップの形は如何様にも変化する。

その集団に加勢するのが、『+2』にあたる両シャドー、菊地泰智と堀米勇輝。前述の6枚が相手のプレスを揺さぶり、そこで生まれた盤面の〝スペース〟にひっそりと侵入する。つまり、彼らがビルドアップの〝出口役〟だ。この2枚へのアプローチが遅れたら最後、彼らを起点に自陣からの脱出を図るのが鳥栖の狙いである。

よって、今対戦でまず注目したいのが名古屋の出方だ。

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ビルドアップを試みる鳥栖の選手たちに、果たしてどう対峙するか。前から捕まえるか、或いは、分が悪いと諦めて撤退するか。仮に前から行くのなら、誰が誰を牽制し、そして捕まえにいくか注目したい。盤面の構図さえ理解出来れば、そのプレスがハマっているか、逆にどこから水が漏れているか、一目瞭然で理解出来るはずだ。

特に、鳥栖の『+2』にあたる菊地と堀米の監視役。このタスクを誰が担うかが、一つポイントになるだろう。

彼らのポジショニングは秀逸だ。スペースを見つけそこに潜り込むだけでなく、チームとして打開の糸口を探る際は、あえてサイドの低い位置に降りることもある。

この意図は、鳥栖のビルドアップの構造で理解できる。大きな特徴が、朴一圭を最終ラインに含めることで、両ストッパー(ジエゴや島川)が外に張り出すこと。彼らがボールを持てば、相手(特に対面の選手)はオープンな状況を避けるため、当然ながらプレスをかけたい。ここで、サポートに入る鳥栖ボランチ(小泉や福田)に加え、もう一つ相手が見るべき標的(堀米や菊地)を作ることで、トライアングルを形成するのだ。彼らのコンビネーションで局面を打開することもあれば、その立ち位置によって相手の足を止め、ストッパーが自由にパスを出したりボールを持ち運ぶこともある。ここは重要なポイントだが、結果として鳥栖の両ストッパーに時間の猶予を与えた時、試合は鳥栖のペースとなる。

では、いっそ捨て身で人数をかけボール奪取を狙うか。

ただ、憎いことに鳥栖にはもう一つ武器があるのだ。それが、両翼に位置する飯野七聖と岩崎悠人。本来、彼らは〝ウイングバック(守備になれば最終ラインに戻る役割)〟だが、ひとたび攻撃に転じれば、〝ウイング〟となり、むしろ最前線でボールを待ち構える役目を担う。

データは嘘をつかない、を地で行くサガン鳥栖

鳥栖がデザインするビルドアップは実に巧妙で、これほど自陣に人数をかけても、相手ゴールを狙える勝算がある。その根拠が、彼ら二人だ。つまり、自陣の攻防から抜け出しさえすれば、あとは彼らが快速を飛ばし、一気に相手を置き去りにすればいい。誘い込み、出し抜いたら一気に突き放す。これが鳥栖のビルドアップである。

よって、4バックで対峙する名古屋とすれば、この両翼にはもちろん吉田豊宮原和也で対抗したい。両センターバック鳥栖のワントップを監視するとして、ゴールキーパーのランゲラックを除外すると。鳥栖のビルドアップに対峙出来るのは残った6枚。だからこそ、余ってしまう鳥栖の『+2』をどうするかが問題なのだ。

では、ここは潔く撤退!撤退せよ!これでどうだ。

 

鳥栖のランダムなサイドアタックをどう止めるか

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昨年までの名古屋よ再び、とした方が伝わるだろうか。

つまり、ある程度は鳥栖に(名古屋陣地に)押し込まれる状況を受け入れたとする。その場合、鳥栖の攻撃は当然ながら遅攻となるが、では、それが彼らにとって不得手なシチュエーションかといえば、実はそうでもない。

今季の鳥栖、もう一つの驚きが〝サイドアタック〟だ。

相手陣地で鳥栖が狙うのは、中央よりむしろサイドの局面となる。ベースは3枚、右ならウインガーの飯野、シャドーの菊地、そしてボランチの福田。左も同様の構造で、岩崎、堀米、小泉でトライアングルを形成する。彼らが形を変えながらボールを動かし、いわゆる相手ペナルティエリアの角(ポケット、でも良い)を虎視眈々と狙う。相手最終ラインに歪み(スペース)が生まれれば、ウインガーならダイアゴナル(斜め)に、ボランチなら後方からスプリントをかける。なにより厄介なのは、突撃してくる選手が〝ランダム〟であることだ。

そこに拍車をかけるのが、後方に控える両ストッパー。

状況次第で、同サイドのストッパー(例えば、左サイドならジエゴ)もこの輪に加わり、トライアングルからダイヤモンドに変形するのだ。つまり、ここでも『+1』が発生する。その場合、崩しの局面に大外からストッパーがスプリントをかけてくる手段も加わることとなる。

当然それだけ人数をかければ即時奪回の準備も万全。相手がボールを奪えば瞬く間にプレスの波が襲うだろう。

この発想は、ある意味で前半のパートと同様だ。

今季の鳥栖は、圧倒的な〝個〟が存在しない。しかし、そのスカッドを逆手に取るように、どの局面でも〝数的優位〟を生み出す緻密な設計が施されている。また、全てのポジションには明確なタスクがあり、それをこなせる能力(その能力を活かすためのタスク、ともいえる)を備えた選手たちでチームは構成される。

例えば、飯野や岩崎はその典型だ。度を超えたハードなタスクは彼らだからこそこなせるし、見方を変えれば、彼らの武器をチームとして見事に取り込んでいる。彼らのスプリント力がどうすれば活きるか。当然ながら、走るスペースを意図して作ることだ。或いは、チームが苦しいとき、岩崎がサイドから力づくでボールを前進させる。遅攻となれば、〝新たな44番〟堀米が躍動する。チームにリズムを、時に変化を加えながら、ゴール前では豊富なアイデアを発揮し、飯野や岩崎を〝斜め〟にゴールへ向かわせる。爆発的なスピード、加速力をもって。

その点、鳥栖は何も変わらない。継続、がある。

今いる選手たちの個性を組込み、だからこそデザインは明らかにリニューアルしている。しかし、基盤としてあるのは〝圧倒的な運動量〟。限られた戦力でどう強者に立ち向かう。走るのだ。彼らの走りには、意味がある。

その姿勢こそ、常に変わらない鳥栖らしさなのだろう。

 

サイドの攻防を制するのはどちらだ

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さて、サイドをどちらが制するか。ここは注目だ。

まずは名古屋。開幕戦の相手となったヴィッセル神戸は、ウインガータイプの選手が皆無だった。したがって、名古屋の武器である両ウインガーマテウスと相馬勇紀は高い位置に張り出し、今季のテーマである〝ファストブレイク〟を何度も繰り出した。

守備の仕方を見てもらえればわかると思うんですけど、相馬とマテちゃんの位置が去年よりも高いと思いますし、サイドバックの横まで降りて6バックのような形で守ることもほとんどなかったですから。その意味で、出て行くという作業は彼らもすごく楽になると思いますし、その出て行く距離が短くなったぶん、ファストブレイクは鋭くなっていくんじゃないかなと思います

(引用:2/21 中谷進之介レーニング後コメント)

快速サイドアタッカーに高い位置を取らせる利点。これは、名古屋も鳥栖も同様だ。つまり〝速く攻めたいなら〟低い位置より高い位置でスタートさせた方が、相手を置き去りにできる可能性は高い。また、奪った際(鳥栖の場合は〝ボールを運べた際〟)に仕掛けの準備が出来ていれば、〝高い位置で〟〝且つスタートダッシュも決められる〟わけで、相手より速くゴールに到達できるのは言うまでもない。昨年の名古屋は、目指している理想に対し、どうにもこの点で矛盾を孕んでいた印象だ。

ただ、問題はこれを鳥栖相手に継続出来るのか。

一方の鳥栖。なんの因果か、彼らもまた、名古屋のようなチームを相手にするのは今季初。つまり、サイドアタッカーを配備した相手と対峙した経験がない。攻撃時に取る彼らのリスクマネジメントは、リベロのファンソッコと、ボールサイドの逆側に位置するストッパーを1枚残し、同じく逆側のボランチが中央でバランスを取る3枚残し。では、そこに同数で、酒井宣福、仙頭啓矢、そして名古屋のウインガーが残っていたらどうだろうか。

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ここからは、個人的見解を述べていきたい。

名古屋が試合のイニシアチブを取るには、可能な限り鳥栖陣地寄り(ミドルサードまで)でプレーすべきだと考える。いかに鳥栖の選手たちへ圧力をかけ、〝思考する時間〟を奪えるか。これがキモではないだろうか。

改めて、なぜ彼らが自陣で知恵と労力を惜しまないか考える必要がある。馬力のある選手をサイドに置く意味は。つまり〝相手陣地〟にボールを運びたいのだ。それさえ果たせれば、彼らにはゴールを奪う術も、ボールを取り返す術もある。彼らがプレーしたいエリアは、結局のところ〝相手陣地〟であることを念頭に置くべきだ。よって、名古屋はプレス時に発生する個々のタスクを明確にする必要がある。鳥栖に気持ちよくプレーさせてはならないし、息つく暇を与えるなどもってのほか。ボールを運びたいチームが、最も嫌がることはなにか。〝奪われそうだ〟そんな圧を感じさせることではないか。それが、結局のところ彼らの体力、そして自信をも奪う。

この負のサイクルを、過去に名古屋も味わったはずだ。

 

継続、しかし〝進化〟の過程にある両チーム

昨年の鳥栖は、嫌らしいチームだった。

一見すると、その派手な攻撃が目立ってはいたものの、それ以上に彼らのベースは〝奪う〟ことにあり、相手によってプレッシングの構造に変更を加えるのも日常茶飯事。非常にしたたかなチーム、そんな印象だった。

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ただ、今季の彼らは違う。より自分たちにフォーカスしたチームだと言っていい。よって、彼らは〝奪う〟こと以上に〝運ぶ〟ことに注力している印象を受ける。

前節の湘南ベルマーレ戦で起きたミスも、動画だけみれば朴一圭の致命的なミスと糾弾されて終わりだろう。

ただ、試合展開を振り返れば、後半からプレッシングを整備した湘南に手を焼いていたのがなによりの問題で、故に、見方を変えれば苦し紛れにバックパスをする状況が招いたミスだったと言い換えることも可能なのだ。

前半のようにうまくいかなくなったこと。そこはあまり悲観していなくて、おそらくまだメンタリティーのところが慣れていない。われわれとの1点差を取り返そうと、湘南さんも非常にアグレッシブに来ました。ただ、われわれが少し受け身になったなと感じています。そこのメンタリティーのところをしっかり整理してあげたいなと思っています

(引用:2/26 湘南戦後 川井健太監督会見)

選手達が相手の圧力に屈してしまう。試合展開によって個々のパフォーマンスやメンタルにバラツキが生じる。

今季の鳥栖を、〝自分たちにフォーカスしたチームだ〟と評したのは、なんだかこの現象に、いつかの名古屋の面影や懐かしさを感じるからかもしれない。余計なお世話だが、鳥栖サポーターの皆さんには、是非この〝積み上げる過程〟を楽しんで欲しい。選手たちが四苦八苦しながら何かを作り上げる様は、それだけで最高だ。

まああの日の名古屋はピッチ上に地図すらなかったが。

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さて、我々名古屋グランパスは言うまでもなく〝奪う〟チームだ。ただ、新たな指揮官、長谷川健太監督は、昨年のマッシモフィッカデンティ以上に強気。奪ってからどう攻めるかにフォーカスし、人数をかけることも厭わない。僅かなようで、その小さくない変化が、面白い。

見ている人が熱い気持ちになるような、熱いサッカーをしよう

(引用:サッカーダイジェスト2022年4/1号)

ただ、次節のサガン鳥栖戦でこそ彼の真価が問われる。

〝奪うこと〟そして〝ファストブレイク〟。彼がテーマとする二本の柱は、まさにこの試合で試されることとなるだろう。鳥栖のようなクラブを叩き潰してこそ、長谷川健太ここにあり、と改めて証明できるはずだ。

両者、新たな監督にバトンは渡った。その進化をみよ。

果たして、王者に死角はあるか

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「『終わりの始まり』という見方はどうでしょうか」

予想だにしない質問に、思考が巡る。彼らを止めることばかり考えていたから、その発想は皆無だった。

本日のエルゴラに掲載された、J開幕企画の対談後記を今回は書きたい。と言っても、触れたいのはただ一つ。唯一、悔やんだというのか、翌日になっても気がつくと思い出し、考え込んでしまったこの問いについてだ。

川崎フロンターレが衰えることは、果たしてあるのか。

先に断っておくと、質問者に悪意などもちろんない。世界各国どの強豪クラブにも周期があるもので、あくまで、そういった見方は出来るのか、との問いかけだ。

本編ではこの話題に付随した質問、そして私の回答がピックアップされているので是非ご一読頂きたい。ちなみに、私は〝他クラブのレベルアップ〟に言及した(尚、推しの名古屋グランパスは、昨季2試合で7失点したが、この場面では記憶から抹消しているので問題ない)。

さて、こう答えた根拠からだ。例えば昨シーズンの第35節、サガン鳥栖戦。前半で3発を叩き込む鳥栖の姿。


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川崎のボール保持、または非保持に対し、真っ向から対峙したのがこの日の鳥栖。攻守に川崎のウィークポイントを徹底的に突いた戦いで試合を制した。そう、〝真っ向から〟向かってきた相手に、川崎がやられたのだ。

このインパクト、残像が脳裏にこびりつき、私の思考は一直線。本編でも、鳥栖を盾にこの主張を高らかに押し通す。川崎云々じゃない、周りが強くなったのだ!

ただ、一夜明けこの答えが妙に引っかかるようになる。

本当にそれだけか。いや厳密にいえば決してその答えも間違いではなかったはず。しかし、果たしてそれが最も的を得た回答だったのか自信がない。ただ名古屋が7失点....そもそもあれは現実だったのかそこも自信がない。

一つだけ、引っかかる部分があった。オフに遡ろう。

web.gekisaka.jp

今オフ、最も注目を集めたディールといえば、コンサドーレ札幌チャナティップが川崎へ移籍したことだろう。なんとその額4億円強。プレー面以外にも価値を見出してのことだろうが、その移籍金には誰もが驚いた。

ただ、当時この移籍金を知った際、感想は別にあった。

川崎は、宇佐美貴史獲得に本気だったのではないか。

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hochi.news

宇佐美といえば、ガンバ大阪においてアンタッチャブルな存在だ。他クラブが手を出すなど、おそらく誰も考えていなかったはずである。では何故、川崎が宇佐美へ。

近年の川崎において、圧倒的な破壊力を生みだすことに寄与したラストピースといえば、やはり三笘薫だろう。大外で幅を、そして仕掛けることで深さを生みだせる彼の能力は稀有なものだった。彼がそこにいるだけで、味方は時間とスペースを得ることができたのだから。中央だけ、パスワークだけ......そんな川崎への印象は、彼の加入とともに吹き飛んだ。気づけば対戦相手にとって最大の難題は、「彼をどう止めるか」になったのだ。

そんな彼が去り、代わりになり得る才能が国内に果たしているだろうか。......いや、いたのだ。昨季、彼らの目の前で、しかも一人で、川崎守備陣を破壊した男が。


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大金を叩いてでも、獲るだけの価値があったのでは。

そうまでしてでも、獲る必要に迫られていたのでは。

当時の三笘薫も十分に評価されていたはずだ。但し、川崎のフットボールを〝構造〟から考えた際、彼が果たす役割・価値を、我々フットボールファンは正しく評価できていたか。実は〝過小評価〟だった、その可能性は。

とまあ、考えだすと妄想は捗るわけだが、結果としてこのオファーは失敗に終わる。また、その代わりがチャナティップだったかは知る由もない。とはいえ、先日の富士フイルムスーパーカップ(以下、スーパーカップと略)を観る限り、前述した文脈は全くの見当違いとも言い切れない。誰が幅を取り、仕掛け、深さを作るのか。最後までその答えは見出せず、開幕前に不安を残した。

これは、本編でささゆか氏が指摘した『ブライトンgood job!セルティックもgood job!ていうかポステコがgood job!抜けその水(色)全部抜け』の流れ。横浜はバチ当たって大然抜かれたけどな。他力本願乙。

おっとつい本音がでてしまった。スーパーカップの話題だ。この試合では、なんと別の課題も露呈している。

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おそらく、川崎サポーターは以前から危惧していただろう。田中碧、そして旗手玲央をも失い、中盤で形成するトライアングルのバランスは変わった。パワーとスピード、つまり中盤でのダイナミズムが欠けていたのだ。

相手を剥がしたり、或いは、相手の最終ラインに仕掛ける(裏を狙う)選手がいなかった。また、幅もとれていないことから、窮屈な中でのプレーに終始した印象だ。

中盤の構成とバランス。誰と誰をどう使いどう組み合わせるのか。この試行錯誤もまた注目すべき点だろう。

そしてもう一つ、ジェジエウの抜けた穴も挙げられる。

今オフ、川崎は〝あえて〟このポジションの補強を敢行せず。(おそらく)夏頃まで戻ることのないジェジエウを待つ判断を下した。空中戦もさることながら、谷口彰悟とジェジエウがなにより厄介なのは、敵陣地でゲームを展開する際の対人能力、また守備範囲の広さにある。つまり、敵を押し込む肝の一つが彼らであった。国内とACL、この二足の草鞋を車屋や山村で耐え凌げるか。

よし....ちゃんと考えれば不安要素が三つもある....!

さあ他クラブよチャンスだ!と目を向ける。なんとまあ昨季トップ5の内、残り4クラブもこぞってセンターバック事情が非常に怪しい。さて名古屋はと....丸山が怪我明けでミンテも木本も移籍。残るはチ....チアゴだな。乙。

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この5年、リーグを牽引したのは間違いなく川崎だ。彼らが〝圧倒的〟だからこそ、リーグには明らかな変化が生まれつつある。川崎に追いつけ追い越せと、各クラブがアタッキングフットボールへと舵を切り始めたのだ。

とはいえ、川崎だって次こそは3連覇の夢を阻まれまいと、全力で挑戦者たちを潰しにかかるに違いない。

これまで挙げた通り、川崎にも死角はある。ゆえに、3連覇への道のりはきっと険しいはずだ。ただ、だからこそ面白いともいえる。なぜなら、〝圧倒的〟ではない状況が、川崎をさらなる高みへと押し上げる可能性もあるからだ。〝一強〟など、互いにつまらないじゃないか。

王者を止められるか。それとも、やはり圧倒的か。

さあ今宵、新しい時代の幕が開ける。

 

おっと、肝心の本編はコンビニまたは電子版にて....!

続・フル代表も全部聞いた

付き合わせて報酬なし。これさすがに不味かったか。

migiright8.hatenablog.com

まさかあれほど反響があろうとは。これがプロの力なのか、飯尾篤史氏の東京五輪総括は大好評だった。なぜ妻に監修をさせなかった。彼女ならきっとnoteを利用しあの記事を500円で設定しただろう。お前は何のためにやっているのか、ああ妻の声が聞こえる(気がする)。そもそもこんな出来の悪い旦那に付き合う飯尾篤史とは何者なのか。妻にとっては目の前の親父も(私です)一流ライターも(飯尾さんです)たぶん同じに見えている。

さて、今回のお題はワールドカップアジア最終予選

巷では、やれ関心が薄れただ面白くないだと言われたい放題。代表に魅力がないのか見るべきコンテンツが飽和気味なのか真相は不明である。かくいう私もリアタイで追えてるかといえば正直後回しだったのは認めます。

テレビを観てもTwitterを開いても目に飛び込むのは森保無能論。まあ確かに、フットボールがつまらない、しかも結果までついてこなけりゃ叩かれるのも仕方ない。

そう思いつつ、私は改めて最終予選を全て見直した。わざわざ裏解説版(憲剛と岩政先生)も確認し、代表記事もくまなくチェックだ。トルシエがすげえ怒ってて笑う。気づけばフラットスリーがオシム枠に昇進した。

number.bunshun.jp

そんな逆風吹き荒れる日本代表だが、いや面白かった。

ピッチ上の良し悪しや、もっといえばそもそものコンセプトの有り無し含め賛否両論そりゃあるだろう。とはいえ(全く順風満帆ではないものの)やろうとしてることも、それが全然上手くいかないが故の苦悩も、その紆余曲折っぷりも、『まあそう変わるわな』って妙な納得感も、なんか全部ストーリーとして成立してて凄い。

そのうえで今回久しぶりに飯尾氏と対談して分かった。代表になると『推し(J)にしか興味ない』って人多いけど(私もです)、これJ(Jリーグです)の変遷とめちゃくちゃ関係あるじゃん。結果としてそうなってる。

ん、意味がわからない......?では対談を是非読んで欲しい。我々のやり取りはあくまで森保監督のコンセプトを前提とし、そのうえで実際のピッチ上で起きている現象をどう解釈するか〝我々なりに〟まとめたものである。

そして気がついたのだ。何故〝自主性〟なるコンセプトに頑なにこだわるのか。なぜ代名詞ともいえる3-4-2-1の安パイでいかないのか。その背景として森保一に流れる文脈とは。あくまで仮説、しかし私はスッキリした。

妻よこっちを見るな。今回も無料で大盤振る舞いだ。

 

まずは最終予選6試合を通した感想を聞いてみる

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みぎ(以下、省略)森保ジャパンはアジア最終予選6試合を戦って4勝2敗の2位ですけど、飯尾さんはここまでをどう見ていますか?

飯尾(以下、省略)こんなに難しい条件の最終予選があっただろうか、というくらい難しいですよね。コロナ禍で過密日程となってしまい、親善試合がまったく組めないし、ようやく組めたウズベキスタン戦(1月20日の予定だった)もなくなってしまった。選手全員が揃うのは試合のわずか2日前なのに、コロナ対策のためにホテルで選手たちが自由にコミュニケーションを取れないとか、欧州組と国内組のフロアを別にして隔離するとか。それ以前にも、2020年はほぼ1年間、代表活動ができなかったり、21年6月のジャマイカ戦が中止になったり。

21年9月の『Number』で、飯尾さんが森保さんと岡田(武史)さんの対談を担当されていたじゃないですか。あの内容がとても興味深くて。森保さんが「3日間あるとすれば、初日はほぼリカバリー。2日目に攻撃を少しトレーニングし、ミーティングも少し入れて、試合前日に守備の確認をすることが多いんですけど、今回のオマーン戦(21年9月2日のホームゲーム)では、全員で練習できたのが試合前日の1時間だけでした」と。そりゃ、セットプレーの練習をする時間なんてないわな、と。

2日間と言っても、ピッチで練習できるのは試合前々日に1時間30分くらい、前日は1時間と決められている。練習内容は攻撃面で2ポイント、守備面で2ポイントくらいのものですよ。

あの対談では、森保さんがオマーン戦で難しかったことを何点か挙げていて。1つ目は欧州組が夏場に日本に戻ってくる過酷さ。2つ目は移籍問題で揺れていて、なかなか頭を切り替えられない選手がいたり、招集自体を見送らなければならない選手もいたと。

後者は冨安健洋のことですね。アーセナル移籍の大詰めで、現地でメディカルチェックを受けてサインしないといけなくて、オマーン戦への招集を見送った。これもコロナ禍の影響です。というのも、試合の3日前までに帰国して、PCR検査で陰性でなければ試合に出られない条件なので。オマーン戦が9月2日で、8月31日がマーケットの最終日でしたから。

さらに3つ目がヨーロッパのプレシーズンで、選手たちは自チームの戦術を頭と体に詰め込んでいる時期だから、代表に来てパッと切り替えられなかったと。でも、選手がどんなに疲れていても、限られた時間でもトレーニングしないと、試合に向けた画がハッキリしないんだなと痛感した、という風に反省されていて。

森保さんが甘かったわけですけど、ただ一方で、それって代表監督ひとりの責任なのかなと。コロナ禍という特殊な状況ではあるけれど、9月頭が最終予選の開幕で、その初戦に敗れるという経験を、ハリルさん(ハリルホジッチ監督)指揮下の前回のアジア最終予選でも味わっているわけじゃないですか。あの時、なぜUAEに敗れたのか。森保さんが〝失敗した〟と感じたまさに同じことを、前回も犯している可能性はあるわけで、それがなぜフィードバックされなかったのか。日本代表はいったい何度W杯予選を経験しているんですか、という話。

 森保さんは選手としてW杯予選を戦ったけれど、時代もレギュレーションも大きく違う。技術委員長のソリさん(反町康治)はW杯予選を経験するのは初めて。反町さんの前の技術委員長はセキさん(関塚隆)で、その前が西野(朗)さん。その前がシモさん(霜田正浩)、その前が原(博実)さん、その前が小野(剛)さん……って、途中で派閥が変わっているから、「これ、よろしくお願いします」と引き継がれない。いや、派閥は置いておいても、情報がしっかり引き継がれていないと思います。これまでW杯6回出場したけれど、どれだけの財産が日本サッカー協会に残っているのか……。

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対談の中で岡田さんも「代表監督を退任するとヒアリングを受けるんだけど、どんなことを考えてどうしたという記録を協会に残していないんだよ。貴重な経験が日本サッカーの財産になっていない」と嘆いていました。

そう。だから今回のコロナ禍における代表活動のノウハウも、会長や技術委員長が3代先になったら、何も残ってない可能性がありますね……って話が大きく逸れちゃいましたけど(笑)。話を戻すと、オマーンとの初戦を落としたことでチーム全体が精神的に大きなダメージを負ったのは間違いなくて、いきなり追い込まれてしまった。

 16年にUAEとの初戦を落としたハリルさんのとき、チーム立て直しのきっかけになったのは、11月に組まれたオマーンとの親善試合でした。岡崎慎司本田圭佑香川真司に代えて大迫勇也清武弘嗣久保裕也をスタメンに抜擢して好感触を得ると、彼らをそのまま4日後のサウジアラビア戦に起用して勝利した。でも、今回は親善試合を組む余裕がないからテストもできない。それでサウジアラビアにも敗れて1勝2敗になってしまうんだけど、そこからよく4勝2敗まで持ち直したなって。

では、ここまでの6試合はまずまずだと。

いや、もちろん、内容面はもう少しなんとかならないかな、とは思っていますよ(苦笑)。ただ、前提条件を冷静に考えると、本当に難しい戦いをしているのも事実。あれだけ賞賛されたザックさん(ザッケローニ監督)の時代でも、アウェイのヨルダン戦では完敗したし、オーストラリアとはホーム、アウェイともに引き分けているわけだから、最初の印象が悪かっただけで、成績的には過去の最終予選とそんなに変わらない。

 それに、1勝2敗という窮地を迎えたときに、監督の力量って測れると思うんです。監督の能力を測る六角形があったら、戦術、サッカーに対する知見といったものはその一角に過ぎず、他に同じぐらい大事なものがある。たしかにサッカーに対する知見では、森保監督も横内(昭展)コーチもずば抜けて優れているとは言い切れないでしょう。ただマネジメント力、コミュニケーション力、精神力など優れている部分もあって、実際、チームの一体感や、監督と選手の信頼関係がなければ、1勝2敗の状況でチームが崩壊していてもおかしくないですよね。

たしかに、オーストラリア戦の前は瀬戸際まで追い詰められていて、あの試合を落としたらアウトでした。

岩政大樹さんが言っていたんですが、ああいう大一番で人とフォーメーションを変え、勝利を引き寄せる力も監督の大事な能力で、それはおそらく自分にはないと(笑)。その意味では、森保さんは岡田さんや西野さんと同様に引きが強いというか、肝が据わっている。だから、あそこで持ち直したところに森保さんの力量も感じます。Jリーグで、試合後の会見やフラッシュインタビューで、すぐにテンパってしまう監督をたくさん見てきただけに(苦笑)。

 

第1フェーズから第2、第3フェーズへ

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最終予選の6試合ですが、最初の3試合とあとの3試合を〝ピッチ上で起きたこと〟で解釈すると、分割して語る必要があると感じています。フォーメーションが全てではないとはいえ、形一つとっても明確な変化がありました。まず最初の3試合から感想をお聞きしたいです。

その話をするには、チーム立ち上げからの流れに触れないといけなくて。さかのぼると、森保ジャパンはここまでに3つのフェーズがあったと思うんですよ。最初は南野拓実中島翔哉、堂安律という2列目の3人を最大限に生かすサッカー。大迫勇也ポストプレーを使いながら、彼ら〝三銃士〟がいかにいい状態でボールを受けて、前を向いて仕掛けたり、コンビネーションを出せるかがポイントでした。

東京五輪本大会も類似したコンセプトでした。久保建英、堂安、相馬勇紀や三笘薫の2列目を生かす意味で。

そうですね。ただ、A代表のほうはその後、〝三銃士〟が解体されて、鎌田大地や伊東純也が台頭してきて、インテンシティやデュエル、カウンターの際のスピードと迫力が武器のチームに変化していく。その最たる例が、3-0で完勝した21年3月の日韓戦ですね。鎌田自身も「代表チームの強みは速攻の際のスピード感と迫力」だと言っていました。そのなかで鎌田はスルーパスを供給する役割だったけど、彼自身もボールを運んだりしていた。あるいは、ハイプレスでボールを奪ってショートカウンターを繰り出すとか。これが第2フェーズ。

高いインテンシティと速いトランジションで対戦相手を飲み込むようなフットボール、ですか。

とはいえ、この戦いをするために不可欠なのはコンディション。しかし、先ほども話したように最終予選のオマーンとの初戦は、長距離移動と時差、わずか2日の準備期間、ヨーロッパから残暑の日本に戻ってきたことによるコンディション不良のまま試合に臨み、いいところがまったく出せずに敗れてしまった。対するオマーンは一ヶ月の合宿期間付きです。

初戦を落とし、「もう負けられない」と精神的にも追い込まれ、サウジアラビアとの第3戦も敗れてしまった。

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そこで第4戦のオーストラリア戦、森保さんは田中碧と守田英正の元川崎フロンターレコンビをスタメンに抜擢し、フォーメーションを4-2-3-1から4-3-3に変えました。田中碧と守田が入ったことで、相手を見てサッカーをする、立ち位置を意識したサッカーに少し寄りました。プレスの掛け方も、ウイングの南野と伊東が相手サイドバックを背中で消しつつセンターバックに圧力を掛けるやり方に変えたり。

「外切り」というやつですね。

リバプールのやり方を取り入れたのか、フロンターレのやり方を取り入れたのか分からないですけど、プレスの掛け方も整理されました。11月のベトナム戦とオマーン戦は、アウェイゲームだったこともあって、オーストラリア戦ほどいい出来ではありませんでしたが、同じ流れのサッカーでした。例えば、オマーン戦では右ワイドに伊東、右ハーフスペースに柴崎岳、中央に大迫、左ハーフスペースに南野が立っていた。左ワイドに立つべき長友佑都がそこまで上がらなかったため、南野のマークが外れなくなってしまったけれど、デザインとしては3-2-5、左インサイドハーフの田中碧が長友のカバーで左サイドに落ちていたから4-1-5とも言える。つまり、2列目を最大限に生かそうとしていた第1フェーズや、鎌田がトップ下にいた第2フェーズとは明らかに異なっていると。これが第3フェーズ、という解釈です。

戦い方が変わったわけですね。ところで、オーストラリア戦での変化は4-3-3への変更が先にあって、それに合う選手として田中碧と守田が抜擢されたんですか?或いは、田中碧と守田の起用が先で、それに合わせて4-3-3にしたのか。どっちなんでしょう?

これは森保さんも明言していて、調子のいい、フレッシュな選手を使いたい。それがオーストラリア戦の時点では田中碧と守田だったと。それで、田中碧と守田を生かすなら、4-3-3に微修正したほうがいいだろうと言っていました。もちろん、同時にオーストラリアの分析もしていて、オーストラリアのストロングを消すには4-3-3で噛み合わせたほうが良さそうだと。森保さんはそう話していました。

人の変更が先で、形の変更があとだったわけですね。

ただ、4-2-3-1から4-3-3への変更はあくまでも微調整だと強調していました。というのも、第3戦のサウジアラビア戦も実は4-2-3-1と4-3-3を併用しているんですよ。4-2-3-1のサウジアラビアの中盤とマンツーマンで噛み合わせるべく、日本はボール非保持の際に鎌田が左インサイドハーフ、柴崎が右インサイドハーフ遠藤航がアンカーの形を取っていた。サウジアラビアボランチのひとりをディフェンスラインに落として、いわゆる“サリーダ・ラボルピアーナ”をしてきたことで、思うようにハメられなかったですけどね。だから、オーストラリア戦で初めて4-3-3を試してみた、という感じでもない。

批判もありますが、立ち上げからここまでの流れがあって、この6試合の中にもちゃんと物語があるんですね。

これがオシムさんだったら、おそらく計算づくのチーム作りだったと思います。例えば、07年のアジアカップ中村俊輔遠藤保仁中村憲剛というプレーメーカー3人を同時に起用する「カミカゼシステム」でチームのベースを作り、次の段階として松井大輔大久保嘉人田中達也といった個で打開できるアタッカーを融合しようとしたように。一方、森保さんの場合は〝偶然の必然〟とでもいうのでしょうか。つまり、その時に調子のいい選手を起用し、その選手のストロングを生かそうとした結果、面白いことにスタイルそのものも変化してきた。でも、サンフレッチェ広島時代の代名詞だった3-4-2-1の可変システム、いわゆる〝ミシャ式〟を日本代表で採用しなかった時点で、こうした臨機応変なチーム作りを目指したんでしょうから、ブレてもいない。

 

なぜ、3-4-2-1の〝ミシャ式〟をやらないのか

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3-4-2-1の話が出たので聞きたいんですけど、森保さんはサンフレッチェ時代にミシャさん(ペトロヴィッチ監督)から引き継いだそのシステム・戦術で、J1で3回優勝したわけじゃないですか。17年12月に立ち上げた東京五輪代表では3-4-2-1に取り組んでいたのに、18年7月に発足したA代表では4-2-3-1を採用した。なぜ、得意な3-4-2-1をA代表でやらなかったんでしょうか?

想像するに、代表チームで植え付けるには時間がかかると考えたからではないかと。ミシャ式ってポジショナルプレーの一種なわけです。自陣でブロックを組む時は5-4-1で5レーンを埋め、ボール保持時の際は3-2-5ないし4-1-5にして5トップのコンビネーションで相手4バックを攻略する。そうしたポジショナルプレーの概念は、まだ日本で浸透しているわけじゃないから、パッと集まって自然にできることではなく、時間をかけて植え付けなければならない。この植え付けの時間が、代表チームでは取れないと感じたのではないかと。実際、東京五輪代表は3-4-2-1でチーム作りを進めていましたが、機能するのにかなり時間が掛かったし、堂安と久保を初めて3-4-2-1の2シャドーで起用した19年11月のコロンビア戦では、まったく機能しませんでした。

広島でやったゲームですよね? 0-2の完敗でしたね。

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そう、堂安が五輪代表チームに初合流し、久保と初めて共演した試合です。A代表でも19年6月、キリンチャレンジカップトリニダード・トバゴ戦とエルサルバドル戦で3-4-2-1をテストしたのですが、さっぱりでした。試合後の選手コメントも、まさに頭でっかちな言葉だらけで、システムや戦術に縛られやすい日本人の欠点、ロジカルな立ち位置に立てない戦術眼の問題も露呈した印象で。森保さんもこうなってしまうことを想像したんじゃないかなと。

3-4-2-1は選手の良さを引き出す以前に、選手を縛りつける危惧があるわけですね。さらに聞きたいのですが、飯尾さんは東京五輪後にメキシコ五輪代表のコーチである西村亮太さんにインタビューされましたよね。そこで西村さんが「3-4-2-1のほうが嫌だなと。なんで4-2-3-1に変えたんやろうなっていう話をしていました」と語っていたじゃないですか。どんな印象を受けました?

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西村さんは「(3-4-2-1は)最初から配置の時点でコンビネーションプレーが出しやすくなっているじゃないですか。分かっていても守りきれない瞬間が出てくるというか、それこそが日本の強みだと思うんです」と話していましたが、それについては森保監督も、横内コーチも当然分かっていたと思います。3-4-2-1でJ1を3度制しているわけですから。ただ、メキシコの選手は4-2-3-1だろうが、3-4-2-1だろうが、パッと集まってできるかもしれないけど、日本はそうじゃない。さっき話した五輪代表のコロンビア戦、A代表トリニダード・トバゴ戦やエルサルバドル戦でも分かるように、頭でサッカーをしてしまう傾向があるから、東京五輪で採用するのはリスクがあった気がします。

仮に急遽採用したとしても、相手の意表をつく以前に、むしろ自分たちで試合を難しくした可能性もあり得ると。堂安や久保をはじめ、林大地や冨安も、もっといえばオーバーエイジ吉田麻也酒井宏樹、遠藤の3人も3-4-2-1ではほとんどプレーしていないですからね。

もうひとつ、森保監督が3-4-2-1を主戦システムにしないと決断するうえで大きかったであろう出来事があります。3-4-2-1を採用した17年12月の東京五輪代表チームの立ち上げと、4-2-3-1でスタートした18年9月のA代表の初陣の間にあった出来事……。

......あ、分かりました。森保さんがコーチとして参加した、18年6月のロシアW杯ですか。

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そうです。西野さんはW杯本大会の2か月前に代表監督に就任しました。短い準備期間でW杯に臨むとなれば、自分のやりたいことを選手やスタッフに詰め込むのが普通だと思うけど、西野さんはそうしなかった。選手たちと意見交換しながら、ディスカッションさせ、選手たちから最適解が出てくるのを待って、最後にそれをまとめて短期間でチームを作った。これがいいか悪いかは別として、森保さんにとっては衝撃的だったようで。時間のない代表チームでは、自分のやりたいことを植え付けるより、こうした手法のほうが選手の良さを引き出せるんじゃないか、と感じたんだと思います。

なるほどなあ......。だから、W杯前に立ち上げられた東京五輪代表と、W杯後に立ち上げられたA代表では、チームの作り方やフォーメーションが異なるわけですね。

ロシアW杯では、そうしたチーム作りでベスト16まで進んだものの、ベルギーに0-2からひっくり返されてしまった。何が足りなかったのか。この壁を越えるには何が必要なのか。行き着いた答えのひとつが、日本人の苦手とする自主性、対応力、臨機応変さを身に付けることだった、という話は東京五輪後の対談で話したとおりです。欧米人が普通に備え、日本人に足りないとされる自主性、対応力を伸ばすことこそが日本代表監督としての使命であり、日本サッカーがステップアップするための要因だと考えている。これだけ叩かれても、その信念がブレないのが凄い。だって一番計算できるのは、自分がサンフレッチェでやって3度も優勝したスタイルを、日本代表に植え付けることなので。いつもニコニコしているけれど、ドーハの悲劇をはじめとする修羅場をくぐってきて、肝が据わっているなと感じます。

 

日本代表は〝大河ドラマ〟のようなもの

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ここまで聞いていて、一つ気づきというか、仮説が生まれました。それは、おそらく僕(たち)が思っている以上に、森保さんが過去の文脈、とりわけベルギーに敗れたあの試合を強く意識しているのではないか、という点です。その文脈、新たな過程の中で、4-3-3という形に行きつき、相手を見てサッカーをする、適切な立ち位置を取るといったサッカーIQの高い選手たち、つまりフロンターレ出身の選手たちが遂に入って来て、チームがうまく回り始めた。その流れって、やっぱりちゃんと繋がっている気がします。〝積み重ね〟ではないかもしれない。ただ、結果的にその歩みが〝線〟にはなっている。とはいえ、現在(いま)に目を向けると、ポジショナルプレーの概念が身に付いている選手の数がまだ少ないから、日本代表は過渡期なのかもしれませんね。

繋がっているのはロシアW杯からカタールW杯だけじゃないですよ。日本代表は大河ドラマのようなものです。98年に岡田さんがW杯初出場に導いたけど3戦全敗に終わった。世界での経験がないということで、02年の日韓W杯ではトルシエさんを招いた。トルシエさんはざっくり言うと組織で縛るタイプだったから、06年は自由を謳うジーコさんになった。

でも、06年のドイツW杯は惨敗してしまいました。

それで今度は欧州式でも南米式でもなく、〝日本代表の日本化〟を掲げたオシムさんになった。オシムさんは道半ばで退任してしまうけど、次の岡田さんも自分なりの日本化で引き継いだ。〝接近・展開・連続〟は、日本人の敏捷性や忠誠心、技術を生かそうとしたものだったけど、最終的には頓挫して10年南アフリカW杯では守備的な戦いに変えた。デンマークとの第3戦は攻撃的に臨みましたけど。

次こそ自分たちのサッカーを貫き、攻撃的に戦おうということで就任したのがザックさんでしたね。

ザックさん自身は彼の代名詞と言われる3-4-3を採用し、ハイプレスや縦に速いサッカーをやりたかったようですが、日本代表の文脈に乗っかってくれたというか、一緒に夢を見てくれたというか。でも、14年ブラジルW杯は惨敗に終わってしまった。そこでW杯ベスト16進出の経験があるアギーレさん、ハリルさんを招聘した。特にハリルさんは日本人の苦手とする部分を伸ばそうとしたけれど、最後は選手たちとの関係性が悪化して解任。後任の西野さんは選手の良さを繋ぎ合わせるような手法をとった。森保さんもその手法を受け継ぎながら、足りなかった自主性・臨機応変さを身に付けるチャレンジをしている、というドラマ。ざっくりですけど(笑)。

だから、ロシアW杯はブラジルW杯のリベンジだったし、カタールW杯はロシアW杯で突きつけられた宿題に対して回答を出す大会だと。ド、ドラマだ......。

その宿題に、当時のコーチだった森保さんと当時のメンバーだった吉田、長友、酒井、柴崎、大迫、原口元気、遠藤といった選手と、次の世代が取り組んでいる。カタールW杯で日本人の欠点とされていたものを克服したら、次の2026年W杯はいよいよ、久保建英や田中碧を中心にポジショナルプレーを標準装備した代表チームが生まれるかもしれない。Jリーグでも浦和レッズFC東京とか、ポジショナルプレーに取り組むチームが続々と増えていますからね。そのときには再びヨーロッパから指揮官を連れてきてもいいかもしれないですよね。

飯尾さん、ちなみに名古屋はファストブレイクです。......その話は要りませんかそうですか。では先ほどの話に戻りますが、最終予選の6試合に関しても、なんだかんだとその流れになってきているのが面白いです。

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以前も話したように、日本のサッカースタイルを作るのは日本代表ではなく、育成であり、Jリーグ。欧州の監督を連れて来て、日本代表に最先端の戦術を植え付けたところで一過性のものでしかないし、そもそも今は新しい戦術を植え付ける時間もない。欧州の監督やアカデミーの指導者を連れてくるのはJリーグの各クラブや育成がチャレンジすべきことで、そこで育った選手たちが日本代表となって、何ができるか。田中碧と守田だって、この2年間にフロンターレが、つまり、Jリーグが育てた選手ですよね。そういう選手たちがヨーロッパに飛び出して、さらに個を大きくしていく。そういう選手が集まって日本代表を成すのであって、代表の強化だけを見ても何もならない。例えば、韓国が日韓W杯の時にヒディンクを連れてきて、ベスト4に入った。でもその後、ベスト8にすら行けてないですよね。

そこで終わっちゃいましたからね。乱暴な言い方をすると、「今何が残っているの?」と。つまりそういう話。

海外の有能な監督が日本代表に魔法をかけて、ベスト8に1回行けたからといって、日本サッカー全体のレベルが上がるわけではない。何か残らないと意味がない。育成とJクラブが選手たちを育てて、日本代表に送り込み、日本代表は経験と歴史を積み重ねて、財産にしながらチャレンジしていくしかない。そういう意味で、このロシアからカタールの4年は、日本人の殻を破るというチャレンジの時期。それがどういう結末を迎えるのか見てみたいです。

そうしてカタールW杯が終わったら、また新しい選手たちとの新しいチャレンジが始まるというわけですか。

結局、森保さんの不幸は、ハリルさん解任以降の協会不信までぶつけられていることです。例えば、ハリルさんがロシアW杯で指揮を執り、森保さんもコーチとして参戦していたとします。森保さんのやり方はハリルさんに似ている部分もあるわけです。デュエルやインテンシティに加え、ひとつの戦術を極めるというより柔軟に戦おうとするところも。それで、森保さんが「ハリルさんがやったことを自分なりに学ばせてもらった。それを進化させるためにも自主性、主体性を身に付けさせ、日本人の殻を破りたい」と言ったとしたら、すごく共感されたかもしれない。でも、今は〝ジャパンズウェイ〟の体現者という見方をされている。おそらく田嶋(幸三)会長を嫌いな人は、森保さんのことも嫌いですよね。

森保さんのことは評価するけれど田嶋会長は無能。田嶋会長は良いけど森保さんは無能。確かに、いないかも。

ハリルさん解任による協会への不信感が森保さんに向けられてしまうのは不幸だなって。そこは切り離して考えないと。もちろん、純粋にゲームがつまらない、最終予選で2敗もして弱いということで叩くのは問題ないし、当然のことだと思います(笑)。

 

W杯に向けた〝伸びしろ=ラストピース〟は

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オーストラリア戦で4-3-3に変更し、田中碧と守田が台頭した。11月のオマーン戦では三笘薫が活躍し、左サイドバックでは配球に優れた中山雄太が存在感を見せました。では、あえて意地悪な質問です。チームがブラッシュアップするなか、これ以上の伸びしろはありますか?

W杯本番で言うなら、コンディションと相手分析。最終予選のスタートでは失敗したけれど、本大会ではコンディションを整えて、インテンシティやデュエル、スピードを取り戻す。立ち位置を意識したサッカーに変わりつつあると言っても、ハイプレスやカウンタープレスは必要です。あと、相手チームの分析はこれまでのW杯同様、入念にやるでしょうが、逆に対戦相手は日本のことを読みにくいと思っているかもしれません。最終予選の中でも戦い方が変わったわけで。ザックジャパンのように分かりやすい形がないことが意外と強みになったり(笑)。

相手対策というところで言うと、そもそも論にはなりますが、森保監督の求めるサッカー自体、アジアでの戦いに向いてないと思いませんか。中国戦もベトナム戦も5バックで守られ攻め崩せなかった。森保監督のサッカーはむしろ、世界と戦うときの方がハマる可能性もあります。オーストラリア戦を見ていても、ボール保持がベースにある相手のほうが勝機がある。その意味では、森保監督が取り組んでいること、目を向ける先にあるのは、アジアで勝つこと以上に、W杯でどうやって勝つかがベースなんじゃないかと。そこを見据えるだけの理由が少なくとも森保監督にはある、それはこれまで話してきた通りです。もちろん、裏を返すとだからこそ苦戦しているとも取れる。とはいえ紆余曲折を経て、相手を見てサッカーができる選手たちが起用され4-3-3に行き着いた。この流れには価値があると思うんです。いざ本大会に臨むとき、サッカーを極端に変える必要がない。

インテンシティやトランジションを重視した〝ストーミング〟がゲームモデルのベースだったリバプールが、のちにポジショナルな立ち位置も取り入れたように。森保ジャパンも第2フェーズと第3フェーズの融合が完成形だったりしてね。

そういう文脈にもなり得る。だから価値があるなって。

あとは、新戦力が加わることによる化学変化でしょうね。三笘や中山はすでに化学変化を起こしてくれていますが、古橋、前田大然、上田綺世、旗手怜央が食い込んでくるかもしれない。22年1月の中国戦、2月のサウジアラビア戦では吉田と冨安が欠場するわけだから、板倉滉や谷口彰悟が新しい何かをもたらしてくれるかもしれない。特にフロンターレの谷口は田中碧、守田との相性が抜群にいいわけですから。そして、忘れてはならないのが久保建英

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そうか......ここで久保が登場してくると。でもどこで起用します?インサイドハーフ?いや右ウイングですか?

W杯での戦い方を考えると、攻守両面で計算でき、パスも捌けてボールも奪える遠藤、田中碧、守田の3人は起用したい。でも、右ウイングの伊東も外せない。そこで提案したいのは、センターフォワード

面白い。偽9番、〝ファルソ・ヌエべ〟はどうかと。

そう、ゼロトップ。これはもうロマンですね。久保はショートケーキのいちごのようなもの(笑)。

ただ、前線で体を張ってボールを収め時間を作ってくれる大迫の存在は、森保ジャパンにとって不可欠では? 

でも、大迫がボールを収めるときって、最前線で相手DFを背負うというより、落ちてきて収めることが多くて。その落ちるタイミングと場所が巧みだから、フリーになれたり、角度を作ってキープできる。だから、久保にもそれを期待したい。もちろん、その際に伊東や南野が相手のセンターバックの視野に入りつつハーフスペースから裏を狙って、相手センターバックを牽制する必要はありますが。

仮にその前提でチームを作った場合にも言えることですが、〝ボール保持〟をW杯本大会までにどれだけ詰められるかも気になりますね。これは東京五輪から継続した課題でもあり、今の4-3-3にしても連動性をもっと上げていかないといけない。それこそ久保を1トップに入れても、距離が遠くて孤立してしまっては意味がないですし。そう考えると、後ろがどれくらい安定してビルドアップできるか、ボールをアタッキングサードまで運べるか、もっと突き詰めていかないといけないですね。

それは間違いないですね。あと、久保に関してはオプションでもいいでしょう。ベースはやっぱり大迫。さらに、古橋が1トップのオプションもあれば、久保が1トップのオプションもあっていい。もちろん、久保投入と同時に4-2-3-1に変更し、彼をシンプルにトップ下で起用する手もあります。久保の起用法も含め、伸びしろはまだまだあると思います。

今日はありがとうございます。あと、この勢いでお誘いしますが、ぜひ第3弾を。そうだな....W杯本番直前で。

ぜひ。ただ、第3弾がまさかのW杯予選〝プレーオフ〟直前とならないことを祈っています(笑)。

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南米からのライブ配信ですか。いや......悪くないな。

徳島の地に拘り、そして涙した

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求められるのは、理屈か、それとも感情か。

報道から正式なリリースに至るまで、きっと多くの者がこの狭間で揺れ動いたに違いない。いつまでも留まって欲しいと願う気持ちも、更なる高みを目指して欲しいと背中を押すその想いも、どれも全て正しい。だってそうだろう、彼は一サッカー選手の枠を超えていたのだ。

岩尾憲は、徳島の地に別れを告げた。

12月4日、場所は鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム。降格が決定した後、スタジアムではシーズンの感謝を述べる場が設けられていた。

岩尾は、泣いた。

人目も憚らず、涙を止めることが出来なかった。


www.youtube.com

道半ばだったのだ。チームが崩壊したわけでもない。新しい監督のもと、やっと形も出来てきた。ただ、間に合わなかった。前年に悲願の昇格を達成し、しかし監督がチームを去り、加えて新監督の入国が遅れる。不慣れなトップカテゴリーで試行錯誤をしなければならないジレンマを抱え、それでも尚、最後まで残留の切符に手を伸ばし続けた。このクラブで、このメンバーでJ1の舞台に執着するだけの理由が、きっと岩尾にはあったのだ。

なにより残念なのは彼がこの舞台から去ることだった。

『人にかまっている余裕がない』と溢しながら、それでもJ1の舞台で躍動するその姿は圧巻だった。誰にも真似のできないリズムと圧倒的な存在感。優雅なプレースタイルはJ1であろうが何ら変わることなく、下のカテゴリーでの評判が過大評価でなかったことを自ら証明した。

www.targma.jp

最終節のマッチデープログラムでは、クラブとしてJ1の舞台で戦う意義を岩尾自身がインタビューで語っている。彼は手応えを掴んでいた。クラブも、そして自身もこの環境で成長していると。だからこそ徳島をJ1から落としてなるものかと必死だったろう。降格という事実以上の重い荷物を彼は背負い続け、しかし目的地まで運びきれなかった己の未熟さに涙した。私にはそう映った。

そう、彼が愛するクラブは、一年で降格したのだ。

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34歳になる年でJ2の舞台に戻らざるをえない現実。覆ることのないこの事実が気を重くさせた。プレー面において彼がJ2の舞台に戻る理由は見当たらなかったのだ。

そこにJ2という舞台を蔑む意図は当然ない。

例えば岩尾が尊敬する遠藤保仁は、既にトップカテゴリーで華々しい功績を残したうえで、J2という環境に活路を見出した。しかし岩尾は違う。キャリアのほとんどをJ2で過ごし、満を辞して上のカテゴリーに臨んだのだ。まだまだやれることはあったはずで、逆にいえば、もう下のカテゴリーでやり残したことはないように思えた。

或いは『また一年頑張ればいいじゃないか』と声をかけるのは。いや、無理だ。サッカー人生とは何故こうも短いのか。この年齢になれば一年一年が貴重で、重い。その貴重な一年を下のカテゴリーで費やし、仮に一年で戻れたとしてもその時には35歳。岩尾には一年でも長くJ1でのキャリアを築いて欲しい。そう願う気持ちに反して、この重苦しい現実が岩尾の置かれた状況を物語る。

若手と呼ばれる選手の一年とは違うのだ。何もかも。

そこに突如として舞い込んだオファーは、ある意味では納得の、しかしあまりに究極で、残酷なものだった。

hochi.news

33歳の選手に対し、天皇杯王者にしてACL出場権を得た国内最大のビッグクラブから届いたオファー。この状況でもし断る人間がいるとすれば、それはおそらく岩尾憲くらいのものだろう。ただ、今回ばかりは勝手が違った。酸いも甘いも知り尽くした男が辿り着いたJ1の舞台。そこには我々の想像を超えた手応え、やりがいがきっとあったに違いない。一サッカー選手として、『もっと上の世界を知りたい』そう思える何かが、きっと。

とはいえ、何処のクラブでも良かったとは思わない。

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浦和レッズ。一人のサッカー選手の枠におさまらず、『チーム』と『街』に拘り続けた男にとって、浦和というクラブの歴史、街、スタジアムの熱気から感じ取れるものは多々あるに違いない。そう思うと、『岩尾、残ってくれ』という想いも、気づけば『岩尾のためには移籍という選択も有りなのではないか』と揺れ動き始めるのだから悩ましい。どちらも正解で、そこには不正解など絶対にないのだから。決めるのは、岩尾自身だ。

しかしまあ、そんな究極の選択を強いる相手にリカルドロドリゲスがいるという構図の残酷さたるや。岩尾憲を徳島の地から引き剥がすだけのオファーが出来るクラブが他にあるか。いや、おそらく浦和レッズ以外にはないと断言できる。岩尾憲自身に流れる文脈に加え、受け皿となる相手側のクラブに流れる文脈。それだけではまだ足りなかったと私は思う。最後の決め手となるダメ押しの要素があるのなら、それは彼に関わる『人』だ。

そして、岩尾は浦和レッズの一員になることを選んだ。

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堂々と浦和へ旅立ってほしい。長い間J2の舞台で苦しみ、一人、また一人と仲間たちがJ1の舞台に活躍の場を移していった。その姿を横目で眺めながら、岩尾憲はずっと徳島のために戦ってきたのだ。『J1ってどう?』そう後輩たちに問い続けた男が、そのJ1の舞台で自ら掴んだ切符。それは、33歳という大台で舞い込んだ、かつて誰も掴み取れなかったような最大級のオファーだった。

遅咲きも遅咲き33歳でのビッグクラブ挑戦。代表歴どころかJ1の実績すら乏しかった男が今、誰も見たことのない道を歩み始めた。誰かが敷いた道でなく岩尾自身が作った道。いや、岩尾と徳島の人達で作り上げた道だ。

愛するクラブと共に歩み続けた先に、こんな未来が待っていると誰が想像しただろう。浦和からのオファーも、それを受け入れた決断も、必然。唯一の誤算は、自身の人生をかけたクラブの降格がそのトリガーとなったことだ。消せることのないその痛みと共に、それでも岩尾は次なる道を歩み始める。徳島ヴォルティスでの日々があったからこそ、歩むことが可能となった新たな道を。

終わってない。これは、互いが前に進むための決断だ。

徳島のために涙したあの姿を、忘れることはない。

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『魂を揺さぶる』フットボール

記事にして形として残したい。

今季のサガン鳥栖はそれに値するチームだった。いや、「だった」のに露出が少なすぎる。知る人ぞ知るチームで終わった感は否めず、理由はともあれ立役者の金明輝氏もクラブを去った。また、なにせ幕切れの理由が理由なだけに消化不良な感も否めず。きっと鳥栖愛する人達の記憶の中だけで生きていくんだ、そう思うと『ちょっと待てだったら俺が記事にする』と謎のモチベーションが発生。形にしてこのチームの足跡を残すのだ。

前年からの流れは下記参照、今季のみフォーカスする。

migiright8.hatenablog.com

まず衝撃的だったのが第二節の浦和戦。


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つつ強い....!!そしてなんだこの難解な戦術は。目まぐるしく変わる選手達の配置。私は試合を食い入るように観た。それほどの衝撃がこの日の鳥栖にはあったのだ。

そもそも試合前からして監督会見のインパクトな。


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お口がジャックナイフすぎる金明輝。一言でまとめると『リカルドあいつそんな大したことない』と言い切ってしまうその漢気(ちがう)。そのくせ多分徳島時代からチェックしてた感もありこのツンデレめ。最高だ!

そこから破竹の勢いで駆け上がった鳥栖

初めて知人とzoom観戦したのが第7節アウェーのC大阪戦。こりゃ無敗しかも無失点の勢いで川崎フロンターレと頂上決戦やとタカ括ってたら空気を読まず遂に敗戦。そして待ちに待った川崎戦。緊迫した試合でやっちまったのが田代雅也(57分に赤紙)。ダミアンクラスがJ2に10人いれば止めれたな(いねーよ)。金で殴る奴嫌い。


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続いて第10節の名古屋戦。ここまで10試合無敗で開幕戦以降は9試合連続無失点。J1に紛れ込んだこのイタリアのクラブを止めるのはどこだ。そうだ川崎フロンターレだ!と誰もが無敗同士の『矛対盾』を期待する中、なぜか名古屋を粉砕するサガン鳥栖。お前らマジで空気読めや。名古屋が苦手とするフラットな4-4-2を急に敷いた鳥栖を観て、金明輝アンタは鬼だと強く思った。

しかし、悲しいかなここから異変が起こり始める。

8月2日に松岡大起が清水エスパルスに電撃移籍。

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このあたりから何が何だか分からなくなっていたが、松岡のコメントには(多分)全鳥栖サポが泣いた。シーズン前、中盤のキーマンだった原川力セレッソ大阪に移籍し、これはアカンと思っていた中盤で『心臓』となったのが松岡だ。パスを捌きカウンターの芽を潰し。あれで20歳は年齢詐称。いつか名古屋に拉致したいが今は清水で頑張って欲しい。大丈夫、鳥栖には林大地がいる。

迎えた8月8日、林大地が笑顔でシントトロに海外移籍。

www.sagan-tosu.net

いなくなるの早っ!おいマジか大地よ。名古屋に来いよ。正直(私は)そう思いつつもオリンピックで一旗あげた彼の活躍を誰もが喜び、海外で成功しろと背中を押した。パンゾーのPodcastで披露された『オリンピック期間中に夢生くん(金崎夢生)から電話貰ったんですよー。「おまえ久保とか堂安にビビってんじゃねーよ』って怒られちゃいましたー』のエピソードには不覚にも声出して笑った。すげえ言いそう目に浮かぶ。

さあエースが飛び立ってしまったぞと不安に駆られる中、獅子奮迅の活躍をした一人が酒井宣福


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ていうかなぜ毎度名古屋戦で火を吹くのか。兄譲りなごりっごりのフィジカルと労を惜しまないプレッシング。酒井はマッシモに恨みはないはずだが明輝の敵(かたき)とばかりに全力でぶん殴るその姿勢(明輝の敵かは不明)。派手に暴れたので名古屋は金で殴り返した。

その後、月日は経ち、川崎との再戦がやってきた。

謙虚にガードオブオナーで『王者』を出迎えた鳥栖陣営。この光景には賛否両論あるようだが、『迎える側の礼儀作法は試合も含めてワンセットだ』と、拍手をする鳥栖の面々はどうやら猫をかぶっていたようである。

バッコバコに王者を殴り倒す目を疑うような掌返し。


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その先陣を切ったのがシーズン途中でやってきた岩崎悠人。ゴールを決め全速力で金明輝監督のもとに駆け寄った彼の姿に、多くの人達が心動かされたに違いない。

うれしかったですよ。なかなか、みんな来てくれないので(笑)。冗談ですけど

一周回ってとんでもないブラックジョークをお見舞いする明輝監督(いやそんな意図はない)。でもいい光景だった。今季の鳥栖のハイライトはあのシーンだよ。

それにしてもだ。岩崎悠人然り、酒井宣福や中野嘉大もそう。もっといえば仙頭啓矢にも言えることだが、他クラブで出番を失っていた者たちが何故ここまで躍動する。どうしてここまで力を発揮できる。

われわれの選手はみんな、そうですよ。どこかで何かを勝ち得て来たというよりは何かを探しに鳥栖に来たという表現のほうが合っていると思います。そういう選手にきっかけ、気づきを与えて、もう一つ上のレベルでプレーさせてあげられるように。そういう評価で他チームからオファーが来るとかこのチームで価値を高めるとかそういったものがわれわれはできるクラブだと思っているので、そういった部分で岩崎も結果を残してくれて、ノリ(酒井宣福)もそうですし、小屋松も簡単なPKではなかったですし、三者三様、みんながんばってくれたと思います

国内のフットボールにも新たな波が押し寄せている。

それを牽引するのは言うまでもなく川崎フロンターレであり、それに続こうとライバルクラブもあの手この手でグローバル化に躍起だ。横浜F・マリノスのようにフロントの在り方にメスを入れるクラブもあれば、スペイン人監督を連れてくるクラブも増えている。一方で、国内の絶対的王者に君臨し続けた鹿島アントラーズが苦しむ姿は、まさしく国内のレベルが次のフェーズに突入したことを意味している。どのクラブもフットボールがロジカルなものになりつつあるのは間違いない。

サッカー自体がより戦術的でロジカルになっている。それを言語化して選手に伝え、同じ絵を描けないと、攻守で後手に回ってしまう時代だと思います(引用元:エルゴラッソIssue2540 金明輝)

ただ、今季のサガン鳥栖にはそれ以上の魅力があった。

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ボール保持はロジカルでありながら、そこにはゴールに向かう躍動感や圧倒的なスピード感も存在した。相手がボールを持てば牙を剥いたように襲いかかる圧力があった。そして何より、そのフットボールを通してどの選手からも『個性』を感じることが出来た。

鳥栖は戦術的にはっきり、細かく、決まりごとがある。逆に言えば、それさえできてしまえば、自分のプレーに集中できるという良さがあるかなと思います(第35節vs川崎フロンターレ戦後 岩崎悠人)

sports.yahoo.co.jp

鳥栖のサッカーは複雑なように見えるかもしれないですけど、自分たちがやっていることは難しいものではなくて。技術がしっかりしてないと難しいんですけど、やることは明確で、シンプルなサッカーなんです。どうやってボールを奪い、ゴールを決めて、ゴールを守るかにすごくフォーカスしたチーム

そう、鳥栖フットボールは一見すると非常に複雑だ。非保持になれば最終ラインは3〜5枚まで状況によって変化し、ひとたびボールを保持すれば最終ラインにいた選手が両翼の高い位置に駆け上がる。外にいた選手は一列中に立ちレシーバーとなり、中央で絞って守る相手を撹乱する。左右を比較しても、複数人が複雑に絡み合う左サイドに対して、右サイドの構成は至ってシンプルなケースが多い。ビルドアップに目を向ければ相手によって立ち位置が以下様にも変わり、あの手この手でフリーな味方を生んでいく。書いているだけで複雑ではないか。

ただ、酒井の言葉のように、本来の目的は『どうやってボールを奪い、ゴールを決めて、ゴールを守るか』これだけだ。明確な目的があり、そこに対する手段の提示もある。絶対に破っていけない掟はハードワークを怠ることであり、その前提と戦術理解さえあれば、あとは金明輝監督が『個性』に応じそれぞれの場所に配置する。

多少足りないものがあったとしても、僕らのゲームモデルの中で生かす。チームとして彼らのウイークを隠し、ストロングを出せるようにすれば大丈夫なんじゃないかと

だからこそ躍動した。そこに一切の迷いがないからだ。

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川崎が圧倒的な強さで独走する今のJ1。だからこそ、このリーグのレベルを更にもう一段上げるには『彼らと正面から対峙し叩き潰すことが出来るクラブ』の出現が必要ではないか。その候補に十分なりうる存在、それが今季のサガン鳥栖だった。セリエAで旋風を巻き起こすアタランタや、或いはブンデスリーガに新たな文化を持ち込んだライプツィヒのように。それほどの衝撃だった。

今回の一連の騒動に関し肯定する気持ちは一切ない。

ただ、だからといって今季彼らがピッチ上で魅せたあのフットボールまで否定され記憶から消されてしまうなら私は大声でこう言いたい。『今季のサガン鳥栖は、金明輝監督が作り上げたこのチームは最高だった』と。

私が知っている事実は、唯一それだけだ。

こう言うと、グランパスサポーターじゃないんですか?と問われることがあるが、そういう問題ではない。

良いものには素直に良いと伝えたい。他サポだろうが何だろうが、胸躍ればその衝動に従い、『アイツらめちゃくちゃ良いぞ!』って言わせて欲しい。だからこそ、このチームが道半ばでリスタートとなってしまった事実が悔しく、もどかしいからこうして書いているのだ。

監督が去り、チームは解体され、サガン鳥栖はまたも窮地に立たされている。『個人的には今年が一番の難局だと覚悟していた』金明輝監督がこう評したシーズンを乗り越えて尚、何故試練は続くのかと嘆きたくもなる。

しかし、それでもこのクラブに残り続ける魂はある。

金明輝が去っても、選手達が去っても、このクラブのために戦う者たちが多くいることを忘れないで。終わってない。このクラブに関わる全ての者が、バトンを繋ごう。折れるな、サガン鳥栖。下を向くな、サガン鳥栖

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選手の能力を引き出し、伸ばしながら、選手が楽しさも覚えてくれる。ただ、その中でも観る人たちの魂を揺さぶるようなサッカーをしたい

鳥栖がもう一つ上のステージに上がるためにも、サポーターの方々がサッカーを文化にしてほしい。結果を大事にしながらも、そのプロセスや中身にも目を向けて選手たちを評価してくれるようなところに辿り着くときがくれば、サポーターの方々がもっとチームを強くできると思っています。〝質を見る〟ということです

(引用元:エルゴラッソIssue2540 金明輝)

忘れるな。刻み込め、この言葉を。そして前に進め。