みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

「四銃士」だった切り札。革命と決別した二人

セットプレー三発で沈む失態に頭を抱えた夜。「俺たち私たちのワールドカップは7月22日の広島戦からだ!」そんな意味不明な現実逃避でこの試合をなかったことにしてやろうと脳内変換していた約12時間後。

終わったと思われていた戦力補強に動きがあった。

俺たち私たちのワールドカップ戦士、まだいた。

 

おぉ...ウエルカムナオキ。

唐突に発表されたこの補強。昨日の敗戦を見越していたんじゃないかと勘繰りたくなるようなAM9時のリリース。あぁこれはワールドカップじゃない、Jリーグだ。最下位の現実を約2ヶ月ぶりに実感していた名古屋サポーターにとってはこれ以上ない朗報である。

それにしてもまたレフティー、そしてドリブラー。マンデーセレクションならぬやっひーコレクションは止まらない。

 

改めて「前田直輝」とは何者だ

前田直輝といえば個人的には横浜Fマリノス時代の印象がどうしても強いのだが、実際にはどんな選手なんだろうか。情報だ、そう情報をください。

 

そして限られた人脈によって集められた数少ない貴重な情報がこちら。

なんと有益な情報だろうか。感謝しかない。いただいた情報を一言でまとめましょう。

 

変態ドリブラーです。

前田のドリブルフェイント

 

ということで八宏フォーマットの確認。

見事に変態ドリブラー枠①or②に該当する選手である。

 

ドリブラーと一括りで語ってはいけない

そもそもドリブラーといえばやっひーコレクションは候補生揃いである。ここはやや強引に下記の通り分類してみることとする。

<(愛をもってこう呼ぶ)変態系いゃ変化系>

<ゴリゴリ系>

  • 和泉竜司
  • 秋山陽介
  • 相馬勇紀(予備軍)

風間体制下における特徴として、変化系は主に前目、ゴリゴリ系は主に後方で使われるケースが多い。役割の違いとして、変化系はスモールフィールドにおける突破口となる切り札。ゴリゴリ系は相手を剥がし、後方からボールを縦に運ぶ重責を担っている。

前田に関しては変化系であるからして、スモールフィールドでの突破口になることが求められる。要は相手ディフェンダーが密集したゾーン、スペースが限られたエリアをその変態的なドリブルテクニックを駆使し打開することがタスクとなる。縦だけではなく、横や斜めにもスルスルと抜いていけるテクニック。

このタスクが求められる理由として、当然ながら風間八宏の影響が何より大きい。後方からはロングボールを多用せず丁寧に繋ぐことを基調としているからこそ、前にボールを運んでいけるゴリゴリ系の能力が貴重となる。一方相手陣地ではピッチを広く使うことはせず、「相手の組織」ではなく「相手(個)そのもの」を攻略することを重要視している。どれだけ狭いエリアでも、技術とコンビネーションを駆使すればゴールまで最短距離で辿り着くことが出来る。そんな発想の持ち主故、必然的に選手は密集するし、当然ながらそれを死守しようと相手も密集する。ある種そのカオスとなったエリアを攻略するためには、変化系ドリブラーが持つ特異性は大変貴重なものとなる。

しかも前田は「左利き」だ。既存のメンバー、例えばシャビエルや玉田に関していえば、彼らは決してドリブラーではない。シャビエルは「スモールフィールドに魔法をかける魔術師」。玉田は持ち前のテクニックを駆使し、チームにリズムを生み出すことを可能とする。

その意味で同じ左利きでも前田の特徴は大きく異なる。例えば左利きの選手をあえて右サイドに置き、視野を確保させた状態で単独で中にカットイン出来るようなタイプはこれまで名古屋には不在だった。よって攻撃のオプションという意味では唯一無二の武器になりえるし、それが分かっていたからこそシーズン前から獲得に向けて強化部は働きかけていたのだろう。

【公式ゴール動画】前田 直輝(横浜FM) 90分+2分 横浜F・マリノス vs 浦和レッズ 明治安田生命J1リーグ 第1節 2017/2/25

【公式】ゴール動画:前田 直輝(横浜FM)53分 浦和レッズvs横浜F・マリノス 明治安田生命J1リーグ 第34節 2017/12/2

 

試合から消えないために求められる「戦術理解力」

課題があるとすれば「戦術理解力」になるのだろうか。ただこれは往々にして変化系の宿命である。

「最も相手を剥がせる可能性が高い選択肢がドリブルなので」

これは以前青木がコメントした内容である(うろ覚えだが)。いや何言ってるんだ青木宇宙人かと当時目を疑ったものだが、これに負けない男がいたんだ。

そう、榎本大輝。

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「とりあえず球をくれ。ドリブルだけさせろ(意訳)」

ここまでくるともはやボール中毒者ではなく、ただのドリブル中毒者である(褒めています)。詳しくは今月発売のグラン掲載「革命ウォッチャー(特別篇)」をお読みいただきたいところだが、何にせよ彼らはボールを持つことで違いを生み出し、ここまで上り詰めてきた男達。おそらくただそれだけを人一倍努力し、突き詰めてきた。逆に言えばボールを持てないとたちまち彼らは存在意義を失ってしまう。この点に関してはトップレベルになればなるほど鮮明になる部分でもある。彼らにとっては「試合から消えない」ことこそが最大の課題であり、その点が風間八宏のもとでどれだけ磨かれるかが今後のカギを握るのではないかと予想する。

とにもかくにも面白い素材が名古屋に加入したことは事実である。 

背番号はヴェルディアカデミーの先輩である杉本竜士がつけていた「25」だ。

 

来る者もいれば、去る者もいる

さて、この日あったリリースは、ご存知の通り嬉しいものだけではなかった。

彼らのことも語りだすと長くなってしまう為、一つだけ触れて終わりにしたい。

彼らのコメントを読んでいて共通していたポイントが、ルヴァン杯のガンバ戦に大きな手応えを得ていたという事実である。自分達の特徴を活かし、それが結果に結びついた。攻守に全員が連動出来た、だからこそそれをリーグに繋げたかったと。彼らの後悔には、チームの中でその役割を十分に担えなかった不甲斐なさも当然あるだろう。ただ同時に今回の移籍を決定づけた一番の要因として、自分達が感じていたその手応えのようなものを、リーグ戦で戦うチームの中で活かす場がなかったのもまた事実だったのではないだろうか。

これは根本的な話である。自分達がどこに軸足を置きサッカーを始めるのか。相手陣地を制圧するために、まず何を武器とするのか。

「前」から「走る」ことを選ぶのなら、前線には機動力が求められ、後方のビルドアップ力に関しては負担が減る。

「後」から「繋ぐ」ことを選ぶのなら、前線にそこまでの機動力は必要なく、後方のビルドアップ力が重要となる。

その方向性が影響し彼らの個性はこのチームに上手くハマらなかった。実際はそれだけのことである。決して彼らの能力が劣っていたという話ではない。押谷も畑尾も噛み合った前者のサッカーに自信を深めていた。そしてチームは前半戦の戦いにおいて後者のサッカーを選択し苦労していた。繋げないことで、結果的に攻守ともに彼らのサッカーは破綻していた。ただそれでも風間監督はどちらの戦い方を求めたか。その点を2人はよく理解し、その結果として今回の決断に至ったのではないだろうか。

そこだけは風間八宏は頑なだった。2勝3分11敗、勝点9の最下位。これが選んだ道の現実である。どれだけ負け続けようと、例え降格の危機がそこにあろうと、この点だけは一切ブレることがない。彼にとって「攻守が連動する」とは、ボールを持ってこそ生まれる循環であるべきなのだ。だからこそ彼らはチームを離れることを決意し、逆にそんなチームの戦い方に魅力を感じた前田は名古屋に来たのである。

 この日起きた三つの移籍劇は、風間八宏がチームを率いることの意味、本質を鮮明に映し出していた。あまりに極端で、食わず嫌いなその側面を残して。

さて、そろそろ終わりとしたい。この点をもっと深く追及したい方は、是非下記のブログを読んで欲しい。

驚いたでしょう。そう、最後の最後で宣伝だ。

migiright8.hatenablog.com

 

※このブログで使用している画像は名古屋グランパス公式サイトから引用したものです