みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

シーズンを共に戦うということ

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「J2は魔境だ」

今節も各会場では昇格候補と呼ばれるチームの敗戦が相次ぎました。

  • 熊本 3-1 新潟
  • 横浜FC 0-4 金沢
  • 岡山 0-1 愛媛
  • 大分 4-0 千葉

J1に目を向ければ、昨年のACL王者である浦和レッズが開幕5試合を終えたこのタイミングで堀監督を解任する決断をしました。また浦和と共にこのリーグを引っ張ってきたガンバ大阪も、開幕以来未だ勝利を掴み取ることが出来ません。

そして我らがグランパスも今節アウェーでの鳥栖戦、2点リードから3点奪われ大逆転負けという目を覆いたくなるような結果で敗戦を喫しました。

SNSを見れば一部とはいえ公式のアカウント宛にこの敗戦を厳しく非難する声があがり、また一個人の選手に向けた批判も集まりました。「一つの敗戦も許さない」確かにプロの世界で行われていることですからそれも仕方ありません。当然批判をすることが悪だとは言えないでしょう。

これは名古屋に限った話ではなく、現在J1、J2、どちらのカテゴリーでも苦労しているチームがいくつかあります。一から作り直している過程で結果がついてこないチーム、昨年から継続しているにも関わらず良くなる兆しが見えないチーム。あらゆる場所で似たような議論は起きています。

ただ私達はどうしても目先の勝敗に一喜一憂してしまいます。当然です。応援するチームにはいつも勝ってほしい。無様な試合など見たくはない。勝利こそが最大の喜びだというのはどのサポーターも同じでしょう。負けて嬉しいサポーターなどいません。またスタジアムに行くとなればお金も必要ですし、遠征となればかかる費用も安いものではありません。興業としてお金を払って見に行く以上、それに見合うだけの価値を提供するべきだという考えも尊重出来ます。その分かりやすい価値こそが応援するチームが勝つことなのです。

このように目の前にある試合の勝敗が何より優先される人、それとは違う視点で試合の結果を受け止める人。同じ試合でも受け取り方は様々なのです。

初めてのJ2。信じられないような敗戦を繰り返した名古屋

一つのデータがあります。下記は昨シーズンの名古屋のデータです。

  • 第11節~第33節 9勝3分10敗
  • 第34節~第42節 7勝1分1敗

序盤戦こそ順調に勝利を重ねていた名古屋でしたが、シーズン1/4を超えたあたりから黒星がかさみ始めます。夏にシャビエルや新井という後に中心メンバーになる攻守の核となる選手が加入し、足りなかったピースが埋まった8月は怒涛の快進撃。しかしそこへの相手の対策が始まった9月前半~中盤は再度苦戦。そこを乗り越えたのが第34節対東京V戦。陣形も固まり、そこから最終節まで走り切ったというシーズンでした。

後に風間監督はこのシーズンを自らの著書「伝わる技術 」でこのように振り返りました。

実は開幕前から、残り10試合でどこにいられるか、あるいは自分達が自信を持っていられるか、それによって結果は決まると考えていました。リーグというのは、年間を通してどのように成長していくかが重要で、チームの最後の姿に自分達がこの一年で何をしてきたかが現れます。もちろん一試合一試合すべて大切な試合で、前の試合より進化する必要がある。それでも、最後に良い姿でいるために、たとえ最初に上手くいかなくても一喜一憂するのではなく、一年をかけてしっかり自分達のゴールを目指していくことを重視していました。 (※P78より引用)

応援するチームの目指している姿とは

このシーズンの名古屋に関していえば、一年間風間監督が提唱する「止める、蹴る、外す」ことを愚直に取り組んできたシーズンでした。当然最初から上手くいくはずもなく、形になり始めたのはシーズンも5ヶ月を過ぎようという8月頃。少しずつ目指すサッカーを体現出来る選手が増え、ただし攻守にもう1ピースずつ、チームで先頭を走る集団に加勢出来るメンバーが必要だった。そこに加わったのが前述したシャビエルであり新井です。

個を土台に作り直すにしろ、組織をベースに作り直すにしろ、より高いレベルを求めて再建に取り組む場合当然時間はかかります。高度なものを求めれば求めるほど時間はかかる。

チーム作りは家を作ることと同じです。どこにでもあるものや短期的に見た目の良いものを作ろうと思えば短い時間で仕上げることが出来る。ただ唯一無二の、いつまでも色褪せないものを作りたいのであれば当然時間はかかります。

風間監督が就任してからの名古屋に関していえば、分かりやすい戦術的要素から着手するのではなく、まず「個」を徹底的に磨くことから始めました。目指すべき姿に辿り着くためには個の改革が必要だった。ただ当然今日の明日で技術が格段に上がるわけではありません。時間がかかることは明白でした。

なかなか勝ち星に恵まれない時期、私達は「我慢」することを求められます。ただ我慢する為にはチームが今取り組んでいること、現在地、そして目指す先を知らなければいけません。我慢をする価値があるかないか、それはチームを理解しようする気持ちがなければ絶対にジャッジ出来ません。

風間監督はチームを作る上で心掛けてきたことについて、こうコメントしています。

新しいことにトライする時、一番大事なことは楽しむことなんです。それが出来ないと殻は破れない。では、厳しい空気の中でも楽しみを作るにはどうすればいいかというと、勝った負けたで一喜一憂していてはダメなんです。私が怒るのはトライしないことだけで、とにかくミスしてもいいからトライしてほしいと。そこはコーチングスタッフ全員で、本当に選手を伸ばしていくために言い続けました (※オフィシャルイヤーブック2018より引用)

これはサポーターにもいえることです。新しいことにトライするには、今を楽しめていなければいけない。そう考えると、実は我慢のようで我慢ではないのかもしれません。チームを知り、楽しいという感覚が芽生えれば、我慢は我慢でなくなります。

チームを、監督を、選手を信じられるか

今回のエントリーを書くにあたって、自分自身何故今のグランパスを信じられるのか、常に前向きな気持ちでいられるのかと考えました。これはJ2のときから変わりません。勝てば嬉しいし、負ければ当然悔しい。ただ一度たりともこのチームを批判しようとは思いませんでした。当然チームが負ければ怒る人はいます。何を悠長なことを言っているんだという方もいらっしゃるでしょう。「この人とは考え方が合わない」とそこで溝が出来てしまうかもしれない。

初めて風間八宏が指導するグランパスの練習風景を見たとき、途方もない目標に向かって歩み始めたように思えました。本当に一からスタートしたチームだった。ただ同時に何かを作り出そうと一歩ずつ、一歩ずつ進もうとするその光景。一つの目標に向かって、毎日を無駄にすることなく少しずつ積み重ねていくその様が、なんだか本当に家を組立てているようで、この歳にもなって純粋に見ていてワクワクしました。何かが出来ていく様子を見ることほど楽しいものはありません。またそれはグランパスというより、私自身が日々の生活の中で失いつつあったものでもあるような気がします。

その時その時で最善を尽くしているのが分かるから、負けることは悔しくても、これでまた強くなれると思えました。問題が起これば改善すればいいのだと。そう思えたのは「このチームは必ず強くなる」、そう確信していたからです。強くなるグランパスが想像出来たから、目の前の結果を受け入れることが出来ました。このチームに起きること全てが、強くなる為の肥やしになると思えたのです。

いつかそう思えなくなることがあるとすれば、それはチームがこの歩みを止めたと実感した時でしょう。目先の結果がどれだけ重要かはサポーターによっては百人百通りの答えがある。ただ一つ確信を持って言えるのは、チームが目先の結果だけを追うようになれば、それはもう歩みを止めてしまっているということに他なりません。応援するチームに未来を感じられなくなったら我慢などする必要はないのだと思います。

未来が感じられるから楽しい。その未来をチームと一緒に作れるからサポーターをやめられないのです。未来に向かうチームに、サポーター達は想いや夢を託すのです。自分の人生のように、いや、自分の人生に足りないものをそれで補うように。だからこそ私達が応援するチームは私達の人生に欠かせないものになるのだと思います。日々動向を気にして、週末になれば試合に出掛ける。先を見据えることが出来れば目先の試合の捉え方も変わります。何より先を見据えられるから楽しさは生まれるのです。

数値としての結果も勿論重要です。ただ同時に忘れてはならないもう一つの大切なことは、チームの目指す道を理解し、日々の変化に目を向けるということです。

何故ならチームもまた、私達と同じように生きているからです。

さて本日はルヴァン杯。名古屋は今のところ二戦二敗です。今日も負けるようだと罵声の一つや二つ浴びせられるかもしれません。

あえて批判される覚悟で書きます。

私はチームが全力でプレーし勝ちたいという姿勢が見られるなら結果は問いません(当然勝ってほしいに決まっていますが)。今の名古屋に二つのコンペティションを戦える力はないと思っているからです。チームの結果はともかく、一人でも輝いている選手が見つかればいいなと思っています。その上で彼等がリーグで力になってくれれば、チームとしてシーズンが終わった時に一定の成果は出ると信じています。その結果が来年、再来年のチームに必ず繋がる。必ず強いチームになるための歩みとなる。

皆さんが応援するチームはどうですか。

チームを、監督を、選手を、心から信頼し、今を楽しめているでしょうか。

苦しい時ほど、それを改めて自分なりに考えてみるのも良いかもしれません。

 

 

 ※このブログで使用した画像は名古屋グランパス公式サイトより引用したものです