みぎブログ

主観で語りますフットボールを。

鳥栖さんがパない件について語りたい

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

今季は名古屋と徳島そして鳥栖を追っかけると告げる。

相手は首を傾げる、『なぜ鳥栖?』と。

シーズン前、サガン鳥栖を上から見下ろした人間の更に高みから今サガン鳥栖が我々を見下ろしていると気づいているか。直近のセレッソ戦には敗れたものの、そこまでは4勝2分得点10失点0の堂々3位(今4位)。鬼強い。

SNSでは彼らの戦術について語られ(俺)、いかに彼らが類い稀なパフォーマンスをしているかと絶賛し(俺)、ほれ見たものかとドヤ顔のそう全部俺。

そもそもなぜあの日『サガン鳥栖は追っかけるに値するクラブ』と明言したかを聞かれてなくとも言わせてほしい。一言で済む。昨季面白かったからだ(語彙力)。

シーズン終盤のパフォーマンスを貴方は見たか。

ラスト10試合、3勝6分1敗だぞ。微妙だろ。

いやでもピッチ上で繰り広げられるフットボールは魅力的だった。ビルドアップは丁寧に、攻撃はピッチ幅をいっぱいに、背後のリスクは覚悟の上サイドバックは高く前方に、奪われれば激しく相手に襲いかかる。

彼らのパフォーマンスを羨んだマッシモはストーカーに勤しみ、結果晴れて名古屋にやってきたのが森下龍矢。

マッシモナイス。やれば、出来る!!!!!!!!

鳥栖サポーターの怒りを買いそうなので話を戻すが、こんな戦いを見せられちゃあ来季も追うしかねーな!と決めやってきた今シーズン。原に原川に外国籍ストライカーも抜けこれは苦労するに違いないと、正直ちょっと高みから見下ろした俺を心の中でぶん殴る。

強い、言葉を選ばず言わせてほしい、クソ強いと。

 

これが21年版鳥栖。モデルはライプツィヒ

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

これは第二節、浦和戦後のエルゴラッソのコピーだ。

エルゴラ史上最高級のインパクトで放たれた今季のテーマ(愛知在住でエルゴラ読んでなかったけどな)。マジか、それはやべえと馴染みの鳥栖サポさんに『前々から目指してたんですか?』と即座に問い合わせ。

僕も初めて聞きました!

いつナーゲルスマンを目指したキンミョンヒ。みんな置いてけぼりじゃねえかと安堵しつつ、いや確かに浦和戦の戦い方はセンセーショナルだったと回想する。

昨季からベースは変わらない。そのビルドアップも、横幅目一杯も、前からガツガツも同じ。

ただ何が変わったってさ、試合中にシステムが目まぐるしく変わるんだ。『今季の鳥栖は4-4-2のダイヤだね』『3バックはなんてことない目くらましさ』。

にゃーーーどこの誰が舞の海猫騙しじゃねーから。

そんな簡単に断定されてたまるか。もっと難解だよ、もっと難易度高いことやってるよにゃーーにゃーー。

〝点〟の部分いわゆる今季のパフォーマンスは後に掘り下げるとして、まずは〝線〟を意識した話をしたい。

そもそも何故縁もゆかりもないライプツィヒなんだと。

 

サガン鳥栖モデル〟の存在

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

これ、あまり知られていないんじゃないだろうか。

ここ数年、鳥栖はアカデミーをも巻き込んでクラブが目指す指標、看板をデカデカと掲げている。

鳥栖らしさ〟と〝アヤックスメソッド〟の融合だ。

www.sagan-tosu.net

ざっくり端的にいえば、鳥栖らしいハードワークや球際へのこだわり、その根底にある闘争心に加え、アヤックスの伝統ともいえるボール保持を基調とした攻撃的なスタイルが交われば、それもはや唯一無二という発想。

この取組み、振り返れば2018年のマッシモ時代から始まっており、イタリアにオランダのスパイスを注入する邪道極まりないプロジェクトに見えなくもないが、実際にメスが入ったのはアカデミーだ。一貫したゲームモデルに加え、九州という土地柄的な気質やボール保持をベースとし、安定してトップチームに選手を供給するシステム構築。少なくとも当時はこれが狙いだったはず。

しかし潮目が変わったのが2018年10月。

www.sagan-tosu.net

俺たちのマッシモがやっちまって、後任についたのが8月からマッシモの救助に駆り出されていたキンミョンヒ。

それまで鳥栖アカデミーで約8年慣らした男が満を持して登場。しかし彼に課せられた使命は外部から見れば尻拭いのそれだった。トップバッターはマッシモで、続いたのが誤報じゃなかったほんトーレスの〝大物路線〟、残留からの締めくくりはどこから来たんだカレーラス

つまり皮肉にも彼が本腰を入れトップチームの改革に取組めたのはあの20億の赤字が発覚した2020年シーズン、昨季からだったと定義しても良いだろう。

そう、未曾有の事態、コロナ禍ど真ん中だ。

 

〝降格なし〟をボーナスステージへ

遂に年間通して指揮を取れるシーズンがやってきた。

しかしそこに立ちはだかったのがコロナ禍による超イレギュラーなレギュレーション、そして竹原さんそこも誤報じゃないのか史上空前の巨額赤字。


【サガン鳥栖】竹原稔が目指したサッカーとは。【Jリーグ裏話】


【サガン鳥栖】竹原元社長が学んだ経営の極意とは。

〝降格なし〟〝しかし金もなし〟これまで常に残留争いと何故か湧きでるあぶく銭に良くも悪くも悩まされてきたキンミョンヒに用意された真逆のシチュエーション。

だからこそ自身がシーズン頭から陣頭指揮を執ると決まった段階で、アカデミーの選手達が活躍できる環境と、且つそれで勝てるフットボールを植えつけなければ、早晩ジリ貧になると危惧していたのではないか。彼が思い描くスタイルやサッカー観、まさにユース時代から目指してきたものを、〝トップチームにおけるサガン鳥栖モデル〟として確立すべき時が、遂にやってきたのだと。

そう思えるのは、今日に至るまでの彼らの歩みだ。

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

昨季のシーズン序盤は4-3-3のシステムに取組んだものの、初勝利に辿り着くまで9試合、そこに至るまで4分4敗得点数2の苦難の道を歩んでいる。当時から丁寧なビルドアップとピッチ幅を活用する意図は見えていたもののしっくりこず。それでも〝降格なし〟の後押しでチャレンジを続けた彼らは、点が獲れなきゃ4-4-2じゃ!とシステムを変え、代わりにピッチ幅はサイドバックが埋めてしまえと大冒険。今季繰り広げるフットボールの原型となる超攻撃的なスタイルに変貌を遂げる。

ただそれだけでは飽きたらなかったキンミョンヒ。

鳥栖の根幹にあるものは、ハードワーク、球際、闘争心だ。ただ〝攻撃的〟と己のスタイルに酔いしれるつもりも、遡ればアヤックスの〝コピー〟になるつもりもさらさらなかっただろう。試合に勝つためには、サガン鳥栖が元々持つこの圧倒的な強みを、しかも若いチームだからこそ可能な形で全面に押し出すこと。これが最も近道となり、ひいてはそれこそが自分たちのスタイルになると解釈したのではないか。まだ進化の余地あり、クラブを守りそして強くするためには止まっている暇はない。

今季待っていたのは降格4クラブ、地獄のシーズンだ。

 

そして生まれたトップチーム版サガン鳥栖スタイル

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

前年に築いたそのスタイルをさらに進化・発展させ、且つ〝勝てる〟チームを目指すべく、彼らは〝ハードワーク〟そして〝若さ〟を最大の武器に据えた。

基盤となるシステムも4-4-2から3-1-4-2へ。

その理由を解釈するうえで興味深いのは、攻撃時のデザインはある程度前年ベースを踏襲した印象を受けることだ。もちろん細かいメカニズムに違いはあれど、ピッチの横幅を6枚(左から中野、小屋松、林、山下、樋口、飯野)で埋めるデザイン自体に大きな違いはない。

基本システムを変えたことで大きく変わった点、それはボール非保持の場面、つまり守備にあると考える。

高い位置からボールを奪いに行く際、従来の4-4-2より今季の3-1-4-2の方がよりバランス良く前線からプレッシャーをかけ易くなった点が一つ。相手のビルドアップを阻害すべく前から圧をかける際、従来はどうしても両サイドハーフの立ち位置、またそこに付随した両サイドバックの移動距離(つまり各々がターゲットと定めた相手にプレッシャーをかける際のアプローチ方法)は改善点に映った。しかし今季は彼らをインサイドハーフ、そしてウイングハーフ(鳥栖ならではの呼称)と明確に設定したことで、中の密度は保ったまま、しかし各々がその標的に対し最短距離でアプローチ出来る仕組みとなった。その分背後が気になるが、そこはスリーバックの左右のストッパーが前に連動する形で対応する。アンカーの担当エリアが広いのが玉に瑕だが、ここは童顔の松岡が獰猛に相手を削り、ボールを刈り取る。名古屋に来い!

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

一方で相手に押し込まれる場面では、従来の4バックではなくウイングハーフを下げ5バックとすることで、ピッチ幅をバランスよく埋め、ブロックの安定化を図っている。いわゆる人海戦術に近い発想だ。

つまり攻撃の良さはそのままに、守備のバリエーションを相手の出方で変えられるようになったわけで、そりゃ机上で語れば最強じゃねえかと唸ってしまうが、問題は何故それが可能となったのか、である。

〝ハードワーク〟と、それを可能とする〝若さ〟だ。

第五節終了時点での総走行距離、リーグNo1の626.8㎞とは恐れ入った。これは完全に走る暴力。

またこのメカニズムを語る際、左サイドを担当する三人、中野、小屋松そして仙頭は避けて通れない。

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

守れば5バックのウイングバック、前からプレスをかけるなら今度はウイングハーフ、ボールを保持すれば一つ内側に入ってインサイドハーフ(ハーフスペース侵略担当)。小屋松よ、おま死ぬぞ。彼のオバケ体力とその理屈上の移動をマジで可能としてしまう爆発的なスピードにより活かされるのが新たな司令塔、仙頭だ。自身より前で立ち位置を取る6枚のレーンをどう操るかは彼のスキル次第と言っていい。またそんな彼らのコンビネーションを影で支えるのが若干17歳の若武者、中野。彼の動きは小屋松と持ちつ持たれつの関係性で成り立つ。ボール保持の際、中野が大外まで上がりきれば小屋松は一列中へ。一方のボール非保持では、小屋松が横にいれば3バックのストッパーとなり、彼が横にいなければオートマティックに最終ラインは4枚へと移行。中野が従来のサイドバックとして外のレーンを担当する。ここでも昨季のベースが前提にあることを見逃すことは出来ない。

面白いのは、これほど複雑なシステム変更を主に左サイドの連中が担っており、対する右サイドに位置する飯野、ファンソッコのタスクは非常にシンプルな点にある。飯野はとにかく前後をアップダウンし、攻撃になれば〝分かっていても止められない〟縦の仕掛けでチャンスを演出する。後方のファンソッコはビルドアップに大きく加担することなく、むしろその持ち前のフィジカルとスピードでチームを下支えするのが大きな役目だ。

つまり選手の個性を生かすべく、〝左が頭脳〟〝右が槍〟と意図的に左右非対称でチームのメカニズムを作りだしたのが今季最大のポイントといえる。元々持っていた攻撃性能に加え、ハードワークとそれを生み出す溢れんばかりの若さを武器とすることで、目まぐるしくチームの様相を操れる、それが今のサガン鳥栖の強さの源。

おっとそうそう忘れてた。総走行距離の貢献者を。

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

もうさ、『今日も今日とて俺も走るしかねえ....』って誓いを立ててる姿にしか見えないパクイルギュ。

守るのが仕事か走るのが仕事か本人も分からなくなってるとしか思えない走行距離。しかし前からアグレッシブに奪いに行く鳥栖にあって、彼の圧倒的なプレーエリアの存在を無視することなど出来やしない。あるいはビルドアップで押し戻されれば彼が逃げ道となり、絶対に適当には蹴っていけないルールのもと、ケツバットだけは喰らうものかと効果的なパスで見事に11人目のフィールドプレーヤーを体現する、まさに攻めながら守る男。

ここにエドゥアルドと松岡、さらに言えば仙頭を加えたビルドアップ隊はなかなかに屈指な陣容で、彼らが相手のプレス隊と対峙しバリエーションあるビルドアップを駆使することで、前線からのプレスだけでなく、後方からのビルドアップでも試合の主導権を握ることに成功している。また他の連中が安心してポジションが取れるのも、もっといえばこれだけのポジション移動が可能なのも、彼らの存在抜きには語れないのだ。

決めたパギさん手放した横浜は定期的にイジってこう。

 

さあマッシモ、ともに鳥栖ウォッチを続けよう

[http://Embed from Getty Images :embed:cite]

彼らが今季実現しまたブラッシュアップに成功した点。

それはより前からアグレッシブに、待つのではなく奪いに、そして攻撃的に、しかし守るべき時はチームとして結束して守る。まさに『いやそれ可能だったらどこのチームだってやりてえよ!』と嘆きたくなる進化にある。

ただ繰り返すがそれを可能とした大きな要因は、昨年から続く〝あるべきサガン鳥栖スタイルの追求〟であり、またそれを根幹で支える彼らの文化、そして圧倒的な若さにある。それらが融合した結果、他にはないスタイルが生み出された点は評価されるべきことで、仮にその進化のヒントになったのがライプツィヒにあったのだと言うのなら、これは非常に興味深くまた面白い。

このコロナ禍で鳥栖が無傷だったかといえばむしろ傷を負ったこともあったわけで、本来『コロナ禍のボーナスステージ』なんて不謹慎な表現なのは自覚している。

しかし今季の躍進に関して、例えば今だけに着目して語るのも、あるいは鳥栖には優秀な若手がいるからなと安易に片付けるのも、ここでは異議を唱えたい。彼らの躍進は、彼らが歩んできた文脈と、その結果生まれたキャスティング、そして何よりそれでも生き残るべく知恵を働かせこのコロナ禍すら逆手に取った継続の賜物だ。

さて今後も彼らの快進撃は続くのか。

そこにちょっと待ったと肩に手をかけクルピセレッソ

彼らが鳥栖に突きつけた課題は簡単なものではない。一つは選手達の個性を重視するが故の複雑な鳥栖のメカニズムそのもの。チームの頭脳であり心臓が松岡であり仙頭であるのは明白で、さすれば彼らをゲームから排除したいと思うのは当然。つまりボールが循環する〝肝〟が明確故の長所と短所が表裏一体のその仕様。二つ、仮にボールが前進出来た場合、潔く撤退し前後コンパクトにゴール前を締めてくる相手にどう立ち向かうか。端的にいえばラスト1/3の質とアイデアが課題であり、清水や福岡そしてセレッソとブロック守備に定評のあるクラブ相手にことごとく躓いた。三つ、リードされた展開における試合の運び方だ。ただでさえ前掛りなスタイルにあって、リードされゴールが割れないジレンマに陥るとチームはどうしても前傾姿勢となる。後方のメンバーが個人で晒されるのは至極当然で、その一つの結果があの日のファンソッコの退場であると言えるのではないか。

彼らのスタイルの根幹にあるリソース(選手層)と運動量も当然ながら重要な肝であり、これらが欠けたときチームの真価が問われるはず。なんにせよ相手に研究対策されてからが本番で、さあこれらを上回れるか。

そしてやってきたまだ見ぬ第二のオルンガ候補生、ナイジェリアとケニアの刺客チコとドゥンガぐりとぐらっぽく)。チコのわりにはむしろ道を踏み外した岡村隆史感があるキャラ設定もややこしければ、ボーっと生きてんじゃねーよ!とキレるには見た目も名前も申し分なさそうなドゥンガとの役割分担が尚のことややこしい。

そして次節は首位川崎そして控えるガンバと名古屋。

前節を〝完敗〟と認めたキムミョンヒはこう語った。

僕たちに似合わない大きな荷物、重荷を一つ下ろせたということで選手達も目が覚めて次に向かっていけるのではないか。変な驕りや胡坐をかいているような余裕のあるチームではない。もう一回ゼロに戻して、しっかりと戦う姿勢をみせて、次のゲームに進みたい

無敗と無失点が途絶えたから終わりではない。

むしろセレッソ戦の完敗こそ彼らにとっての新たな始まりであり、始まった矢先に待ち構える上位陣との4月のシリーズに向け、彼らがどう立ち向かうかは注目だ。

マッシモ、吉田豊、森下龍矢、金崎夢生ともはや名古屋のブラザーと言っても過言ではないサガン鳥栖

きっと今季もマッシモは見ているだろう。私だって見ている。マッシモは夢生が好きで、そんな夢生は林大地が好き。そしてなんと私も林大地が好きで、ということはきっとマッシモも林大地が好きなこの幸福無限ループ。

結論、俺とマッシモは相思相愛なのかもしれない。